現役時代フィオレンティーナとACミランでFWとして活躍したステファノ・ボルゴノーボ氏が、ALS(筋委縮側策硬化症)に犯されていることを告白し、イタリアサッカー界に衝撃を与えた。

現役時代にACミランでボルゴノーボ氏とチームメートだった現アヤックスのマルコ・ファン・バステン監督は、難病と闘うボルゴノーボ氏の現役当時を振り返った。

フィオレンティーナ専用のラジオ番組“Lady Radio”に出演したファン・バステン監督は「ステファノはピッチ上で知性を発揮していた。ヘディングが強く、得点嗅覚に優れた選手だった。その実力は、現在フィオレンティーナで活躍するアルベルト・ジラルディーノ以上だったとも感じている。とは言え、アルベルトがACミランでの経験を生かし、フィオレンティーナのリーダーに成長することも願っているが」とコメントした。

フィオレンティーナとACミランは、ボルゴノーボ氏を支援する慈善試合を8日、フィオレンティーナ本拠地のアルテミオフランキ・スタジアムで行うことを決定。ファン・バステン監督はシーズン中ということもあり同試合への出場は辞退している。
(難病と闘うボルゴノーボ氏にファン・バステン「ジラ以上だった」)


筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは、上位・下位運動ニューロンが障害され、進行性の筋力低下、筋萎縮をきたす疾患です。簡単に言えば、手足や喉、舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく疾患です。筋肉そのものの病気ではなく、筋肉を動かし、かつ栄養している運動神経細胞が死んでしまうために起こります。

有病率は10万人に対して1.9〜6.5人です。男女比は 1.5:1 で男性に多いです。多くは50歳以上で発症します(年齢とともに増大して50〜60歳代でピークを迎える)。全ALSの約5%に家族性(常染色体優性遺伝)を示すものがあります。また、グアムや紀伊半島南部に通常の約50倍の多発地域があることが知られています(西太平洋ALSとよばれる)。多発地域の土壌、水質検査でCa、Mgの低下、Mn、Alの高値が指摘されており、電解質、微量金属との関係も指摘されています。

家族性筋萎縮側索硬化症(FALS)の20%に21q染色体に異常を認め、これがスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性を低下させ、活性酸素過剰となり、神経障害を引き起こすという説があります。

また、ALSでは前角細胞にニューロフィラメント(NF)の貯留が認められるため、NFの蓄積が軸索機能を阻害し、運動ニューロン死をきたすという仮説もあります。他にも、神経栄養因子の異常、グルタミン酸代謝異常、自己免疫機序の関与も考えられています。

上位運動ニューロンの変性によって四肢の痙縮、深部腱反射亢進、Babinski徴候などが生じます。下位運動ニューロンの変性によって顔面、舌、咽頭、呼吸筋、四肢、体幹の筋萎縮、筋力低下、筋線維束収縮を生じることがあります。

進行性の経過をとり、数年の経過で起立・歩行困難、呼吸不全に陥ってしまいます(病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2〜4年で死亡)。ただ、知能障害や感覚障害はみられず、膀胱直腸機能や眼球運動は最後まで保たれれます。

通常、一側上肢または下肢筋の筋力低下、筋萎縮で発症します。四肢の筋力低下、萎縮、体幹筋の萎縮、球麻痺(球とは、延髄球のこと。口や舌などの運動を司る神経が集まっている。そのため、ここが障害されると構音障害、嚥下障害などが生じる)、呼吸筋麻痺へ進行していきます。球症状、呼吸筋麻痺の症状が初発になることもあります。強制泣き・笑いが進行例でみられます。

また、感覚症状や外眼筋麻痺、膀胱直腸障害、褥瘡は一般的には認めません。これらをALSの陰性4徴候といいます。通常、認知症ははありませんが、ALSの数%に認知症を認め、湯浅、三山型と呼ばれます。

必要な検査や治療としては、以下のようなものがあります。
特異的な検査所見はありませんが、針筋電図検査では、安静時に線維性収縮、最大収縮時には、活動電位の減少と持続時間の長い高振幅電位を認めます。また、運動神経伝導速度(MCV)は正常であり、運動誘発電位では潜時の延長、振幅の低下、中枢運動伝導時間の低下を認めます。

筋生検では、群性萎縮や小角化線維、標的線維などの所見がみとめられます。頭部MRI検査では、錐体路に異常を認めることもあります。また、病初期には、軽度の血清CK上昇をきたす例が存在し、髄液蛋白の上昇をきたす例もあります。

現在の所、根治治療はありません。対処療法が主だったものになり、嚥下障害には経管栄養、呼吸筋麻痺には気管切開、人工呼吸管理をすることにより、長期生存も可能となります(ただし、確実に進行し,四肢体幹筋麻痺によりベッド上生活となり、球麻痺、呼吸筋麻痺をきたし、発症後平均 2〜3年で死亡という経過をたどってしまうと考えられます)。

神経栄養因子の投与やグルタミン酸を抑制する薬物治療が試みられ、インスリン様成長因子-(IGF-)、リルゾールが病状の進行を遅延させるとの報告もありますが、まだ確実な治療とは言いにくいと思われます。

国内でも、エダラボンの点滴投与や、メチルコバラミンの大量筋肉内投与の治験が行われています。根治治療の研究や開発が進むことが望まれます。

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