以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

ある日、脇腹辺りに痒みを伴う小さなできものが出来た専業主婦のH・Mさん(57歳)。じきに治るだろうと思った彼女は、家にあった痒み止めの薬を塗って対処することに。

しかし、できものは1週間経っても治らないばかりか、1ヶ月後には急激に数が増えていました。夫からイボだと言われ、そう思い込んだH・Mさんは、「イボなら命に関わる病じゃない」と、しばらく様子を見ることに。しかしその後、イボは足首にも広がり、気になる異変が続いたのです。

具体的には、以下のような症状が現れていました。
1)痒みを伴うできもの
側腹部(背部〜腋窩)の辺りに、直径5mm程度の皮疹が出現しており、それができた辺りに痒みが生じておりました。
2)できものが急激に増える
上記の痒みのある皮疹が、1ヶ月の間に急激にその数が増えていました。
3)両足にイボができる
両足が痒くなったので見たところ、そこには上記の痒みのある皮疹が出現していました。

こうした症状に「普通のイボではない」と思ったH・Mさん。そこで、近医の皮膚科に受診しました。そこで「痒みのある皮疹」「急激に増加していた」といった経過を聞くと、医師は「内臓の精密検査を受けるように」と勧めました。

「皮膚科で、イボを診てもらいたかっただけなのに」と、内科での精査を勧められたことを不思議に思いましたが、H・Mさんは勧めの通り、消化器内科での検査を受けました。すると、その結果、彼女に告げられた診断名は「胃癌」でした。

胃癌は、広義では胃粘膜上皮から発生した癌腫(狭義の胃癌)と、上皮以外の組織から発生したがん(胃平滑筋肉腫・GIST・胃悪性リンパ腫など)の両方を含みますが、一般的には粘膜上皮から発生したもの(前者)を指します。

かつて、日本では男女とも胃癌が第1位でしたが、死者数は年々減少しています。2003年の日本における死者数は49,535人(男32,142人、女17,393人)で、男性では肺癌に次いで第2位、女性では大腸癌に次いで第2位となっています。

胃癌の近年増加率の低下がみられ、これは食生活の欧米化などによる環境の変化、検診などにより根治可能な胃癌が多数発見されるようになったこと、治療技術の進歩などの要因によると考えられます。ですが、日本における胃癌の死亡率は依然世界の第1位にあります。

胃癌は、自覚症状による胃癌の早期発見は難しいです。ほとんどの場合、早期癌の段階では無症状であり、癌が進行してからでないとはっきりとした自覚症状が出てこないことが多いからと言われています。そのため、放置されてしまったり、逆に内視鏡検査などで早期発見されるケースもあります。

しかし、H・Mさんの場合、明確なサインが出ており、それは「イボ」でした。こうした内臓悪性腫瘍に伴う皮膚病変は多彩であり、デルマドロームと表現されます。他にもシミや発疹、足の裏のカサ付きなど、内臓の疾患によって起こる皮膚の異常は多種多様となっています。

皮膚そう痒症や慢性痒疹は、肝障害や腎障害、糖尿病とともに、悪性腫瘍にこれら疾患が合併することが知られています。痒みが激烈であることが、悪性腫瘍の合併を示唆する目安になるとの意見もあります。

ほかにも、以下のようなものがあります。
胃癌でほかに有名なものとして、黒色表皮腫とよばれるものがあります。これは、悪性型、良性型(先天異常、内分泌異常を合併)、仮性型(肥満に伴う)の3種がありますが、内臓悪性腫瘍を合併するのは悪性型です。

腋窩、項部、外陰部、口唇、舌、臍部、肘窩、膝窩、乳暈に好発し、ザラザラとした黒色調の局面を作ります。悪性腫瘍の種類としては、胃癌の頻度が圧倒的に高く、また高率に合併するため、デルマドロームとしての臨床的価値が非常に高いといわれています。

H・Mさんの場合も、こうしたデルマドロームにより、胃癌を発見することが出来ました。幸い転移する前だったため、胃の切除手術によって、何とか一命を取り留めることができました。

胃癌の治療方針は、「胃癌治療ガイドライン」などにより、腫瘍の大きさ・部位・拡がり、病期、全身状態、あるいは患者の希望など様々な要素を勘案し決定されます。

深達度がM(粘膜内)で、N0(リンパ節転移なし)、分化型、2cm以下、潰瘍形成なしであれば、内視鏡的粘膜切除術を行います。StageIIもしくはIIIAなら、2群リンパ節郭清を伴う胃切除術(これが標準的な手術法であり、定型手術と呼ばれます)を行います。StageIV(遠隔転移を伴う)なら、姑息的手術を行ったり、化学療法などを行います。

胃の切除は、部位によって胃全摘術、幽門側胃切除術(十二指腸側2/3程度の胃切除)、噴門側胃切除術(食道側1/2程度の胃切除)などに分けられます。縮小手術では、胃の2/3未満の切除で、大網温存、幽門保存胃切除、迷走神経温存術などが行われることもあります。胃の2/3以上の切除とD2リンパ節郭清が行われるものを定型手術といいます。また、定型手術に他臓器合併切除が行われるものを拡大手術(胃の周辺臓器に直接浸潤する例や高度のリンパ節転移を認める例が適応)といいます。

このように、「痒みのある皮疹」「急激にその数が増え始めた」といった特徴がみられたら、皮膚科などを受診されることが望まれます。

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