以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

東京下町で夫と二人、定食屋を営むT・Mさん(50)は、ある日、手の指の関節と爪周りに赤みが広がっていることに気付きました。その症状を手荒れだと思った彼女は、「これは職業病のようなもの」と思い、ハンドクリームを塗って対処することに。

しかし、1週間経っても手荒れは一向に良くならず、その1ヶ月後にはなぜか身体に力が入らず階段を上るのが辛くなってきました。年のせいで疲れが足腰にきたと思っていたT・Mさんですが、その後も手の赤みは増すばかりか、顔にも同じ症状が出るなど更なる異変が続きました。

具体的には、以下のような症状が現れていました。
1)手の赤み
あかぎれのような症状でしたが、その赤みのある部分の特徴として、関節の部分が特に赤くなっているような状態でした。
2)1週間たっても手の赤みがなかなか治らない
上記のような症状が現れており、T・Mさんは手荒れだと思ってハンドクリームを塗っておりました。ですが、その症状はなかなか良くならず、1週間が経過しました。
3)身体に力が入りにくい
手の赤みが現れてからしばらく経って、今度は体の力が入りにくく、とくに階段を上りにくくなるといった症状が現れてきました。
4)手の赤みが増す
こうした症状が現れてきたにもかかわらず、T・Mさんは「年のせい」と考えて、病院に行かず放置していました。すると、その手の赤みは次第に増していきました。
5)上まぶたと小鼻の周りが赤い
朝起きたところ、彼女の顔をみて旦那さんは驚きました。自分も鏡で見ると、まるでアイシャドーを塗ったように上瞼が赤紫色になっていました。

こうした症状が現れてきたため、彼女はようやく病院に行こうと思いました。近医の皮膚科に受診したところ、経過や皮疹により、医師は彼女に精密検査を勧めました。「単に皮膚の症状が現れたために、皮膚科を受診しただけなのに…」そう思った彼女でしたが、医師の勧めもあり、精密検査を受けることになりました。その結果、彼女に告げられた病名は「乳癌」でした。

手荒れに似た「皮膚の赤み」や「筋力の低下」「瞼の異常」は、実は皮膚筋炎による症状でした。皮膚筋炎は膠原病の1つで、皮膚・筋肉に慢性の炎症性病変を来す疾患です。

皮膚筋炎は、40〜50歳代に好発し女性に多いですが、7〜10歳の小児にもみられます。皮膚症状としては、両側上眼瞼の紫紅色浮腫性腫脹(ヘリオトロープ)、顔面・上胸部・背部・上腕伸側の紅斑、肘・膝の角化性紅斑などがあり、これらは診断価値があります。指関節背面の暗紅色角化性紅斑(Gottron徴候)、多形皮膚萎縮(ポイキロデルマ:網細血管拡張、色素沈着、色素脱失、皮膚萎縮が混在している病変)も重要です。

ほかにも、筋症状が出現し、四肢の近位筋に筋脱力・圧痛・自発痛がみられ、高度のときはベッド上の起座さえも困難となり、嚥下困難、呼吸困難に至ることもあります。こうした筋力低下が起こりえるため、上記のように階段を上ることが難しいといった症状が現れることがあります。

成人例では内臓悪性腫瘍の合併が30〜40%と高く、内臓悪性腫瘍は特定臓器に多い傾向がないため、全身の検索を行います。悪性腫瘍の種類としては、胃癌、乳癌、肺癌、大腸癌が日本では多いようです(皮疹の形態と悪性腫瘍の合併との関係は判然としない)。

治療としては、以下のようなものがあります。
皮膚筋炎の重症では、1日プレドニン90〜60mg、中等症60〜45mg、軽症30mgより開始し、皮膚・筋肉症状やCPKなどの検査所見を参考に漸減していきます(CPKが改善・増悪のよい目安となる)。難治例には免疫抑制剤を併用することになります。

重要なこととしては、やはり内臓悪性腫瘍の検索で、悪性腫瘍合併例はステロイドの反応が悪いといった特徴があります(経過中皮膚病変が再燃したら、悪性腫瘍の再発を疑います)。悪性腫瘍が筋炎を難治性にしていることもあり、発見されれば悪性腫瘍の治療を優先して行います。

乳癌治療はやはり手術が基本で、病期靴泙任量9割は手術療法の適応となります。胸筋温存乳房切除術(非定型的乳房切除術および、乳房温存手術が主流となり、乳房温存手術が半数以上に行われています。

乳房温存手術は、超音波検査やマンモグラフィー、CTやMRIで広範囲な乳管内進展巣のない腫瘍径3cm以下の腫瘍に対し、マージンを十分とった乳腺部分切除と腋窩リンパ節郭清を行った後、残存乳房に対する放射線治療(通常50グレイ)を付加することが原則となっています。さらに、センチネルリンパ節生検を行い、転移の有無を病理組織学的に検索し郭清を省略することも行われています。

進行乳癌では、根治が期待できる全身状態の良いものに対しては術後治療に準じた根治的治療を行います。乳癌の組織学的悪性度(HER2/neu 遺伝子)、ホルモン感受性を調べたうえで、抗癌剤や内分泌療法剤、抗体[トラスツズマブ(ハーセプチン)]を使った乳癌標的療法などを組み合わせて治療します。

さらに、最近では「ラジオ波熱凝固療法」といった治療法も行われています。「ラジオ波熱凝固療法」の原理としては、直接数mmの針を腫瘍に直接刺して、AMラジオと同じ波帯の電波(460-480 KHz)を照射し、60-70度の熱を加えて、癌細胞を焼く(正確には100度前後の熱で凝固させる)というもの。原理的には電気メスと同じです。周囲への浸潤を含めて、腫瘍径が2cm以下でリンパ節転移がみられない方が適応となります。

T・Mさんの場合も、皮膚筋炎がきっかけとなって早期の乳癌を発見。乳房を温存したまま、無事に癌を取り除くことに成功しました。皮膚筋炎の赤みは、両手両足の指の関節や爪の周囲、肘、膝、顔などに出ます。左右対称、また同時に何ヶ所も発生するのが特徴的です。こうした症状が出現した場合、皮膚科を受診されることが望まれます。

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