手足の関節が腫れて痛む関節リウマチは、病状が進行すると、関節が壊れて歩けなくなることもあるなど、患者の日常活動は大きく制約される。関節の破壊を抑えるとされる新薬「生物製剤」が今年4月、2種類承認された。この種の製剤は、先に発売されている薬と合わせて計4種類となり、治療の選択肢が広がった。

関節リウマチは、全身の関節に炎症が起きて痛み、進行すると関節が壊れて変形する。指が動かず食事にも苦労し、歩けなくなる人もいる。患者数は約70万人とみられる。

この病気は、炎症を起こしたり、骨を破壊する細胞を活性化させたりする物質、サイトカインが病状悪化の一因となる。その働きを防ぐよう、遺伝子組み換え技術を使って作ったのが「生物製剤」だ。従来使われていた抗リウマチ薬は、ある程度、炎症を抑えることはできたが、関節破壊を防ぐ効果は低かった。

今年4月承認されたのは、「アクテムラ(一般名トシリズマブ)」と「ヒュミラ(同アダリムマブ)」。このうちアクテムラは、大阪大元学長の岸本忠三さんらの研究グループと中外製薬が開発した国産薬だ。

小学校教諭の40歳代の女性は、1990年にリウマチと診断された。既存の抗リウマチ薬を飲んだものの、関節の変形が進んだ。手の指が曲がり、ぞうきんも絞れない。膝や股関節が痛み、教壇に立つのがつらい。

96年、大阪大でアクテムラの効果を調べる臨床試験に参加、点滴治療を受けたところ、関節の痛みが減り、歩くのも楽になった。今も体調が良い。

他の生物製剤3薬は、サイトカインの中でも「TNF(腫瘍壊死因子)-α」の働きを抑えるが、アクテムラは別のサイトカイン「IL(インターロイキン)-6」を標的とする。開発者の一人、大阪大免疫アレルギー内科客員教授の吉崎和幸さんは「薬の作用の仕方が違うので、ほかの薬が無効な場合にも効く可能性がある」と期待する。

東京医科歯科大膠原病・リウマチ内科教授の宮坂信之さんによると、これらの薬は、メトトレキサートなど既存の抗リウマチ薬が効かなくなった場合に使う。痛む関節数が半分以下に減るなどの効果が、治療開始後1年の時点で60〜70%ほどの患者に表れる。

ただ、薬が高価で、患者の医療費負担は大きい。4製剤は、保険の3割負担でも、年40万〜60万円ほどかかる。副作用の問題もある。免疫を抑える薬なので、肺炎など感染症にかかりやすくなるのだ。

承認から3〜5年がたつレミケードとエンブレルによる肺炎の発病率は、投与者の1〜2%ほど。宮坂さんは「生物製剤の中では、効果も副作用も分かっているレミケードかエンブレルを最初に使うのが、現時点では一般的だと思う。今後、新薬の投与実績が蓄積されていけば、薬の選び方も変わってくるだろう」と言う。

肺炎の副作用は、高齢者や多量のステロイドの服用者などに起きやすい。宮坂さんは「リウマチ専門医とよく相談し、肺炎球菌ワクチンを打つなど予防策を取ってから治療してほしい」と話している。
(関節リウマチに新薬)


関節リウマチ(RA)とは、骨の破壊を特徴とする慢性の多関節炎であり、しばしば関節以外の臓器病変(発熱、全身倦怠感、食欲不振などの全身症状や間質性肺炎、リウマトイド結節、アミロイドーシスなど)も引き起こすことがあります。

有病率は1%前後で、40〜50歳代での発症が多く、男女比は 1:3〜4 で女性に多いという特徴があります(つまり、中年の女性に好発)。

症状としては、多発性(3関節以上)対称性関節炎を特徴とします。ですが、発病初期は必ずしもこの限りではありません。手関節、中手指節(MCP)関節、近位指節間(PIP)関節などの手の関節が最も侵されやすく、初発部位も手の関節が最も多く、約50%を占めます(遠位指節間[DIP]関節が侵されることは稀)。

罹患関節の疼痛、腫脹、熱感、可動域制限を訴え、炎症が著明であれば発赤も出現します。さらに、関節リウマチで特徴的な朝のこわばり、安静後のこわばりもほとんど必発します。進行すると骨破壊が起こり、次第に変形してきます。

関節を支える靱帯の弛緩とともに関節の屈曲や過進展をきたして、たとえば指のスワンの首変形swan-neck deformityやボタン穴変形boutonniere deformityが起きることもあります。

足では,中足趾節関節が特に変形をきたしやすく、第1趾は外反変形して下にもぐりこみ、第2,3,4趾は先端が上方に変位しやすく伸展拘縮し、DIPの伸展拘縮を伴うと槌趾となり、歩行に障害が出やすくなります。

頸部の軸椎の歯状突起後面と横靱帯の間にある滑膜組織の炎症により、環軸椎の固定がゆるむと環軸椎亜脱臼が生じ、頸椎の屈曲による頸髄圧迫障害が起こる可能性もあります。垂直性亜脱臼が生じると、歯状突起の頭蓋底への陥入による圧迫と突然死の可能性もあります。

原因は不明ですが、自己免疫機序が関係していると考えられています。特に、上記にもありますが、関節局所において腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン1(IL-1)、IL-6などの炎症性サイトカインが過剰に産生され、これが関節破壊を導くと推測されています。

これらのサイトカインが産生され、炎症に強く関与します。サイトカイン産生により形質細胞が浸潤し、リウマチ因子(RF)が産生されます。また、関節滑液中に最も多く遊走してきた好中球は、蛋白分解酵素や活性酵素を放出することにより、骨・軟骨の破壊に働いてしまいます。

関節リウマチは、特異的な臨床症状や検査所見がないため、比較的特徴的な症状や所見を組み合わせた米国リウマチ学会(ACR)1987年改訂分類基準によって診断されます。この分類基準の7項目中4項目以上を満たした場合、関節リウマチと診断します。

治療としては、以下のようなものがあります。
関節リウマチの治療は、非ステロイド抗炎症薬や副腎皮質ステロイド剤により、患者さんのQOLを保ちつつ(痛みや全身症状を抑え)、抗リウマチ薬(disease-modifying antirheumatic drugs:DMARDs)や抗サイトカイン療法により、関節破壊の進行を阻止して、関節リウマチの長期予後を改善させることにあります。

関節痛に対しては、非ステロイド抗炎症薬が用いられ、ロキソニンやハイペンなどが用いられます。高齢者や潰瘍既往歴を有する患者さんにはCOX-2選択性の高い薬剤を優先します。消化器症状の訴えがあれば胃粘膜保護薬を併用することになります。

活動性が低〜中等度、関節破壊の進行は遅いと判断できる場合では、アザルフィジンENやリマチルなどの抗リウマチ薬が用いられます。また、活動性が高く、関節破壊の進行が予知される場合は、リウマトレックス(DMARDs)、プレドニゾロンなどが用いられます。

リウマトレックスは関節リウマチ治療の標準薬となっています。週4mgから開始し、その効果と副作用をチェックしながら週8mgまで増量します。ただ、肝機能異常や口内炎をきたす場合や、副作用を起こすリスクが高い場合には、フォリアミン(葉酸)を投与します。

上記にもあるTNF阻害薬(レミケード、エンブレル)は、RAに対する有効性は非常に高いですが、感染症や注射時反応など、重篤な副作用をきたすことがあります。そのため、使用開始前に結核既往歴および曝露歴を確認、ツベルクリン反応、胸部X線撮影などを行う必要があります。また、ニューモシスチス肺炎や細菌性肺炎にも、注意する必要があります。これらの肺炎は高齢者、糖尿病や呼吸器疾患合併者にきたしやすいです。

こうした生物製剤に加え、新たにIL-6をターゲットにするアクテムラが登場し、選択肢の幅が広がりました。もちろん、価格や副作用の問題もありますが、治療効果が上げられると期待されます。

関節炎発症早期から積極的に治療することにより、寛解導入率を上げることができることが明らかにされてきています。これらの薬剤により、より多くの人たちが寛解を目指すことができれば、と思われます。

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