心臓の筋肉が次第に衰える原因不明の難病「拡張型心筋症」と診断された東京都世田谷区の佐野めいさん(16)日本工業大学駒場高校1年の両親と知人らでつくる「救う会」が7日、東京都庁で記者会見を開き、米国での心臓移植手術費に充てるための募金を呼びかけた。目標額は1億9750万円。

佐野さんは10歳の時に突然発症。今年6月に症状が悪化し、8月には左右2個の補助人工心臓を装着した。東京大学医学部付属病院でリハビリを続けているが、体重は約30キロにまで落ち込み、余命は数カ月といわれている。

幸運にも米コロンビア大病院から移植手術の内諾を受けられたことから、両親の知人らが募金活動を開始。父親の会社員、佐野一也さん(47)は「みなさんの善意にすがるしかない。命をつないでほしい」と涙ながらに訴えた。
(難病の女子高生救え 心臓移植手術費の募金呼びかけ)


拡張型心筋症とは、左室あるいは両心室の拡張と収縮不全を呈する心筋疾患です。心室、特に左心室のポンプ機能障害(血液を上手く全身へ送り出せない)があるため、臨床的には心不全が問題となります。また、不整脈、血栓塞栓症や突然死がしばしば発生します。

拡張型心筋症は、人口10万人に対して3〜8人であり、女性より男性のほうが多いという特徴があります。一部の肥大型心筋症(HCM)がサルコメア病であることが判明したり、拡張型心筋症(DCM)の一部にウイルス感染が証明されるなど、その病因は解明されつつあります。

自覚症状として/管堊款評、不整脈症状、塞栓症状に分けられます。心不全が起こるため、拡張型心筋症の患者さんでは労作時呼吸困難、起坐呼吸(横になると息苦しくなる)、動悸、易疲労感などを自覚することになります。右心不全による症状が起こると、頸静脈怒張(半座位にて観察され、胸骨柄からの高さを測定)、肝腫大、腹水、下腿浮腫などがみられます。

脈拍は、心不全が高度な症例では血圧は低く、脈圧は小であるため微弱であり、頻脈傾向を示します。末期心不全では交互脈(大きな脈と小さな脈が交互に出現し、脈拍そのものは整)がみられます。重症例でも意外に運動耐容能が良好で、自覚症状の乏しい例もあり、むしろこのような例で急死の危険性が高いといわれています。

また、左心室内血流うっ滞のため左室内血栓が形成されやすく、さらには心房細動の合併も多いため、血栓・塞栓症状も稀ではありません。

他覚症状としては、頻脈、浮腫、肝腫大などがみられることもあります。心臓の聴診では、群察↓顕擦よく聴かれるほか、心拡大による僧帽弁逆流の雑音も多く聴かれることになります。不整脈で重要なものには、脈が一分間に200回以上になる心室頻拍があり急死の原因になります。逆に、脈が遅くなる房室ブロックがみられることもあります。

検査としては、脈拍は小さく速く(房室ブロックのない場合)、心不全が高度な症例では血圧は低くなります。心電図ではST-T異常を認め、心室性期外収縮が頻発します。

聴診上では、I音はしばしば減弱、肺高血圧を伴えばII音肺動脈成分の亢進がみられます。心不全があれば心尖部III音はほとんど必発であり、IV音も認められます。

うっ血性心不全徴候のある例では弁輪拡大、心室拡大から派生する僧帽弁または三尖弁閉鎖不全による全収縮期雑音を聴取しますが、このような機能性房室弁閉鎖不全雑音の多くは、症状寛解とともに減弱あるいは消失します。

胸部X線で心拡大(多くの例で心陰影拡大がみられます。左室拡大によるものが多いですが、右室、左房、右房も拡大)と肺うっ血(上肺野血流量増大、間質浮腫、肺胞浮腫など肺うっ血所見や胸膜液貯留がみられます)などがみられます。

心臓エコー検査では、左室の拡大と壁運動の低下が認められます。しばしば僧帽弁ないし三尖弁の逆流もみられます。左室あるいは右室径の拡大、左室収縮能の低下、弁逆流の評価、三尖弁閉鎖不全が存在する場合は右室収縮期圧の推定が可能となります。ほかにも心筋シンチグラム、心臓カテーテル検査などが行われます。

心臓カテーテル検査で、心血行動態検査、心血管造影で低心拍出量、心室内腔の拡大、駆出率低下を証明し、冠動脈造影により冠動脈病変の除外を行います。心筋生検では心筋細胞の肥大、変性、間質線維化など非特異的変化が認められます(ただ、心筋細胞錯綜配列も存在することがあり、生検心筋で得られる小さい標本では肥大型心筋症にみられる錯綜配列との鑑別は必ずしも容易ではありません)。

こうした検査により、特定心筋症との鑑別が必要となります。特に、重症左室機能不全を伴う虚血性心疾患との鑑別が重要です。重症3枝病変を有する冠動脈疾患で、虚血が広範かつ徐々に起こった場合、胸部痛、胸部圧迫感などの症状はほとんど欠如し、うっ血性心不全を主徴とする心拡張をきたします。左室壁運動の低下は両者ともびまん性であり、鑑別には冠動脈造影が必須となります(非観血的な核医学的手法も両者の鑑別に役立つ)。

治療としては、以下のようなものがあります。
拡張型心筋症の自覚症状と予後を規定する因子は心不全と不整脈であり、その治療も心不全と不整脈に対するものが中心となります。

薬物療法としては、症状がなくても、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)またはアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の投与、およびβ遮断薬(初期に心不全増悪例があり、注意)の投与を考慮します。浮腫などの症状があれば、利尿薬を投与することもあります。

不整脈治療としては、心房細動、心室性不整脈などの合併例で主だった治療が必要になります。ただし、a群に分類される抗不整脈薬は心不全の予後を悪化させることがあるので、注意が必要となります。前者ではジゴキシン(ジギタリス類は心拍数を低下させ強心作用を有するため、心房粗動や心房細動を合併し早い心室応答を示す収縮不全の患者に用いる)やワーファリン、後者ではメキシチール(a群に分類される抗不整脈薬である塩酸メキシレチン)やアンカロン使用を考えます。

心室頻拍に対しては、植込み型除細動器の有効性が認められています。ペースメーカは徐脈性不整脈に有効であるとともに、不整脈がなくとも左室右室同期不全のある症例では、両室ペーシングの導入が心不全の改善に有用とされています。

こうした治療に反応せず、重症となったケースでは、外科的治療が行われます。拡大した心臓の一部を切除して心室を縮小させることにより、心機能を改善させる左室部分切除術といった方法もありますが、今のところ明らかに有効な治療法は心臓移植しかありません。

適応条件としては、β遮断薬およびACE阻害薬を含む従来の治療法ではNYHA慧戮覆い鍬古戮ら改善しない心不全や、現在の治療で無効な致死的重症不整脈、長期間または繰り返し入院治療を必要とする心不全、などがあります。

小児の拡張型心筋症は、予後の予測が難しいとされています。原因にもよりますが、乳幼児や小児期ではかなり初期の段階で心機能がかなりおかされていても、正常な心機能に回復する症例もあります。心臓移植のような治療に踏み切るまでには、その他の治療を試してからの最終判断を必要とします。

残された時間が短いとのことですが、心移植という大きな障壁を、ぜひとも乗り越えていただきたいと思われます。

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