以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

中堅商社に勤めるT・Yさん(45)は、家では典型的なぐーたらパパ。ゴルフでストレスを解消し、帰宅しては、酔っ払って風呂にも入らず、そのまま寝てしまうことがしばしばでした。そんなある日、脇の下にかゆみを感じて見てみると、赤いブツブツが出来ていたT・Yさん。何かにかぶれたんだろうと特に気にも留めていませんでしたが、発疹は広がり続けました。
1)発疹
左胸がかゆくなったため、見ると赤い発疹が出来ているのが分かりました。
2)発疹が広がる
「虫刺されだろう」と思って放っておいたのですが、数日のうちに発疹は広がってきました。そのため、T・Yさんは市販のステロイド軟膏を塗ることにしました。
3)さらに発疹が広がる
軟膏を塗り始めて、さらに数日が経過したある日。発疹が左胸から腋窩まで広範囲に広がっているのを奥さんに指摘されました。そのため、近所の皮膚科に受診しました。

皮膚科を受診すると、左胸とともに「足を見せてください」と言われました。すると皮膚科医は「水虫ですね。左胸もこれが原因で、体部白癬であると思われます」と診断しました。

体部白癬とは、被髪頭部、手、足以外の部位に生じた表在性の白癬で、陰股部を股部白癬、顔面と臀部を含むその他の部位を体部白癬といいます。カビの一種である白癬菌に感染、皮膚の炎症や、痒みが生じます。

最も多い原因菌はTrichophyton rubrum、次がTrichophyton mentagrophytesで、連圏状の紅斑がみられ、辺縁が堤防状に隆起し、その上に鱗屑、漿液性丘疹、小水疱などを認めます。Microsporum canis(犬猫に寄生していることがある)は次に多く、より炎症症状の強い小紅斑が多発することが多いです。こちらの場合、感染力が強いといわれています。

水虫と体部白癬は、原因菌も感染の機序も同じとなっています。水虫(足白癬といいます。全白癬患者の60%以上を占め、最も多い病型です)の患者数は、約2,500万人であり、5人に1人が足白癬だと言われています。

T・Yさんの場合、ゴルフ場のバスマットで、まずは足白癬に感染したと考えられます。ですが、自分では足にかゆみなどの自覚症状が無かったため、足白癬だと気づくことはありませんでした。実は足白癬患者のうち、痒みがあると答えた人は、わずか10%であり、9割が痒みを自覚していないという事実があります。これが、足白癬の落し穴です。

足白癬には様々なタイプがありますが、たとえば足の裏が乾燥して白くなるタイプや、爪が白く厚くなり、やがてボロボロになる爪白癬などは、痒みを全く感じません。T・Yさんの場合もそうでした。結果、彼の足からは、垢とともに、白癬菌がボロボロとこぼれ落ち、家中にバラ撒かれてしまいました。この垢には、白癬菌の栄養分であるケラチンが含まれているため、数ヶ月以上も生き続けました。

こうして、静かにチャンスを待ち続けていたカーペットの白癬菌は、寝転んだT・Yさんの脇の下に付着しました。ですが、白癬菌は、通常なら24時間以内に除去すれば、皮膚に感染することはありません。T・Yさんも、あの時お風呂に入っていれば、菌を洗い流すことができたのですが、酔っ払って寝てしまったため、脇の下の皮膚の角質層に菌が侵入し、体部白癬を発症してしまいました。赤いブツブツが出来てしまったと考えられます。

さらに、ステロイド剤を誤用すると境界不鮮明、中心治癒傾向の消失、膿疱の多発など、非典型的な臨床所見となり、診断に苦慮することがあります。通常の湿疹ならば、過剰に反応した免疫物質をステロイドで抑制し、炎症を抑えることができますが、体部白癬の場合、ステロイドで免疫力を弱めてしまうと、逆に白癬菌の増殖を手助けする結果になり悪化させてしまいます。

治療としては、以下のように行います。
体部白癬は、外用剤でおおむね治療可能となっています。メンタックスクリームまたは、ラミシールクリーム、アスタットクリームなどを1日1回、患部に塗布します。広範囲の体部白癬や、難治性、再発性の病型では、経口剤を用いることもあります。ラミシール(125mg)1錠や、イトリゾール(50mg)1〜2錠などを服用します。

上記のケースのように、足や爪白癬を合併していることが多く、その検索と同時治療も再発を防ぐために必要となります。混濁した病爪が縦に線状に残存するなど、経口剤に反応しない爪白癬では、病爪を爪切りや歯科用ドリルなどで除去する必要もあります。

白癬が問題なのは、家族へも感染する可能性があることです。T・Yさんのケースでも、長い間、足白癬を放っておいたことで、白癬菌が家中にばら撒かれることになってしまいました。結果、奥さんや娘さんまでもが足白癬になってしまいました。

白癬菌は、病巣から剥がれ落ちた鱗屑内の白癬菌が感染源になり、足拭き、スリッパなどを介して感染することになります。ですが、上記のように、通常なら24時間以内に除去すれば、皮膚に感染することはありません。ご家族に感染させてしまう前に、しっかりと予防することが重要になります。

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