29日午前2時20分ごろ、東京都品川区のマンションの一室から119番があり、俳優の柳楽優弥さん(18)が急性薬物中毒で病院に搬送された。大量の薬物を摂取したとみられるが、意識はあり、命に別条はないという。

柳楽さんは04年公開の映画「誰も知らない」(是枝裕和監督)に14歳で主演。カンヌ国際映画祭で日本人初の男優賞を史上最年少で受賞した。

今月16日の公式ブログには「みんなへ。」のタイトルで、不安な胸の内を披露。「ここ1年間で俺(おれ)、体調崩しちゃってました。露出が前より減ったのも、その影響があるんだ」「ちょっと一瞬ヘタレになったけど今の俺は軽く最強だから宜しく!」などと書いていた。

所属事務所は「今は元気だと聞いている。搬送された理由など詳細はこれから確認する」と話している。
([柳楽優弥さん]大量の薬物摂取か、病院搬送 命に別条なし)


急性中毒の患者さんが救急搬送された場合、血液や尿検査などで、ただちに原因物質が判明するというわけではありません。そのため、診断においては問診(どんな薬剤を摂取したのか、どれくらい大量に摂取したのか、摂取後にどれくらい経過したのか、普段に服用している薬剤はどんなものなのか、など)が重要となります。

ただ、意識レベルが低下した場合や、治療に非協力的な場合は本人からの聴取は難しく、周辺に散乱する飲み残しと考えられる薬剤、錠剤などが入っていた空のシートなどが、原因物質推定の助けとなります。

ですが、それ以外にも複数の薬剤を摂取している可能性も否定できないことや、意識があって問診可能であっても、服用薬物や服用時刻を正確に話してくれるとは限りませんので注意が必要です。

こうした急性中毒を疑うに足る十分な情報を得ることにより、初めて迅速な治療が開始されることになります。ですので、パニックになっているかも知れませんが、ご家族などの発見者は周囲に薬剤の空シートや、通院先の病院からの処方箋などがあった場合、搬送先に持ってきていただくと非常に大きな手助けになります。

また、「普段飲んでいる薬を服用しただけ」でも、中毒症状を呈することもあり、注意する必要があります。たとえば、抗痙攣剤、気管支拡張剤、強心剤など有効血中濃度と中毒域が近接している薬剤では、連用中の体調不良など些細な原因で過量摂取におちいり種々の症状を呈することがあります。こうした場合、患者さん自身は正しく薬を飲んでいると思っているので、本人やご家族も中毒という自覚はないわけです。

検査としては、化学物質自体の影響あるいは合併症のため、肝・腎機能障害、心肺機能低下、造血器障害、その他あらゆる非特異的な検査値の異常を呈することがあり、他の疾患や外傷など全く同様の一般臨床検査が必要となります。やはり臨床症状と周囲の状況から、ほかの原因による意識障害を鑑別することが必要になります。

血液検査のほかに、心電図検査にて三環系抗うつ薬、フェノチアジン系薬剤、ブチロフェノン系薬剤の中毒時にはQRSやQT時間の延長がみられることもあります。特に、三環系抗うつ薬(イミプラミン、アミトリプチリンなど)、四環系抗うつ薬(ミアンセリン、マプロチリンなど)は比較的安全と考えられます、心筋伝導障害による不整脈が突然死の原因として注目されています。長期間の心電図モニターが重要となります。

治療としては、以下のようなものがあります。
特異的な治療薬、拮抗薬が存在する物質は限られています。拮抗薬の有無にかかわらず、気道や静脈路の確保、痙攣に対する処置、催吐、胃洗浄、活性炭や下剤の投与といった基本的な中毒に対する処置、その他の対症的な治療を確実に行うことがまず重要となります。

胃洗浄は、一般には摂取後3時間以内ならばまだ胃内に残存している可能性があり、胃洗浄の適応といえます。3時間を超えると、ショックや重度外傷後などを除くと、ほとんど胃内には残存していないと考えられます。

意識が清明な場合は吐かせた後、胃洗浄を行います。意識が障害されている場合には、あらかじめ気管内挿管をしたうえで胃洗浄を行い、その後1g/kgの活性炭を10〜20%硫酸マグネシウム溶液300mlに混ぜて胃内に注入したりします。

軽症であれば輸液と経過観察しますが、中等症以上では気道確保、人工呼吸、循環管理、体液管理などいわゆる生命維持療法が必要になります。

上記のようなケースでは、どんなものを服用したのかなど詳細は不明ですが、命に別状もなく、意識レベルも保たれているとのことです。今後は、精神的なサポートを行うことが重要になってくると思われます。

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