拡張型心筋症による重い心不全のため渡米先で心臓移植手術を受け、成功した東京都三鷹市の小学1年、相原碧ちゃん(7)が20日、母親の都史子さん(39)に伴われ帰国、車いすに座り成田空港の到着ロビーで「ただいま。うれしい。元気になりました」と支援者らにあいさつした。

碧ちゃんは4月に渡米。7月にアーカンソー州の病院で約12時間にわたる手術を受けた。今後数カ月は都内の病院に入院し、経過観察が必要という。

出迎えた父親の会社員、博幸さん(41)は「支援をしてくれたみなさんのおかげ。信じられない」と語った。支援団体「みどりちゃんを救う会」は、入院が長引くなどしたため追加の募金を呼び掛けるとしている。
(心臓移植の碧ちゃんが帰国「ただいま」)


拡張型心筋症とは、左室あるいは両心室の拡張と収縮不全を呈する心筋疾患です。心室、特に左心室のポンプ機能障害(血液を上手く全身へ送り出せない)があるため、臨床的には心不全が問題となります。また、不整脈、血栓塞栓症や突然死がしばしば発生します。

自覚症状も心不全と不整脈によるものが中心となります。心不全が起こるため、拡張型心筋症の患者さんでは労作時呼吸困難、起坐呼吸(横になると息苦しくなる)、動悸、易疲労感などを自覚することになります。

他覚症状としては、頻脈、浮腫、肝腫大などがみられることもあります。心臓の聴診では、群察↓顕擦よく聴かれるほか、心拡大による僧帽弁逆流の雑音も多く聴かれることになります。不整脈で重要なものには、脈が一分間に200回以上になる心室頻拍があり急死の原因になります。逆に、脈が遅くなる房室ブロックがみられることもあります。

検査としては、胸部X線で心拡大と肺うっ血、心臓エコー検査で左室の拡大と壁運動の低下が認められます。しばしば僧帽弁ないし三尖弁の逆流もみられます。診断には心筋収縮不全と心室拡大を証明すること、ならびに特定心筋疾患を除外することが必要となります。

具体的には、脈拍は小さく速く(房室ブロックのない場合)、心不全が高度な症例では血圧は低くなります。心電図ではST-T異常を認め、心室性期外収縮が頻発します。聴診上では、非特異的全収縮雑音と奔馬調律などが聴取できます。

心エコー図では、左室あるいは右室径の拡大、左室収縮能の低下、弁逆流の評価、三尖弁閉鎖不全が存在する場合は右室収縮期圧の推定が可能となります。ほかにも心筋シンチグラム、心臓カテーテル検査などが行われます。

特定心筋症との鑑別としては、重症左室機能不全を伴う虚血性心疾患や、心筋炎や筋ジストロフィ、内分泌疾患、膠原病などの鑑別が必要になります。

治療としては、以下のようなものがあります。
拡張型心筋症の自覚症状と予後を規定する因子は心不全と不整脈であり、その治療も心不全と不整脈に対するものが中心となります。

薬物療法としては、症状がなくても、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)またはアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の投与、およびβ遮断薬(初期に心不全増悪例があり、注意)の投与を考慮します。浮腫などの症状があれば、利尿薬を投与することもあります。

不整脈治療としては、心房細動、心室性不整脈などの合併例で主だった治療が必要になります。前者ではジゴキシンやワーファリン、後者ではメキシチールやアンカロン使用を考えます。心室頻拍に対しては、植込み型除細動器の有効性が認められています。

こうした治療に反応せず、重症となったケースでは、外科的治療が行われます。拡大した心臓の一部を切除して心室を縮小させることにより、心機能を改善させる左室部分切除術といった方法もありますが、今のところ明らかに有効な治療法は心臓移植しかありません。

適応条件としては、β遮断薬およびACE阻害薬を含む従来の治療法ではNYHA慧戮覆い鍬古戮ら改善しない心不全や、現在の治療で無効な致死的重症不整脈、長期間または繰り返し入院治療を必要とする心不全、などがあります。

小児の拡張型心筋症は、予後の予測が難しいとされています。原因にもよりますが、乳幼児や小児期ではかなり初期の段階で心機能がかなりおかされていても、正常な心機能に回復する症例もあります。

心臓移植のような治療に踏み切るまでには、上記のような治療を試してからの最終判断を必要とします。今回のケースでは心臓移植が無事に行われ、帰国することができたようです。

国内では小児の移植手術は難しい状況にあります。移植に関する制度の見直しがなされ、救える命が今回のように増えていくことが望まれます。

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