どんな薬でも副作用というものがあり、よく知らずにいると危険なことが多いものです。副作用の現れ方にも個人差があり、全員に同じ症状が出るとは限りませんが、超微粒の銀(コロイダル・シルバー)を含む点鼻薬を使用した女性の顔が、銀色になってしまい警告を発しています。

Telegraphによると、アメリカに住むローズマリー・ジェイコブスさん(66歳)の顔は、銀皮症(argyria)と呼ばれる珍しい病気のために、常に灰色をしているそうです。これは彼女が11歳のとき、超微粒の銀であるコロイダル・シルバーが含まれた点鼻薬を使い始めたことによります。

4年後に皮膚の検査をして判明しましたが、多数の小さな銀の粒子が皮膚の深層に埋め込まれていたのです。そしてそれを元には戻すことができないと告げられました。

何年もの間、皮膚のことでからかわれたり、また皮膚の治療を受け続けました。しかし今回、彼女は銀を含む薬やサプリメントの危険さを理解してもらうため、メディアに出ることにしたようです。何も知らない人には伝染病ではないかと避けられたり、心無いことも言われてきたそうです。

コロイダル・シルバーは現在もいろいろな薬やサプリメントに使われており、禁止するか警告を発するべきと訴えています。彼女が医者から処方された薬は、アレルギー性鼻炎を軽減するため、1日置きに4年間使ったそうです。

肌の色が変化していくのは非常に遅く、本人はもちろん、毎日見ている家族や友人も気づきにくいため発見が遅れたそうです。ほとんどの銀皮症(argyria)は気づいたときには手遅れというケースが多いようです。

ジェイコブスさんは言います。
「私は高校のときも大学のときもデートをしたことがなかったわ。普通になりたかった」

1970年に皮膚の表面をはがす手術(皮膚剥離)を受けましたが、いくつかピンクのまだらが残り、とくによくなったわけではないとしています。カリフォルニア州でも、「ブルー・マン」(青い男)と呼ばれる男性のケースがあり、問題になっていました。

誰にでも症状が現れるわけではないだけに情報が伝わりにくいですが、深刻な副作用は前もって知る必要があると感じさせるニュースですね。
(銀入りの薬を服用した女性、副作用で顔が銀色に)


銀皮症とは、銀剤を経口的・非経口的に摂取したことにより、銀粒子が皮膚に沈着した状態を指します。ちなみに、金皮症といって、金剤を摂取したことによって生じる疾患もあります。

銀皮症には8g以上、金皮症には4g以上の摂取が必要とされていますが、個体差・素因も関連しています。銀剤は現在ほとんど使われていませんが、多量の銀粒仁丹の服用や整腸剤、硝酸銀など局所治療剤が局所から吸収されて沈着した例があります。

以前は、銀剤が内服・注射に使用され、また収斂剤として外用された頃には銀皮症は多かったそうですが、使用されなくなってからは激減したそうです。

上記のように、皮膚に淡青色から灰青色の色素沈着を認めます。特に顔面、頚部、手背などの日光露出部では、表皮基底層のメラニン色素増加も加わって色素沈着が強いそうです。ちなみに、診断上では爪や口腔粘膜への色素沈着(眼球粘膜、歯肉などにも色素斑をみる例がある)も役立ちます。

こうした色素沈着はみられますが、そう痒感などの自覚症状はありません。ですが、やはり顔面などでは色素沈着などが起これば審美的に点で、本人にとって非常に大きな問題となると考えられます。

治療としては、以下のようなものがあります。
当然のことながら、銀製剤による治療または摂取を中止する必要があります。ですが、色素沈着は永続的であり、軽快することはほとんどないそうです。ですが、日光曝露によって増悪することがあり、それを避ける必要があります。

ちなみにローズマリーさんが行った皮膚剥離術とは、表皮と真皮浅層の病変部をけずり、皮膚の上層を除去する手技を指します。その後、皮膚の付属器から上皮化するので軽微な瘢痕を残すのみで治癒します。

用いる機器としては、高速回転バーや駆動用のモーターなどがあります。レーザーを用いた手術に取って代わられていることが多いですが、現在でも瘢痕の治療などに用いられています。

同様の疾患で悩まれている方にとって、こうした「同じ悩みで苦しんでいる」という患者さんのエピソードは、励みになるのではないか、と考えられます。ローズマリーさんの悩みを理解するのは難しいかもしれませんが、「普通になりたかった」という切実な願いが、非常に印象的でした。

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