読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
1年ほど前から両ひじより下に内出血のあとが生じるようになりました。重い物を持ったり、力を入れてドライバーを回したりした後にできるようです。1ヶ月ほどで消えますが、心配です。(73歳男性)
この相談に対して、NTT東日本関東病院皮膚科部長である五十嵐敦之先生は、以下のようにお答えになっています。
おたずねの症状は老人性紫斑といわれるものです。

老化により皮膚は薄くなり、皮膚の血管の強度を保つために働くコラーゲンの量が減ります。また、紫外線の影響により皮膚の弾力も失われていきます。さらに血管自身も弾力性を失っていきます。すると皮膚は外から加わる力に対する抵抗力を失い、わずかな力でも血管が破れ、出血を起こしやすくなります。血管が破れると皮膚の下に血液が広がり紫斑となるわけです。

機械的な刺激により生じやすく、日光の当たりやすい前腕から手の甲が最も出現しやすい部位ですが、首、すねなどにも生じます。

ほんのちょっとした刺激で生じるものですから、全く覚えがないのに大きなあざが出来ているのに気づいて、びっくりすることもしばしばあります。

皮膚の浅い部位の出血なので、打ち身などによる青紫色のあざと違って色調は赤紫色ですが、次第にだいだい色から黄色、褐色となり、2、3週間の経過で自然に出血が吸収されて消失します。症状が強いときは表皮がはがれてしまうこともあります。

そもそも紫斑とは、真皮内あるいは皮下組織への出血による皮膚症状を指します。紫斑には、大きく分けて全身性疾患に伴うものと皮膚原発のものに分けられます。

前者(全身性疾患に伴うもの)には、血管壁成分であるコラーゲンの代謝異常により血管壁の脆弱化を来すEhlers-Danlos症候群や、コラーゲンの合成に必須であるビタミンC欠乏による壊血病、あるいは毛細血管壁にアミロイドが沈着して紫斑を生じる原発性全身性アミロイドーシスなどがあります。

この場合には臓器出血の有無に注意して、全身症状の観察を行うことが重要となります(家族性に出血性素因をみることがあり、家族歴の聴取も必要)。原因として止血機構の障害(出血性素因)によるものと、止血障害によらないものとがあり、〃貍板 凝固因子 7豐 だ維素溶解能 の異常に分類されます。

後者(皮膚原発のもの)には、老化やステロイドの皮膚への副作用のため血管支持組織の変性や、血管壁の弾力性低下を来して紫斑を生じる老人性紫斑や、ステロイド紫斑があります。

老人性紫斑とは、通常60歳以上の老人にみられる、手背または前腕外側など外力を受けやすい部位に境界鮮明で不規則な形状を有する紫赤色のうっ血斑を指します。皮膚および血管の支持組織が萎縮し、外力により容易に血管にねじれやずれが生じて破綻するために生ずると考えられます。

上記の経過のように、老人性紫斑はたとえ放置しても自然消退する一過性の出血であり、全身的異常はありません。止血検査は正常です。

ちなみに、これら疾患の鑑別については、以下のようなことが言えると思われます。
紫斑の原因、病態を明らかにすることが重要となります。特徴のある紫斑であれば診断は容易ですが、紫斑のみから病因を診断することはしばしば困難であり、ほかの皮膚粘膜症状、全身症状、既往歴、家族歴などを参考にし、出血性素因としての臨床検査(血小板数、出血時間、部分トロンボプラスチン時間、プロトロンビン時間、毛細血管抵抗、フィブリノーゲン定量、FDP定量など)を施行します。

老人性紫斑のように血管性紫斑では、血管自体や血管周囲に障害がみられるための出血であり、出血性素因としての血液検査では異常をみることは少ないです。症状の発現に至る経過、誘因などを検索し、それに対応した治療を考える必要があります。
内臓疾患を伴うものではなく心配のないものであり、皮膚の血管が切れやすいからといって脳出血を起こしやすいということもありません。

ビタミンCの内服に予防効果があるようにいわれることもありますが、効果はあまり期待できません。皮膚を保護して機械的な刺激をできるだけ避けるようにするのがよいでしょう。

血管性紫斑に対する全般的な治療方針としては、誘因を避け、外的刺激の除去をはかりるといったことが重要です。皮膚保護の意味では、白色ワセリン外用を行うこともあります。

内服療法では、血管壁の強化や止血を目的に投与しますが、長期にわたることもあるので副作用発現の少ないものを選ぶ必要があります。たとえば、ビタミンC内服のためにシナールや、止血目的でアドナ・トランサミンを内服することもあります。

根本的な治療法や解決法はないため、できるだけ誘因(重い物を持ったり、力を入れてドライバーを回したりする)などを避けるといったことが重要であると考えられます。

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