以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

海外旅行から帰国した頃から鼻のつまりや喉の痛みを感じるようになったS・Mさん(37)。その後、夜中に咳が出るようになった彼女は、夏風邪がひどくなってきたと思い、市販の風邪薬を服用。すると、息苦しさを伴う激しい咳に襲われました。

実は、日頃から新しい薬を買っても、中の注意書きや箱書きを読むことなく、そのままゴミ箱に捨てていたS・Mさん。翌日も風邪薬を飲むと、激しい咳ばかりか、吐き気にまで襲われます。ようやく近所の内科で診察を受けた彼女は、咳止めと抗生物質、風邪薬を処方されますが、それを飲んだ15分後、猛烈な息苦しさを感じ、意識を失ってしまいます。

病院に救急搬送された彼女が、診察や検査の結果に診断された病名は、アスピリン喘息(解熱鎮痛薬喘息)でした。

アスピリン喘息とは、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害作用を有する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の投与で喘息発作が誘発される、あるいは増悪する喘息のことを指します。簡単に言ってしまえば、風邪薬や痛み止めなどに使われる解熱鎮痛成分に対して、過敏に反応してしまう疾患です。激烈な発作になる傾向があり、死亡例もあります。

一度この病になると、それまで問題なかった薬でも、体がアレルギー反応を起こしてしまい、喘息発作がおきてしまいます。食品、医薬品の各種添加物にも過敏性をもつことがあります。もちろんアスピリンだけでなく、それ以外の非ステロイド性解熱鎮痛薬(インドメタシン、イブプロフェン、ナプロキセンなど)でも発作を起こしますし、食品添加物であるタートラジン(黄色4号)に過敏な場合もあります。

患者は10代から高齢者までと幅広く、日本の患者数はおよそ30万人にも上ると言われています。成人喘息の約10%にみられ、副鼻腔炎、嗅覚低下、鼻茸を高率に合併します。

彼女の場合は、海外から帰国した頃だと考えられます。あの時起きた、鼻のつまりや喉の痛み、さらには夜間の咳といった症状は、鼻、喉、気管支などの気道に、慢性的な炎症がおこり、いつアレルギー反応が起きてもおかしくない状態になったことのサインであったと考えられます。

しかし、そうとは知るよしもない彼女は、解熱鎮痛成分を含む風邪薬を飲んでしまいました。結果、気道の炎症が急激に悪化。喘息を起こし、あのひどい咳と息苦しさに襲われたのです。実はこの症状こそ、この病の最大の特徴です。薬を飲んで1時間以内に、ひどい咳や息苦しさを感じたら、解熱鎮痛薬喘息を疑う必要があります。

診断や治療としては、以下のようなものがあります。
問診で診断困難な場合では、内服負荷試験が最も確実ですが、危険性が高いです(同様の発作を誘発することになる)。スルピリン吸入試験は安全性に優れますが、特異性にやや問題があります。

治療に際して、コハク酸エステル構造にも潜在的に過敏であり、この構造を有するステロイド薬の静注は禁忌となります。そのため、アスピリン喘息およびその疑い例ではデカドロン点滴静注1回8mg、またはリンデロン1回4mgを点滴静注したりします。

他は一般的な気管支喘息の急性発作時と同様に、酸素吸入やβ2刺激薬(サルタノールインヘラーまたはメプチンエアー1回2吸入)やアミノフィリン(キサンチン誘導体)点滴静注などを行います。

彼女の場合、もっと早く異変に気付く方法は実はあって、実はそれこそが、普段は捨ててしまっていた注意書きをしっかり読むことでした。なぜなら、この病を起こす危険がある薬の注意書きには、厚生労働省より次のような記載をすることが指導されています。

「次の人は服用しないこと。本剤または、他の風邪薬、解熱鎮痛薬を服用して喘息を起こしたことがある人」さらに「まれに下記の重篤な症状が起こることがあります。その場合は直ちに医師の診療を受けること」その一つに「喘息」があげられているのです。

ですが、S・Mさんはこうした記載を読まなかったため、薬のせいで異変が起きたとは思いもせず、「薬アレルギーなし」と答えてしまいました。もし注意書きを読んでいれば、自分に起きた異変を、薬アレルギーと疑えたかも知れません。その結果、彼女には、喘息発作を起こしてしまう薬が処方されてしまい、症状を悪化させてしまったのです。

解熱鎮痛薬喘息になっても、全ての解熱鎮痛薬が飲めないわけではありません。その人の身体に合った安全な薬もあります。その意味でも何より大切なのは、普段から注意書きをしっかり読み、何か異変があったら、すぐに医師に相談することが重要となります。

また、一般的な市販の薬であっても、こうした副作用などが生じることがあります。皮疹や上記のような症状が現れてきた場合には、しっかりと受診して医師の判断を仰ぐことが重要となります。

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