記録的な猛暑で各地の歴代最高気温を次々と塗り替えた昨年。7−8月に救急搬送された“熱中症”患者は東京都内だけでも過去10年最高の1141人。今年の7月(29日現在)は、すでに例年より多い559人が搬送されている。今後、被害はさらに拡大しそうだ。ましてや、アスファルトで埋め尽くされる大都市圏は、太陽熱が蓄積されキケンがいっぱいだ。

「いわゆるヒートアイランド現象で、実際より体感温度は高い。また熱帯夜のときは睡眠不足による体調不良が一層、熱中症を悪化させる」と警告するのは、熱中症に詳しい「はとりクリニック」(川崎市9の羽鳥裕院長。

とくに中年以降になると、そのリスクは一段と高まる。加齢に伴い熱ストレスの順応が鈍くなると、発汗のタイミングが遅れ量も減る。体に熱がこもりやすいのだ。加えて、中枢機能の低下で“口の渇き”の感覚が乏しく、脱水状態に気づきにくい。室内にいても高齢者に熱中症が多発するのは、そのためだ。

一般に気温が30度を超え、湿度70%以上、風の弱い時に熱中症は起こりやすいといわれる。外出時の強い日差しは気をつけていれば比較的避けることはできる。が、意外と見落としやすいのは湿度の上昇だ。

「人は皮膚表面からの熱放出と、汗をかき蒸発するときの熱を奪う気化熱を利用して体温調節を行っている。たとえ発汗機能がきちんと働いていても湿度が75%を超えると汗をかいても蒸発しなくなる」
気温がそれほど高くなくても、湿度が高ければ熱中症を招く。

熱中症は病態によって4つに分類される。熱失神は体温が37度を超えると起こりやすい。熱けいれんは汗と一緒に噴き出す塩分の不足。そして、熱疲労(脱水症状)になると急速に悪化して生命に危険が及ぶ熱射病に至ることがある。応急手当ては、涼しいところで安静にさせ、頸動脈や脇の下、内股など重要な臓器につながる太い動脈の走る部分を冷やす。改善する兆しがなければ、至急病院への受診が必要だ。

予防対策はこまめな水分補給に尽きる。が、「とくに高血圧で利尿降圧剤を飲んでいる人は脱水、電解質低下に要注意」と羽鳥院長。

酷暑はまだまだ続く。万全の体調管理で乗り切ろう。
(熱中症患者、昨年以上!? 搬送者は早くも500人超)


熱中症とは、外気においての高温多湿などが原因となって起こる症状の総称です。体内に溜まった熱を下げることができず、体温が異常に上昇することで様々な障害が出てきます。

人体においては、深部体温が42℃以上になると生命の危険が出てきます。そのため、視床下部にある体温中枢は、食事・運動による熱産生の亢進または高温・多湿による熱放散の低下によって体温が上昇すると、皮膚の血流増加と発汗によって放熱を促し、核心温を約37℃に維持しようとします。

ですが、脳の温度が上昇すると体温中枢が障害され、発汗が停止して体温が急激に上昇して40℃以上となってしまいます。結果、細胞障害などから昏睡、けいれん、ショック、溶血、横紋筋融解、腎不全、多臓器不全、DICなどの致命的な病態を生じてしまうことがあります。

熱中症は、その病態から大きく分けて、以下の4つがあります。
・熱失神
原因:直射日光の下で長時間行動しているような場合に起きる。発汗による脱水と末端血管の拡張によって、体全体の血液の循環量が減少した時に発生する。
症状: 突然の意識の消失で発症する。体温は正常であることが多く、発汗が見られ、脈拍は徐脈を呈する。

・熱疲労
原因:多量の発汗に水分・塩分補給が追いつかず、脱水症状になったときに発生する。
症状:症状は様々で、直腸温は39℃程度まで上昇するが、皮膚は冷たく、発汗が見られる。

・熱痙攣
原因:大量の発汗後に水分だけを補給して、塩分やミネラルが不足した場合に発生する。
症状:突然の不随意性有痛性痙攣と硬直で生じる。体温は正常であることが多く、発汗が見られる。

・熱射病
原因:視床下部の温熱中枢まで障害されたときに、体温調節機能が失われることにより生じる。
症状:高度の意識障害が生じ、体温が40℃以上まで上昇し、発汗は見られず、皮膚は乾燥している。

ちなみに、救急医学においては、熱けいれんや一時的な熱疲労など外来処置で対応できる病態を掬戞脱水や電解質の喪失などで入院が必要な病態を凝戞臓器障害がある病態を慧戞塀転鼻砲畔類することもあります。

上記の通り、熱中症は高温多湿で輻射熱があり風のない環境下で、運動や作業を始めた初日に起こりやすいです。また、乳児や高齢者、肥満者、暑さに馴化していない人、脱水状態の人、食事をしていない人、通気性や吸水性の悪い衣服を着ている人に起こりやすいといわれています。こうした人たちは、より注意が必要となります。

予防や治療としては、以下のようなものがあります。
予防としては、日よけや帽子などで暑熱環境を改善することや、運動や作業の前に体調管理(二日酔い、食事抜き、下痢や発熱性疾患の罹患、抗コリン薬などの内服がないこと)が重要となります。

また、暑さに慣れる前は身体負荷を軽減し、日陰でこまめに休憩や水浴びをすることも重要です。スポーツドリンクは、活動前から飲用することも有効です(ただし、糖尿病患者などでは高血糖に注意)。

熱中症になってしまった人が出た場合は、風通しのよい涼所に移動させ、体表面を露出させ水で濡らして冷風を送り、スポーツドリンクを飲ませて水とナトリウムを補います。氷嚢などは、頸部や腋窩部、鼠径部などの大血管部位を冷やします。脳血流を確保するためには、足を挙上し手足を末梢から中心部に向けてマッサージします。
 
病院に搬送された場合は、まず気道を確保し、呼吸や循環、尿量、核心温(直腸温や膀胱温)をモニターします。深部体温を38.5℃まで冷却することを目標に、微温湯で皮膚を湿らせ、空気をファンで当てたり、アイスパックを鼠径、腋窩、頸部に当てます。冷却効果が得られない場合は、アルコールを皮膚に塗布したり、冷水を胃内に出し入れしたり冷却ブランケットなどにより冷却するといった処置が行われます。

さらに、ソリタ-T3号やラクテック注を急速静注して補液を行い、CPKが高いときはミオグロビンによる腎障害に注意します。水バランスをとるにあたっては、肺水腫の発生を早期発見するため聴診などを行うほか、頻回の動脈血ガス分析を行い、PaO2の低下をチェックします。電解質の値も補正する必要があります。

救急搬送されてしまうまえに、自分で出来ることで予防されることが重要です。また、盲点ですが室内であっても熱中症になることはあります。室温管理やこまめな水分補給を行うことを忘れないでください。

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