千葉県の国保松戸市立病院は10日、気管切開の手術中に電気メスから発火する事故があり、男性患者(76)が口の中や気管、顔などに重いやけどを負ったと発表した。松戸署は、業務上過失傷害の疑いで、関係者から事情を聴いている。

病院によると、手術は救急部の男性医師(27)が執刀。人工呼吸器と肺をつなぐためのチューブ(長さ約30cm)を別のチューブに交換する際、気管挿入するため電気メスでのどを切開中に刃の部分から発火。執刀医らがすぐに消火したが、数十秒間燃え続け、体内に入っていた交換前のチューブ約半分は溶けてなくなっていたという。

男性は9日午後、急性呼吸不全で松戸市内の別の病院から転院。翌10日午前10時半から手術が行われ、約30分後に事故が起きた。
(気管切開中に電気メス発火、男性やけど 千葉の病院)


気管切開術とは、前頸部で気管軟骨を切開し気管を開口することです。気管に至る進入経路と甲状腺との位置関係から、上気管切開術、中気管切開術、下気管切開術に分けられます。

上気管切開(甲状腺より上)の場合は、第2気管輪(輪状軟骨下約1cm)を目標に、下気管切開(甲状腺より下)の場合は、胸骨上縁から約1.5cmの第4、5気管輪を目標に気管切開孔を作ることを考えます。成人の場合は上気管切開、子供の場合は(できれば避けたいですが)、下気管切開を行うのが一般的です。

救急気管切開術は、(異物が詰まったなど)上気道閉塞症状が強く時間的余裕のない場合に行われます。本当に緊急な場合は、十分な手術器具も麻酔もない状況下で実施することもあります。通常の気管切開部位(第2〜3気管軟骨部)以外に、輪状甲状靭帯を切開して、そこから気管切開チューブを挿入する方法もあり、これは所要時間が短いという利点があります。

適応となるのは、
‐綉て散杭や閉塞(外傷、炎症、腫瘍、異物など)
∩延性意識障害患者の気道確保と誤飲や誤嚥の予防
D拘間の人工呼吸管理
で抉蠅簗亀で戮砲茲衂儔鵑糞て擦竜朧や洗浄が必要な場合
テ頸部悪性腫瘍などの手術時
などです。上記のケースでは、既にレスピレータ管理となっており、気管切開用気管チューブを交換する際、切開部を広げるために電気メスを使用したようです。

気管切開を施行する場合、以下のような注意点があります。
気管切開は気道確保の第一選択と考えず、経口または経鼻気管挿管で気道が確保できないかをまず考えます。もちろん、侵襲性も高く、術中には血管損傷(動脈、静脈)、神経損傷(反回神経)の恐れもあります。

もちろん、血管損傷の場合は出血による問題が起こってきます。反回神経麻痺が起こると、片側ならば嗄声(声帯を閉じることが難しくなり、掠れた声になる)、両側ならば窒息の恐れもあります。

ですが、上記のような電気メス自体による事故も存在するのだと、しっかり留意する必要があるようです。電気メスとは、高周波電流を術部に集中させ、ジュール熱により切開や凝固を行う手術装置です。特に300kHz〜5MHzを用いるものを指します。

術部にはメス刃状の電極を用い電流密度を高めて発熱させ、電流回収の対極板は広面積で生体に接し火傷を防ぎます。その熱凝固、蒸散作用などを利用して凝固切開をすることで、出血を抑えることができるという利点があります。

ところが、今回はそれが裏目に出て熱傷を負わせることになってしまったようです。詳細は分かりませんが、こうした事態が起こりうるのだということもしっかりと認識する必要がありそうです。

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