肥満度を示す体格指数(BMI)が「やせ」(18.5未満)でも、血糖値など血液検査のいずれかの数値が特定健診(メタボ健診)の基準値を超えている割合が4人に1人に上ることが、日本医療データセンター(東京都千代田区)の大規模解析で分かった。こうした人は、心筋梗塞などの重大疾患を起こす危険性が正常な人の5倍に達した。肥満の人だけではなく、やせた人も検査値に注意を払う必要性が浮き彫りになった。

センターは全国の健康保険組合と契約し、加入者の情報を匿名で分析し、病気の傾向や治療などの評価に取り組む企業。06年4月〜07年3月に健診を受けた男女5万2265人(30〜59歳)を対象にデータ解析した。

それによると、「やせ」の人のうち、血糖値、血中脂質、血圧のいずれかが特定健診の基準値を超えた人は25.6%に達した。BMIが18.5以上25未満の「標準」で51.3%。「肥満」(25以上)では81.6%だった。

心血管疾患や糖尿病の合併症などを発症した「肥満」は「標準」「やせ」に比べ2〜3倍あった。ところが、基準値を超える検査値があった人の発症率を正常値の人と比べると、「やせ」は5倍、「標準」は3.4倍、「肥満」は3.1倍と、やせているほど検査値の異常が影響を及ぼしていた。

今春始まった特定健診は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を重視し、腹囲など肥満に関する数値が健診の必須項目としている。肥満でない人は健診後の指導対象から外されている。データを解析した佐藤敏彦・北里大准教授(公衆衛生学)は「スリムでも血液検査結果に問題がある人は、早めの対策が必要」と話す。
(「やせ」でも血液数値、基準値超…4人に1人)


肥満とは、体内の脂肪組織が過剰に蓄積した状態ということができると思われます。臨床的には、体格指数であるbody mass index(BMI)を用いて判定します。BMIは、体重(kg)/{身長(m)}^2で算出し,22が最適なBMIであり、25以上を肥満としています。

一方、「肥満症」とは、肥満に起因または関連して発症する健康障害で、治療が必要な病態であると日本肥満学会は定義しています。具体的には、BMI≧25に加えて、
‖囘能異常・糖尿病、∋藜疎綣娑枉錙↓9盞谿機↓す眷∋牲貍鼻δ防、セ號担痢↓Υ動脈疾患、脳梗塞、┨・関節疾患(変形性関節症など)、睡眠時無呼吸症候群、月経異常
こうした項目のいずれか1つ以上を伴う場合を指します。

さらに日本肥満学会は、内臓脂肪蓄積型肥満を呈する症例も肥満症に含めることを提唱しています。皮下脂肪型肥満に比べ、内臓脂肪型肥満では糖尿病、脂質代謝異常、高血圧などを同一個人に重複して発症しやすく、特に治療が必要な病態となっております。

内臓脂肪型肥満とは、臍レベル腹部断面での内臓脂肪面積100cm²以上としています。ただし、内臓脂肪面積を直接測定する事は健康診断や日常臨床の場では容易ではないため、メタボリックシンドロームなどの診断では、腹囲の測定により代用し、男性85cm以上、女性90cm以上を内臓脂肪型肥満としています(日本肥満学会による基準)。

脂肪組織を形成する脂肪細胞は、以前は単なるエネルギーを蓄える貯蔵組織と考えられていましたが、最近では、TNFαやレプチンやアディポネクチンなどの種々のホルモンやサイトカインを産生・分泌し、糖・脂質代謝や血圧の調節に重要な役割をはたしていると言われています。つまり、単に「太っている」といった外見的な問題だけでなく、レプチンを分泌するなど、食欲抑制やエネルギー消費の調節に関与していると言われています。

また、量の程度や局在の部位・程度により健康を害することが考えられ(特に、脂肪組織のうち、皮下脂肪よりも内臓脂肪が重要な役割をはたしている、といったように)、過体重か肥満かの判定のために体脂肪率または体脂肪量やその分布を推定することは、健康を考える上で重要であると考えられます。

ただ、上記のように肥満はなくとも、血液検査上で問題となることがあります。必要な治療としては、以下のようなものがあります。
生活習慣と大きな関連があるので、生活習慣の改善が最も重要となります。食事や運動療法による減量により、血糖や中性脂肪濃度が低下し、血圧も低下してきます。結果、内臓脂肪も減少することになります。もちろん、一般的に言われている減塩指導(食塩摂取量は6 g/日以下)、節酒・禁煙も重要となります。

脂質代謝異常、とくに中性脂肪高値が主体の場合、フィブラート内服などが行われます(ただ、本剤投与中、急激な腎機能の悪化を伴う横紋筋融解症が現れることあり、腎機能低下例などでは使用できません)。フィブラートは、主に血中TG濃度を低下させ、かつインスリン抵抗性の改善作用も合わせもち、降圧にも働くと考えられています。

また、高コレステロール血症も高脂血症で問題となります。高コレステロール血症とは、血中のコレステロール値が増加する状態を指します。空腹時の総コレステロール(TC)値が220mg/dL以上、LDLコレステロール(LDL-C)値が140mg/dL以上の場合を指します。

LDLコレステロールはいわゆる「悪玉コレステロール」、HDLコレステロールは「善玉コレステロール」といわれ、前者はその値が高いと問題となり、後者は少ないことが問題となります。現在、HDLはコレステロールの逆転送にかかわると考えられており、低HDL血症は粥状動脈硬化のリスクファクターの一つとされています。

薬物療法としては、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)、陰イオン交換樹脂、プロブコールのいずれか単独、あるいは適宜併用にてコントロールを図ります。ただ、高脂血症治療として、LDLコレステロール値が優位に上昇している場合はスタチン、中性脂肪値が優位に上昇している場合にはフィブラート系薬剤、あるいはニコチン酸誘導体を第1選択薬として用います。

スタチンは、コレステロール生合成系の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素を特異的かつ拮抗的に阻害するといわれています。つまり、スタチンは体内でのコレステロール合成を阻害し、血清コレステロール値を低下させることで高コレステロール血症を治療する薬と言えると思われます。

ただ、副作用として筋肉痛、CK(クレアチニンキナーゼ)上昇、横紋筋融解が起こる可能性があり、とくに腎機能低下例、フィブラート系薬剤やエリスロマイシンとの併用時には注意が必要であると考えられています。さらに、肝機能異常も起こりえます。

高血圧が主体の場合では、インスリン抵抗性を改善するACE阻害薬、アンジオテンシン脅容体拮抗薬(ARB)、長時間作用型Ca拮抗薬、α1遮断薬、血管拡張性β遮断薬を選択します。これらの内、インスリン抵抗性を改善するACE阻害薬・長時間作用性Ca拮抗薬・ARBは、利尿薬・β遮断薬やプラセボに比べて、糖尿病の新規発症率を14〜34%減少させたという報告もあるようです。

糖尿病であれば、生活習慣の改善に加え(食事療法や運動療法)、ビグアナイドやチアゾリジンなどのインスリン抵抗性改善薬により血糖をコントロールします。これらの薬剤では、中性脂肪濃度や血圧の低下も期待できると考えられています。吸収阻害薬も食後血糖を低下させ、インスリン抵抗性を改善すると言われています。

食後高血糖を示す例では、αグルコシダーゼ阻害薬(ベイスン、グルコバイ)、速効型インスリン分泌促進薬(ファスティック、スターシス、グルファスト)などを用います。肥満や空腹時の高血糖、高インスリン血症を示す例では、インスリン抵抗性改善薬(チアゾリジン誘導体 アクトス)、あるいはビグアナイド剤(メルビン、グリコラン 、ジベトスB )などを用います。インスリン分泌の低下が疑われる例では、インスリン分泌刺激薬であるスルホニルウレア(SU)剤を投与します。

上記のように、たとえ肥満ではないといっても、血液検査上では問題となることがあるようです。健康診断などを利用し、しっかりと生活習慣などを見直すことが重要なようです。

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