歌舞伎俳優、中村獅童(36)の父で、11日に胃がんのため死去した小川三喜雄さん(享年79)の通夜が16日、東京・南青山の梅窓院観音堂で営まれ、約450人が参列した。喪主の獅童は「デキが悪い子供で最後まで心配かけた」と沈痛な表情。父の「好きな芝居を精一杯やれ」という教えを守り、17日の葬儀は出ず、大阪・梅田芸術劇場での舞台を務めるため、式後は足早に大阪へ向かった。

通夜前に取材に応じた獅童は、紋付き袴姿でひげも剃り、凛とした面持ち。「失敗の度に『お前は1回死んだ方がいい』とキツイことも言われたけど、『役者を好きでやらせて頂いているのだから精一杯やれ』と言ってた」と目を潤ませた。

獅童によると、三喜雄さんは昨年末に体の不調を訴え、1月の検査入院で胃がんが判明。手術後は入退院を繰り返していたが、今月に入って容体が急変。「先月末に大阪へ舞台けいこに行く前に自宅へ顔を見に行ったのが最後でした」という。

三喜雄さんは初代・中村獅童を名乗り、舞台を踏んだが早くに廃業。その後は事務所を立ち上げ、プロデューサーとして歌舞伎俳優を志した獅童を陰から支え続けた。獅童も愛情の深さをひしひしと感じたという。
(中村獅童、沈痛…父小川三喜雄さん通夜)


胃癌は、広義では胃粘膜上皮から発生した癌腫(狭義の胃癌)と、上皮以外の組織から発生したがん(胃平滑筋肉腫・GIST・胃悪性リンパ腫など)の両方を含みますが、一般的には粘膜上皮から発生したもの(前者)を指します。

かつて、日本では男女とも胃癌が第1位でしたが、死者数は年々減少しています。2003年の日本における死者数は49,535人(男32,142人、女17,393人)で、男性では肺癌に次いで第2位、女性では大腸癌に次いで第2位となっています。

胃癌の近年増加率の低下がみられ、これは食生活の欧米化などによる環境の変化、検診などにより根治可能な胃癌が多数発見されるようになったこと、治療技術の進歩などの要因によると考えられます。ですが、日本における胃癌の死亡率は依然世界の第1位にあります。

胃癌の原因としては、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori:Hp)が胃炎やその進展、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の発生・再発に強く関係していることが指摘されており、世界保健機構(WHO)の国際癌研究機関(International Agency for Research on Cancer;IRCA)において、疫学的研究よりHpが胃癌の発生にも原因の一つとして働いていると考えられ、Hpは明らかに発癌性をもつものとして分類(Group1)されています。

また、癌遺伝子としてc-erbB2の過剰発現やK-sam遺伝子、c-met遺伝子の増幅などがあります。癌抑制遺伝子の異常としてはp53遺伝子、DOC遺伝子、APC遺伝子の失欠、変異による不活性化などが報告されています。

胃癌は、自覚症状による胃癌の早期発見は難しいです。ほとんどの場合、早期癌の段階では無症状であり、癌が進行してからでないとはっきりとした自覚症状が出てこないことが多いからと言われています。そのため、放置されてしまったり、逆に内視鏡検査などで早期発見されるケースもあります。

症状としては、腹痛や腹部〜胸部の不快感、吐き気や嘔吐を伴ったり、食欲減退、食事後の胃部膨満感や急激な体重減少などが起こってきます。他にも、下血や黒色便(血液中のヘモグロビンが胃酸によって酸化されて黒くなる)がみられることもあります(これらの症状は消化性潰瘍と同様で、症状だけでは両者の鑑別は困難)。

胃癌の転移には、血行性転移、リンパ行性転移、腹膜播種があります。胃壁内での深達度が進むほど転移率は高くなり、血行性転移では肝や肺、さらに骨、脳、皮膚、腎などへ転移します。リンパ行性転移は所属リンパ節から始まり、遠隔リンパ節へ転移をきたしていきます。腹膜播種は、漿膜を越えて胃壁を浸潤した癌細胞が、腹膜に播種して癌性腹膜炎を起こして腹水を生じます。

肝転移すると肝腫大、黄疸などが起こってきます。腹膜に転移すると腹水、後腹膜に転移すると強い背部痛を認めます。その他、左鎖骨上窩リンパ節転移(Virchow転移)、Douglas窩への転移(Schnitzler転移)、卵巣転移(Krukenberg腫瘍)などがあります。

高度な進行胃癌となると、体重減少、食思不振、貧血、腹部腫瘤触知、嚥下困難などの所見を認めることがあります。末期では、播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併することが多くなります。

治療としては、以下のようなものがあります。
胃癌の治療方針は、「胃癌治療ガイドライン」などにより、腫瘍の大きさ・部位・拡がり、病期、全身状態、あるいは患者の希望など様々な要素を勘案し決定されます。

深達度がM(粘膜内)で、N0(リンパ節転移なし)、分化型、2cm以下、潰瘍形成なしであれば、内視鏡的粘膜切除術を行います。StageIIもしくはIIIAなら、2群リンパ節郭清を伴う胃切除術(これが標準的な手術法であり、定型手術と呼ばれます)を行います。StageIV(遠隔転移を伴う)なら、姑息的手術を行ったり、化学療法などを行います。

胃の切除は、部位によって胃全摘術、幽門側胃切除術(十二指腸側2/3程度の胃切除)、噴門側胃切除術(食道側1/2程度の胃切除)などに分けられます。縮小手術では、胃の2/3未満の切除で、大網温存、幽門保存胃切除、迷走神経温存術などが行われることもあります。胃の2/3以上の切除とD2リンパ節郭清が行われるものを定型手術といいます。また、定型手術に他臓器合併切除が行われるものを拡大手術(胃の周辺臓器に直接浸潤する例や高度のリンパ節転移を認める例が適応)といいます。

胃の切除が終わったら、食物の通り道をつなぐために消化管再建が行われます。様々な再建法があり、個々の患者の状態に応じて選択されますが、代表的なものはBillroth I法(胃-十二指腸吻合)、Billroth II法(胃-空腸吻合)、Roux en Y法(食道or胃-空腸吻合)、空腸間置法(空腸で置換)などがあります。

現在では外科切除に加えて、内視鏡的治療や腹腔鏡下手術が行われるようになっています(低侵襲の治療法が行われるようになった)。内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)は、リンパ節転移の可能性がほとんどないとされる2cm以下の粘膜癌で、組織型は分化型(pap、tub1、tub2),肉眼型は問わないが陥凹型では癌巣内に潰瘍を有しないと診断される例(リンパ節転移の可能性がほとんどない例)に対して用いられます。

一方、遠隔転移がみられたり、他臓器への浸潤が強く切除不能の例に対しては化学療法が行われていますが、まだ有効性は低い状態です。

外科的切除後にも経過観察が必要となり、胃内視鏡検査による残胃癌の早期発見、腹部CT、腹部USなどによる転移・再発の早期発見、血液腫瘍マーカー(CEA,CA19-9,CA72-4)による再発の予測などを行います。

胃癌の手術後、入退院を繰り返していらっしゃったということで、かなり辛い状態にあったのではないかと思われます。そうした状態にありながら、それでもなお仕事に打ち込ませようと背中を押すということは、なかなかできないことではないか、と思われます。

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