先日、長年放置していた虫歯の治療費が何十万円もかかった! と友人が嘆いていた。確かに歯科治療はお金がかかるイメージがあるけど、個人的には歯科医院でさほど高額な支払いをした覚えはないような。友人いわく「前歯は自費だから高かった」とのことだが、保険が効く、効かないの基準って? 歯科情報サイト『歯チャンネル88』を運営する歯科医師の田尾耕太郎先生に聞いてみた。

「まず保険診療のメリットは、どこの歯科医院でも同一料金で、一定品質の治療が受けられること。よく“前歯には保険が効かない”という誤解がありますが、虫歯などの一般的な歯科治療なら、どの歯でも保険でカバーできます。ただし、使用できる材料(詰め物や被せ物の素材)や治療技術があらかじめ決まっており、あまり高品質なモノは使えないという制限があるんです」

つまり、保険を使うと必要最低限のメニューしか選べないというわけか。

「一方、自費診療では最新の材料や治療技術を制限なしで駆使できます。例えば、見た目にも自然で変色しないセラミック製の被せ物を作ったり、抜けた歯の代わりにインプラントを入れるといった高度な技術は、自費診療でしか受けられません。ただし費用は医院によってまちまちで、保険診療の10倍以上になることも珍しくありません」

高っ! そこまで差がある理由とは?

「材料費などもありますが、最大のポイントは治療にかける時間の違いです。そもそも日本の保険診療は、欧米の歯科の水準に比べて5分の1〜10分の1という激安料金。医院が保険診療で利益を出すためには、一人あたりの診療時間をかなり制限してでも、多くの患者を診察する必要があります。対して自費診療は、患者から直接十分な費用を頂くことで、じっくり手間と時間をかけた精密な治療ができる。その結果、仕上がりも高品質になる可能性が高いんです」

どうせなら丁寧な治療を受けたいけど…費用で泣きを見たくなければ、日頃から予防を心がけるしかないか。
(歯科治療「保険」と「自費」のメリット&デメリットとは?)


保険診療とは、報酬を医療保険に請求する診療行為を指します。知事の指定を受けた保険医療機関において登録された保険医が治療することが条件とされ、診療方針や使用できる医薬品は療養担当規則や薬価基準による規制を受けます。

療養担当規則とは、正式名称を「保険医療機関および保険医療養担当規則」といい、適正な社会保険診療を担保するため、保険医療機関および保険医が従うべき責務を定めた厚生労働省令を指します。保険医については、特殊な投薬・療法の禁止などを定めており、ある一定の枠内での診療をするようにしているわけです。

薬価とは、医薬品の公定価格を指します。医療保険に請求できる医薬品の品目・価格は、厚生労働大臣の告示(薬価基準)により定められ、その価格は卸業者や医療機関に行われる薬価調査により、加重平均値に一定価格幅を上乗せして決められます。

保険診療においては、診療報酬の額は診療報酬点数表によって個々の診療行為ごとに決められます。診療報酬点数表は2年に一度改訂され、中央社会保険医療協議会(中医協)における保険者、診療側そして公益代表らによる答申をもとに厚生労働大臣が告示します。

こうした診療行為における決定がある以上、それに則って医療が行われる必要があります。つまり、画一化されているがゆえに低価格、一定の効果があると考えられる医療を受けられる、と考えられます。そのため、上記のようにプラスアルファのある治療を求めている場合、以下のような自由診療で受ける必要があるわけです。
自由診療においては診療報酬の額と支払方法は、医療機関と患者さんとの契約により任意に決めることができます。そのため、「審美性」のための治療といった、保険診療では認められない診療をある程度受けられるというメリットがあります。ところが、保険がきかないため、受診者の負担が大きくなるデメリットがあります。

また、「自由に価格を決定できる」といった点で問題が起こっていることもあります。美容外科手術にて「安いコースだと、見た目が悪い」などと言われて、無理矢理に高額請求され、消費生活センターなどに苦情が寄せられているといったケースもあります。

さらに、保険診療に保険外診療(自由診療)を併用することは混合診療といいます。日本では保険診療において保険外診療(自由診療)を併用することは原則として、禁止されていますが、実は禁止する明文化された規定は存在しません。

自由診療で行われる、未承認薬や先端医療を公的医療保険の適用対象と認めない理由については、「有効性、安全性で新薬承認をする。薬害が起きてはいけない」とのことで、こうしたものと保険診療を組み合わせる混合診療は、認めない方針とされています。

たしかに、こうしたものに対しても保険適応を認めてしまった場合、非常に財政を逼迫してしまったり、危険性を伴った治療などを試す人が多く出てしまうことが考えられます。しかしながら、その一方で未承認薬や先端医療を受けたい患者や経済界からは混合診療の解禁を求める声が上がっていることも確かです。

また、「消費者」として医療を受ける側としては、自由診療における価格にもしっかりと説明を受け、それに同意した上で医療サービスを受けるといった姿勢が必要なようです。

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