糖尿病があるからといって、子どものお泊り会や修学旅行の楽しみが奪われるべきではない。

米国糖尿病協会(ADA)は、糖尿病をもつ小児が自宅を離れる際には以下のことを準備するよう勧めている:
・インスリン、注射器、血糖測定器、尿糖試験紙および記録ノートなど、必要なものをもれなく荷物に入れる。いずれも予備を持たせる。
・移動時間が何時間にも及ぶときは、軽食、ジュース、ブドウ糖錠剤を持たせる。
・時差のある場所に出かける場合、インスリン注射のスケジュール調整方法について医師に相談する。
・糖尿病であることを明示した医療用IDブレスレットを必ず着用させる。
・外出中は、こまめに血糖値をチェックさせる。
・糖尿病とその管理について理解している大人が必ず付き添うようにする。

(糖尿病の小児を旅行に参加させるときの留意点)


糖尿病とは、インスリンの絶対的もしくは相対的不足により引き起こされる、持続的な高血糖状態を指します。自己免疫的機序により発症する1型糖尿病と、それ以外の原因による2型糖尿病に大別できます。

1型糖尿病は、自己免疫的機序により、膵臓のインスリン産生を行っているβ細胞の傷害によって起こると考えられます。故に、絶対的なインスリンの不足(産生自体が難しくなるため)が起こってきます。国内の小児の年間発症率は、10万人当たり1.5人で、学童期に多く発症します。

発症は急激で、高血糖による口渇、多飲、多尿、体重減少が進行し、脱水、意識障害をきたします。肥満はなく、むしろやせ型で、家系内に糖尿病患者は少ないという特徴があります。

一方、2型糖尿病とは、生活習慣が大きく関わっており、慢性的な高血糖状態やインスリン抵抗性(インスリンが多く分泌されていても、効かない状態)により、相対的なインスリン不足状態を指します(分泌自体はあっても、作用が追いつかない状態)。その後、インスリン分泌不全も起こってくる可能性があります。1型に比べ、2型糖尿病では家族歴が濃厚で、学童期以降に学校検尿で発見されることが多いです。

インスリン分泌低下をきたす素因に、過食、肥満、運動不足、ストレスなどの環境因子および加齢が加わり発症します。従来、成人での発症が大部分でしたが、小児肥満の増加とともに小児での発症が増えてきています。ただ、肥満を伴わずインスリン分泌不全が主体となる例が2型糖尿病の10〜20%に認められます。

上記のような注意点は、1型糖尿病を対象に書かれていると考えられます。1型糖尿病における治療としては、以下のようなことが言えると思われます。
1型糖尿病では日常生活に特別な制限はありませんが、規則正しい食生活とインスリン療法が不可欠となります。年長児くらいになれば、インスリン自己注射や血糖自己測定などが行えると思われます。

治療初期は、空腹時血糖値140mg/dL以下、食後2時間血糖値200mg/dL以下を目標にインスリン量を調節します。長期的にはHbA1c 6.5%以下を目指すようにします。1日のインスリン注射量は、0.4−0.5単位/kgから開始しますが、血糖値の低下とともに内因性インスリンの分泌が認められ、インスリン注射量を減らすことができます。

乳幼児では朝・夕食前の1日2回、速効型と中間型を混じた混合インスリンを皮下注射し、学童以上では1日4回注射(朝・昼・夕食前の速効型インスリンと就寝前の中間型インスリン)の強化インスリン療法を行います。ただし、実際の食生活や日常生活を行い、血糖コントロールを観察して適宜インスリン量を調節します(1日中血糖値が高めの時は基礎分泌分である中間型インスリンを増量するなど)。

低血糖対策も重要になります。低血糖かな、と思ったらすぐに、ブドウ糖錠などの甘い物を摂るように指導します。低血糖を怖がりすぎないためにも、低血糖症状をよく理解しておく必要があります。

ただし、小学校の低学年までは低血糖を自覚できない子供が多いので、子供の様子が何かおかしいと感じたら(泣き叫ぶ、不機嫌で怒りっぽくなる、聞き分けがなくなるなど)血糖測定を行い、その時の行動パターンやインスリン量を記録させ、その情報を元にして、低血糖の症状やその対応を判断させるように指導します。

低血糖の時のため、補食の準備(アメ玉を持たせる、などでも助けになります)や血糖測定用器材の整備、グルカゴン注射の準備などをしておくといいでしょう。

病気を理由に外出や遠出ができないとなると、やはり子供にとってはストレスになったりするのではないか、と考えられます。対策をしっかりと講じながら、旅行を楽しんで欲しいと思われます。

【関連記事】
生活の中の医学

糖尿病神経障害の症状とは