心臓手術のため、フジテレビ系「とくダネ!」出演を休んでいた芸能リポーターの前田忠明さん(67)が3日、同番組に約1か月ぶりに復帰した。

司会の小倉智昭キャスター(61)から「大変な手術だったんでしょう」と振られると、「7時間くらいかかりました。予定通り3週間入院して、約2週間リハビリをしました。またジジイが仕事に戻って参りました」とおどけながら報告。ややほっそりした表情で、体重が約2・5キロ減ったことも明かした。

前田さんは9月25日の放送で「大動脈りゅうがちょっと膨らんできまして、それを切除する手術をするんです。人工血管に替えるのと同時に、心臓の中の血管が詰まりやすいということでバイパスを作る手術をします。3週間くらいお休みします」と話していた。
(芸能リポーターの前田忠明さん、1か月ぶりに復帰)


大動脈瘤とは、何らかの原因により大動脈壁が脆弱化し、限局的に動脈内腔が拡張した状態を指します。大動脈瘤は「正常動脈径より50%以上の拡大、あるいは動脈が局所的に3.0cm以上拡大した状態」と定義されます。

大動脈瘤の部位により、上行大動脈瘤、弓部・胸部下行大動脈瘤、腎上部腹部大動脈瘤、腎動脈分岐部以下の腹部大動脈瘤(腎下部腹部大動脈瘤)、胸腹部大動脈瘤に分類されます。

部位別では腎動脈分岐部以下の腹部大動脈瘤(腎下部腹部大動脈瘤)が約60%と最も多く、次いで上行大動脈瘤16%、弓部下行大動脈瘤7%、腎上部腹部大動脈瘤5%、胸腹部大動脈瘤2%の順となっています。

動脈瘤壁の構造により
・真性動脈瘤:動脈瘤壁が内膜、外膜、残存中膜など動脈壁の構造を有するもの
・仮性動脈瘤:動脈瘤壁が固有の壁構造を欠き,新たに形成された結合組織または動脈壁の外膜のみを有するもの
・解離性大動脈瘤:中膜内に血液が流入し、大動脈壁が内層と外層に剥離された状態
に分類されます。

原因として、最も多いのは動脈硬化性によるものです。これは、粥腫の形成・崩壊、潰瘍形成、出血の繰り返しから中膜弾性線維の破壊をきたして、壁厚像を脆弱化させる過程が推定されています。

前田さんのように、動脈硬化による影響もあり、冠動脈疾患の合併は50%前後とされています。そのため、狭心症、心電図変化の症例には心筋シンチグラフィー、冠動脈造影検査を行う必要があります。

このほかに、遺伝的素因により中膜弾性線維の破壊が起こりやすいもの(Marfan症候群で起こる嚢胞性中膜壊死)、炎症による中膜弾性線維断裂や平滑筋の破壊が起こるもの(Behcet病、大動脈炎症候群、梅毒など)、あるいは外傷性のものが挙げられます。

リスクファクターとしては、喫煙、高血圧、冠動脈疾患、あるいは末梢動脈疾患を有する50歳以上の症例、腹部大動脈瘤の家族歴を有する症例、他の部位の動脈瘤(腸骨、膝窩動脈瘤など)の症例には、本症のスクリーニング検査を行います。

症状としては、発生する部位によっても異なります。胸部大動脈瘤の場合、左反回神経麻痺による嗄声、気管・気管支や横隔膜神経の刺激による咳漱、交感神経圧迫によるHorner症候群、食道圧迫による嚥下困難、上大静脈圧迫による頸部静脈の腫脹などが挙げられます。これらは、破裂の危険が大きい症状です。また、動脈瘤による胸骨・椎骨の圧迫による前胸部痛、または背痛が起こることもあります。

腹部大動脈瘤の場合は、後腹膜腔に位置するために周囲組織への影響は少なく、無症状で経過することも多いです(腹部の拍動性腫瘤を自覚するのみのことが多い)。したがって、腹痛や腰痛の出現は破裂が近いことを示すサインであるということを認識する必要があります。

切迫破裂例、あるいは炎症性動脈瘤例では腹痛、腰痛を自覚します。破裂例ではショック、腰痛、拍動性腫瘤の3徴候を呈します。

治療としては、以下のようなものがあります。
血圧を十分にコントロールしながら注意深く大動脈瘤の大きさを監視し、ある一定以上の大きさになったら手術を選択するのが基本となります(ただ、疼痛、周囲臓器の圧迫症状を呈する症例は破裂の危険性が高いことから適応となります)。

できれば130/80mmHg未満にコントロールし、腎機能低下があればラシックス10〜20mgを追加します。瘤径の小さな症例、高齢あるいは重篤な合併症のため手術適応外の症例には動脈瘤の拡大進展を遅延させる目的で降圧薬による内科的治療を行うこともあります。

降圧薬としては、長時間作用型Ca拮抗薬(CCB)とアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、またはアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)の併用療法にβ遮断薬の追加が望ましいとされています。

腹部大動脈瘤、特に最も頻度の多い腎下部の場合、手術成績はきわめて良好であるため、一般に最大径が5 cmを超えたら破裂のリスクが高くなると考えられるので、手術適応となります。

胸部大動脈瘤の場合には一般に6 cmが1つの目安となっていますが、径が小さい場合でも、拡大傾向のあるもの、嚢状、非特異的疼痛があるもの、Marfan症候群、炎症性ではそれ以下でも破裂する可能性が高いことから注意が必要となります。

疼痛、動脈瘤の大きさ、拡大速度、喫煙、慢性肺疾患は動脈瘤破裂の危険性が高く、一方、高齢、全身状態、大動脈置換の部位・範囲、心、肺、腎不全の合併は手術成績に影響を及ぼす因子です。

基本的な手術手技は動脈瘤切除、人工血管置換術です。限局性の上行大動脈瘤の場合には完全体外循環下に人工血管置換となりますが、弓部を含む大動脈瘤の場合には脳保護のための選択的脳灌流法、超低体温下循環停止を用いた完全(または準完全)弓部大動脈人工血管置換という侵襲の大きな手術となります。

現在では、腹部大動脈瘤などに対する治療として、「ステントグラフト手術」が行われることもあります。この方法は、ステントグラフトと呼ばれる人工血管を、腹部を切開せずに体内に入れる血管内手術です。そのため、局所麻酔下で手術を行うことができ、なおかつ低侵襲で行うことが出来る(血管を露出するための傷だけで行える)という利点があります。

利点としては、手術のほとんどは局所麻酔か硬膜外麻酔で行えるため、侵襲が小さいので術後3日以内に大半の患者が退院できます。ただ、欠点としては2次的処置の必要性が外科手術より高かったり、高い技術(一度ステントを広げると、再処置が難しいなど)を要する点が挙げられます。また、現在は保険適応は開腹手術のしづらいハイリスク症例(高齢、心肺合併症、開腹手術の既往、肥満など)に限られています。

腹部大動脈手術、冠動脈バイパス手術を終え、無事復帰なさったようです。「拍動するお腹のしこり」などがあったら、お気を付け下さい。

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