メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の患者は、生涯に大腸(結腸直腸)癌を発症するリスクが75%高いことが新しい研究により示され、オーランドで開催された米国消化器病学会(ACG)年次集会で発表された。

メタボリックシンドロームは3〜4種類の疾患が重なったもので、いくつかの癌をはじめ特定の疾患の予後を悪化させる可能性があるとされる。しかし、大腸癌との関連についてはこれまで明らかにされておらず、今回の研究は大腸癌に着目した研究としては初めてであり、最大規模のものだという。

米サウスカロライナ医科大学(MUSC、チャールストン)のDonald Garrow博士らは、メタボリックシンドロームによって大腸癌リスクがどの程度増大するのかを知るため、米国立健康統計センター(NCHS)が毎年実施する全米規模の調査である国民健康聞き取り調査(HNIS)の2000年〜2003年のデータを調べた。

メタボリックシンドロームの既往がある患者(約1,200人)および大腸癌の既往がある患者(350人)について検討した結果、年齢、人種、性別、肥満および喫煙などの因子について調整しても、なおメタボリックシンドロームのある人は大腸癌リスクが有意に高いことが判明した。

Garrow氏は「大腸癌はスクリーニング(検診)を受けることで予防できる疾患。今回の結果により、メタボリックシンドロームの人がガイドラインに沿って検診を受けるようになることを期待する」と述べている。米テキサス大学M.D.アンダーソン癌センター(ヒューストン)のGeorge Chang博士もこれに同意しているが、「今回の研究では、メタボリックシンドロームにより大腸癌の発症が早まるのかどうかについては評価していない。このため、検診をもっと早く受けるよう推奨するまでの十分な根拠はない」と指摘している

同集会で発表された別の研究では、大腸癌の検診を推奨される65歳よりも10年早く受け始めることによって、医療コストを3分の1に抑えられると示された。米ニューヨーク州立大学のScott Tenner氏らは、ブルックリンに居住する248人(平均55歳)を対象に無料で大腸内視鏡検査を実施。その結果、患者の45%にさまざまな大きさのポリープが認められ、5人に初期の大腸癌が見つかった。このプログラムのコストは39万ドル(約4,000万円)であったが、同じ集団が65歳になるまで待ってから検診および治療を受けた場合のコストは130万ドル(約1億3,000万円)に上ると、研究グループは結論づけている。
(メタボリックシンドロームで大腸癌リスクが増大)


大腸癌とは、大腸(結腸、直腸)粘膜に発生する悪性腫瘍のことを指します。癌がどれだけ深達しているかにより、粘膜下層までの早期癌と、固有筋層より深部に達している進行癌に分けられます。大部分が腺癌ですが、まれに扁平上皮癌のこともあります。

大腸癌の中では、直腸癌が大腸癌全体の約40%と最も多く、次いでS状結腸癌に頻度が高くなっています。男性に多いといわれ、40歳以上に多く、50〜60歳台に最も高率であるとのことです。

大腸癌の発生率は、西欧食の特徴である高脂肪、高蛋白、かつ低線維成分の食物と正の相関関係にあるといわれています。大腸癌の低発生国(地域)でも、生活様式の変化(食事の西欧化)、あるいは高発生国への移住などにより短期間に大腸癌のリスクがあがるといわれています。

その理由としては、高脂肪、高蛋白(特に牛肉)はβ-glucuronidaseやazoreductaseなどの酵素活性を有する腸内細菌叢形成に関係し、その結果として、中性あるいは酸性ステロールが発癌性をもった物質に転換されると考えられています。他方、高脂肪食により胆汁酸、特に二次胆汁酸の排出が増し、それが大腸癌発生のプロモーターとして働くと考えられています。

逆に、線維成分の多い食事をする人々の間では大腸癌の発生が少ないことがよく知られています。高線維食は便通量を増し(発癌物質の希釈)、糞便の大腸内通過を速めてくれます(発癌物質との接触時間を短縮してくれる)。

こうした関係性を考えると、メタボリック・シンドロームの患者は、高脂肪、高蛋白、低線維食の生活をしているのではないか、と考えられます。その結果として、大腸癌の発生リスクが高くなってしまうのではないでしょうか。

大腸癌の症状としては、早期癌は無症状のことが多いです。早期癌に関係のある症状は、下部(直腸、S状結腸)大腸癌における血便のみです。

ただ、S状結腸癌では、直腸癌とは異なり、癌からの出血があっても通過している間に血が便に混じりこみ、見た目では出血が分かりにくいこともあります。そのため、トイレの時での見た目だけでは、血便があるかどうか判断しかねる、というところがあります(便潜血反応は陽性となり、検査では容易に分かります)。

進行癌では、大きさと存在部位によって症状が異なります。
右側結腸は、腸管腔が広く、腸内容が液状であるため、症状が発現しにくいです。大きくなって腫瘤として触れたり、原因不明の貧血(血便など出血による貧血)の検査で発見されることがあります。右側結腸癌の70〜80%は、軽度の腹痛などを生じます。

左側結腸は管腔が狭く、伸展性も悪く、なおかつ腸内容は固形化しています。そのため、腹痛を伴った通過障害が出現してきます。特に、左側結腸は癌によるイレウス(腸閉塞)がよく生じ、さらに肛門に近いため、出血もわかりやすいと考えられます。

直腸癌は肛門に近いため、さらに小さな病変でも早く症状が出現してきます。排便時の違和感、糞便の細小化(便が細くなる)、便通障害、テネスムス(腹痛があり、頻繁に便意をもよおすのに、ほとんど便が出なかったり、あってもわずかしかない場合)、出血、などがみられます。

大腸癌の治療としては、以下のようなものがあります。
大腸癌の治療方針は、術前診断で決定されます。注腸造影検査や大腸内視鏡検査にて内視鏡治療が可能であると判断した場合は、内視鏡的摘除を行い、病理組織検査にて追加治療の必要性を判断します。それ以外の場合は手術治療の適応と判断し、腹部CT、腹部超音波検査、胸部単純X線検査、腫瘍マーカーなどの測定を行い、癌の進行度を判定します。
 
直腸癌では、早期癌には内視鏡超音波検査を、進行癌には骨盤CT、骨盤MRIを追加します。術前のリンパ節転移診断の精度は高くないため、リンパ節郭清度は深達度にて決定します。

内視鏡治療は、大腸粘膜内癌(m癌)または粘膜下層に浸潤している疑いがあっても軽度であると判断した病変で、かつ2cm未満の大きさであれば、内視鏡的摘除を行います。病理組織検査にて、大腸粘膜内癌(m癌)または粘膜下層浸潤癌(sm癌)であっても浸潤距離が1mm未満であれば、そのような病変ではリンパ節転移がないことから、経過観察とします。浸潤距離が1 mm以上の場合は、リンパ節転移が約11%に認められ、リンパ節転移の可能性があります。その際、追加治療を行うかどうか判断する必要があります。

大腸癌の根治をめざす手術では、腫瘍の両側5 cm以上離して切除すれば局所侵襲を除去できます。結腸癌では腫瘍を除去し端々吻合を行います(例えば、右半結腸切除術、横行結腸切除術、左半結腸切除術など)。早期癌では腹腔鏡補助下結腸切除術も行われます。

結腸癌・Rs癌では、術前診断が粘膜下層浸潤癌(sm癌)であればD2郭清を、固有筋層浸潤大腸癌(mp癌)やStage 供Stage 靴任△譴D3郭清を行います。

直腸癌で行われる術式としては、一般的に
・Rs(岬角〜S2下縁…直腸S状部):高位前方切除
・Ra(〜腹膜反転部…上部直腸):低位前方切除
・Rb(〜恥骨直腸筋付着部上部…下部直腸):腹会陰式直腸切断術(Miles手術)
このように分類できます。

また、リンパ節転移があるステージ郡の患者さんが術後補助化学療法の対象となり、手術後に5-FU/l-LV[アイソボリン]の6ヶ月投与が標準的に行われているようです。リンパ節転移のないStageI期、Stage挟の大腸癌について術後補助化学療法の有用性は明らかではないため、基本的には術後補助化学療法は行わず、無治療で経過観察をするようです。

根治的な手術が不可能な場合(切除不能進行・再発大腸癌など)は、化学療法の適応となります。UFT+経口LV+CPT-11を中心として、FOLFOX4(5-FU+ロイコボリン+オキサリプラチン)、FOLFOX6(5FU+l-ロイコボリン+l-オキザリプラチン)、FOLFIRI(アイソボリン+5-FU+イリノテカン)、5FU+LV(PRMI、de Gramont)、UFT+経口LV、UFTの選択肢があります。

また、アバスチンという新薬(昨年4月認可)もあります。アバスチン(一般名 ベバシツマブBevacizumab)は、血管内皮細胞増殖因子 (VEGF)という蛋白質を抑制するモノクローナル抗体です。

VEGFは、血管の細胞を増殖させる働きを持っており、VEGFの分泌が起こる部位に血管が伸びたり、新しい血管が形成されます。この現象を血管新生といいます。この血管新生とがんは深く関連しています。がん細胞は通常の細胞に比べて増殖速度が速く、多くの栄養分を必要とします。そのため栄養分を吸収するために、がん細胞はVEGFを分泌して血管をがん細胞のところまで誘導します。これを阻害するのが、アバスチンです。

上記のように、高脂肪・高蛋白かつ低線維性の食事は、大腸癌のリスクを上げてしまいます。食生活を見直すことが重要であると考えられます。

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