青森県五所川原市の公立金木病院で6月下旬、末期肝硬変で入院した70代の女性患者が、血糖降下剤を誤って投与され、意識不明となっていたことが22日、分かった。女性は半月後に死亡している。

県医療薬務課によると、女性は6月20日から同22日にかけて、本来処方の利尿剤「アルマトール」とは別の、血糖降下剤「アマリール」を投与された。血糖降下剤は意識障害の原因になるといい、女性は翌23日に容体が悪化、意識不明となった。7月8日に死亡した。

患者は事故以前に「アマリール」を投与されたことがあり、記録に残っていた薬名を病院の事務担当職員が医師に確認せず、そのまま誤って処方申請したという。
(薬誤投与され女性意識不明 半月後死亡、警察が捜査)


肝硬変では、肝細胞の傷害、血流低下によりアルブミン、血液凝固因子をはじめ多くの蛋白、脂質合成低下が生じます。特に低アルブミン血症は、全身性浮腫や腹水の原因となります。

こうした浮腫の治療としては、まず塩分制限が行われます。それに反応しない浮腫や腹水に対しては、抗アルドステロン薬(スピロノラクトン)が第1選択薬となり、効果がみられない場合は、ループ利尿薬(フロセミド)の投与を試みます。

上記のアルマトールは、抗アルドステロン薬(スピロノラクトン)の一種です。主として遠位尿細管のアルドステロン依存性Na-K交換部位に働きます。アルドステロン拮抗作用により、Na及び水の排泄を促進することで、利尿降圧作用を現します(一方Kの排泄を抑制する)。

体重測定を行い、減少は1日1kg以内とし、それ以上の減少は血管内脱水から肝不全を悪化させる危険性があり、十分に注意すべきであると考えられます。また、高カリウム血症などの電解質異常に注意する必要があります。

「アルマトーム」は、こうした利尿作用をもつ薬であり、一方の「アマリール」は、糖尿病などで用いられる経口血糖降下薬です。作用としては、主に膵β細胞の刺激による内因性インスリン分泌の促進(膵作用)により、血糖降下を発現するものと考えられています。簡単に言えば、膵臓に「もっとインスリンを分泌するように」と促進する薬であるわけです。

もちろん、血糖値が高い人に対して用いられる薬剤であり、血糖値が正常の人に投与された場合、低血糖になってしまうことが予想されます。低血糖状態では、以下のようなことが起こります。
低血糖症とは、血液中のグルコースレベルが下がり、神経組織の糖欠乏により症状を指します。

そもそも、ブドウ糖(グルコース)は脳・中枢神経,赤血球をはじめとして全身細胞のエネルギー源として必須の物質となっています。ですから、たとえ何も食べていない状態でも、全身・ブドウ糖利用率と肝・ブドウ糖放出率が一致し、正常血糖値に維持されてバランスが保たれています。

このバランスは、主としてインスリンとインスリン拮抗ホルモンのバランスにより保たれています。上記のケースでは、アマリール投与によりインスリン過剰状態になっており、血糖値が下がってしまったと考えられます。

低血糖状態では、仝魎郷牲仂評と中枢神経症状とが起こる可能性があります。交感神経症状は、低血糖に反応したカテコラミン分泌による症状(カテコラミン分泌により血糖値を上げようとする)で、頻脈、動悸、発汗、振戦、不安感などが起こります。

さらに症状が進むと、中枢神経症状が起こり、判断力や集中力低下、意識障害、けいれん、昏睡などが生じてきます。上記のケースでは、意識障害が生じていたようです。

実は、低血糖の大部分は糖尿病治療に伴って引き起こされます。インスリンによるものが最も多く、次いでアマリールもその一種ですが、スルホニル尿素薬によることも多いです。

ただ、上記のケースが果たして低血糖症による意識障害が起こり、なおかつ死亡原因となっているかは不明です。肝硬変であったこともあり、それが原因による意識障害(肝性昏睡)が起こっていたとも考えられます。さらには元々、全身状態が悪化していたという可能性も考えられます。

ですが、薬剤投与を誤って行っていたことは確かです。医師が処方を行うときに、注意することはもちろんのこと、薬剤師との連携をしっかりと行ってダブルチェックを徹底するなど、再発防止のためのチェックシステムの再考が求められます。

【関連記事】
乳がん検診時に検体取り違え−誤って乳房切除術を受けることに

癒着胎盤に対する治療を巡る論争−日本産科婦人科学会の声明