読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
第2子を出産後、2年が経過しましたが、月経が再開しません。子供はまだ母乳を飲んでいます。月経が再開しないとどのような危険がありますか。(30歳母)

この相談に対して、日本医大産婦人科教授である竹下俊行先生は、以下のようにお答えになっています。
お産が終わると、子宮をはじめ、母体は徐々に元の状態に戻っていきます。この期間を産褥(期)といい、通常6〜8週間かかります。

しかし、子宮の大きさが元に戻っても、すぐに月経が始まるとは限りません。その原因のひとつに授乳があります。母乳は、脳内の間脳や下垂体から分泌される「乳汁分泌ホルモン」によって出されていますが、このホルモンには、排卵を抑制する働きもあるのです。

授乳をしない女性は、分娩後、平均2ヶ月で月経が再開すると言われています。しかし、授乳をしている場合は、平均3ヶ月かかってしまいます。

ただ、授乳の有無にかかわらず、1年2ヶ月もたてば、ほぼ100%の女性の排卵周期が正常に戻ったという報告もあります。ですから、ご質問者の月経が2年もの間来ないというのは、明らかに遅いと言えます。

産褥期は、分娩終了後から始まり、内外性器の解剖学的ならびに機能的な修復が行われ、乳腺は急速に乳汁分泌を開始する時期に該当します。現象的には、月経が再開する期間となります。上記のように出産からおよそ6〜8週間であり、WHOではICD-10の定義で分娩当日から42日間と規定しています。

産褥期から授乳期では無月経となり、これを生理的無月経といいます。これは、産褥期にはプロラクチン(乳汁分泌ホルモン)の値が上昇し、視床下部-下垂体系が抑制されるため、卵巣機能の回復が遅れて無月経が持続すると考えられています。

ちなみに、下垂体の腺腫やドパミン拮抗作用をもつ薬物の摂取によってもプロラクチンは上昇します。そのため、無月経や乳漏が起こって下垂体腺腫がみつかる、ということもあるわけです。

実は、分娩後の無月経の期間は、授乳の有無に大きく左右されるといわれています。非授乳婦では平均60日ですが、授乳期間に応じてその期間が延長します。

以前、大学の授業で、生理学の先生が「年子の兄弟姉妹がいる人は、母乳で育っていない確率が高い」と仰っていました。授乳している=無月経の時期が長くなり、その間は妊娠しない、とのことのようです。

こうした無月経の時期の延長は、以下のような影響があります。
30〜40代の女性に長い間、月経がないのは決して健康的ではありません。無月経の期間中は、女性ホルモンの分泌が不十分になります。骨粗しょう症になったり、循環器に異常をきたしたりすることがあります。

従って、勇気がいることだと思いますが、お子さんのためにも、まず授乳をやめてみましょう。

それでも月経が再開しない場合は、授乳が原因ではなく、何かほかの内分泌疾患があって無月経になっていることも考えられます。産婦人科で診察を受けてください。

骨の作り替えの平衡関係の維持には、性ホルモン、とりわけエストロゲンが重要な役割を果たしています。このエストロゲンの低下によりもたらされるのが、閉経後骨粗鬆症です。

エストロゲンが低下すると、骨局所でのtumor necrosis factor(TNF)、インターロイキンIL-1や6などのサイトカインの分泌促進を介して骨吸収の亢進をもたらしてしまいます。そのため、閉経後の女性では骨粗鬆症が起こりやすい、ということになります。

上記のように無月経では閉経後と同様に、女性ホルモンの分泌が不十分になり、骨粗鬆症になりやすい、と考えられます。

無月経が続く場合、やはり何らかの疾患が基礎としてあると思われます。月経の分類は、内因性のエストロゲン分泌があるかないかによって第1度(エストロゲンの基礎的な分泌あり)、第2度(エストロゲンの基礎的な分泌なし)とに分類され、さらにその障害部位によって視床下部性、下垂体性、卵巣性、子宮性、その他などと区分分類されます。

続発性無月経(月経を経験した女性が一定期間月経をみなくなる無月経)では、視床下部・下垂体疾患が80%くらいを占め、その1/4は高プロラクチン血症やプロラクチン産生下垂体腺腫によります。

もしかしたら、こうした腺腫によるものという可能性も考えられます。一度、産婦人科を受診されて精査されることが望まれます。

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