読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
1歳の孫が生後10ヶ月のころにけいれんを起こし、その後も、繰り返しています。てんかんなのでしょうか。てんかんの場合は治るものなのでしょうか。(55歳女性)

この相談に対して、国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター診療部長である久保田英幹先生は、以下のようにお答えになっています。
けいれんがあるからと言って、てんかんだとは限りません。
1歳前後のお子さんが起こすけいれんには、てんかんのほかに、熱が急激に上がる時に起こす「熱性けいれん」、下痢に伴うけいれん、大泣きした時になる「泣き入りひきつけ」などがあります。発熱や下痢、大泣きなどがなくても起こるけいれんもあります。

てんかんは、脳の神経細胞に流れている電気信号が過剰放電し、けいれんや突然意識を失うなどの発作を繰り返す病気です。てんかんが疑われたら、脳波検査やコンピューター断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像(MRI)などの画像検査を受け、けいれんの原因が脳にあるかどうか調べてください。

また、診断にはこれまでの経過や発作の起こる状況、症状なども大切です。
お子さんがけいれんを起こしたら、慌てないで冷静に状態を観察してみてください。

「どのような状況で始まったか」、「目や顔が左右どちらかに寄っていないか」、「手足はどのような姿勢になっているか」、「けいれん後、一時的なまひなどが手足に生じなかったか」など、具体的であるほど診断に役立ちます。

てんかんは、「種々の原因によってもたらされる慢性の脳疾患で、大脳ニューロンの過剰な放電に由来する反復性のてんかん発作を主徴とし、それに変異に富んだ臨床ならびに検査所見が伴う」とWHOでは定義しています。簡単に言ってしまえば、てんかん発作の反復を主症状とする慢性の大脳の疾患、と言えるかも知れません

有病率は、3〜8/1,000人と一般的に考えられており、人口1,000人に約5人の患者さんがいるということになっています。

簡単な分類としては、発作焦点の局在の有無により部分発作(脳局所から全脳へと次第に広がるもの)と全般発作(最初から脳内に全般性に現れるもの)に、また、その原因により症候性か特発性かに分類されます。

全般発作には、
・強直間代発作
意識消失とともに全身の随意筋に強直痙攣が生じ(強直痙攣期)、次いで全身の筋の強直と弛緩とが律動的に繰り返される時期8間代痙攣期)を経て、発作後もうろう状態を呈する一連の発作
・欠神発作
突然に出現し突然に回復する意識消失発作(持続時間は数秒から数十秒)。意識欠損のみを示すものと、意識欠損に自動症や、間代要素、脱力要素、強直要素、自律神経要素を伴うものとがある。
・ミオクロニー発作
突然に瞬間的に発症する筋攣縮で、短時間で収まるが、連続して起こることが多い。両側四肢に発症することが多いが、一部の筋群に限局することもある。通常、意識消失はないが1〜2秒の意識消失を伴うこともある。

などがあります。

部分発作には、意識障害を伴わない単純部分発作(ジャクソン発作、視覚発作、記憶障害発作、感情発作など)、意識障害を伴う複雑部分発作(例えば一点を凝視したまま動作が停止し、さらに口部自動症・身ぶり自動症が出現する発作)、およびこれらの部分発作の二次性全般化発作があります。

上記のように、「どのような状況で始まったか」、「目や顔が左右どちらかに寄っていないか」、「手足はどのような姿勢になっているか」、「けいれん後、一時的なまひなどが手足に生じなかったか」といったなどの症状は、これらのタイプを考える上で役立ちます。発作型が決まったらその原疾患であるてんかん・てんかん症候群の診断を考慮します。

必要な対応としては、以下のようなものがあります。
てんかんと言っても、治りやすいものから、一定期間、服薬を続ける必要のあるものまで様々です。治療の方法や期間はさらに詳しい診断により決まります。

てんかんかもしれないと思ったら、小児神経科医やてんかんを専門とする医師を受診しましょう。

発作の目撃情報を含む病歴、診察・脳波所見からてんかん発作型を診断します。次に発作型と脳画像などの検査を総合して、てんかん症候群診断を行います。

具体的には、意識障害や転倒時の受傷、尿便失禁などがあったり、四肢の律動的痙攣や発作後の一過性麻痺はてんかんを疑わせます。運動麻痺、不随意運動、失調、筋緊張異常などの有無、全身の皮膚所見(神経・皮膚症候群)なども重要となります。

脳波検査では、てんかん波の有無を判読できます。てんかん患者にみられる脳波変化としては、
1)棘波spikes(持続が80msec以下)
2)鋭波sharp waves(持続が80〜200msec)
3)棘徐波結合spike & wave complex
4)鋭徐波結合sharp & wave complex
5)高電位徐波群発θ & δ bursts
6)ヒプスアリズミアhypsarrhythmia

などがあります。

脳腫瘍の診断には頭部MRIやCTが必要(特発性全般てんかんでは画像検査が異常となることはまずない)になります。血液・尿検査(Ca、Mg、電解質、血糖など)、心電図も鑑別の上では非常に重要となります。また、髄液検査で細胞数増多、蛋白上昇などから感染の有無を検索することもあります。

上記のケースでは、果たしててんかん発作なのかどうかといったことも不明ですが、やはり小児に対応できる神経内科などを受診して相談することなどが必要であると思われます。

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