読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
とくに難聴の自覚はなくとも、聴力は加齢とともに徐々に悪化を示します。その悪化の程度は50〜55歳までは軽度ですが、55歳頃から著しくなり、それからの悪化は比較的急速となります。
原因としては、内耳有毛細胞の加齢による変性・減少による閾値上昇、周波数分析能の低下とともに、脳幹・大脳の退行変性による音声解析能力や音声解読能力の低下も混在しているとされます。加齢による機能の低下は聴覚系のすべての部位に起こり得ますが、あらわれる難聴の型は一般に両側性の感音難聴の形をとります。
一般に難聴の型は両側性の感音難聴で、純音オージオグラムは高音漸傾型を示すことが多く、ほぼ左右対称です。補充現象(音の強さの変化に伴う音の大きさの変化が、正常耳の場合に比べて異常に大きいという現象)は陽性または陰性で、語音明瞭度は劣化します。
治療としては、以下のようなものがあります。
現在までの薬物療法としては、内耳機能改善を目的にビタミン剤(メチコバール)、循環改善薬(カルナクリン、カリクレイン、ナイクリンなど)、代謝賦活薬(ATPなど)、ステロイド薬鼓室内投与、局所麻酔薬(リドカイン静脈注射:1 mg/kg)投与などが行われています。
薬物治療以外では、耳鳴に対して順応を起こさせることによりその苦痛度を軽減させるTRT(tinnitus retraining therapy)や雑音聴取後に耳鳴が抑制されることを利用したマスカー療法、レーザー光を外耳道から鼓膜に照射する低出力レーザー療法などがあります。
耳鳴から生じている症状の軽減としては、不安、うつ状態に対して、抗不安薬(セルシン、メイラックスなど)、抗うつ薬(パキシル、ドクマチールなど)を併用します。
根本的な治療は難しいため、対処療法により症状を改善させることが重要であると考えられます。耳鼻咽喉科の医師と相談の上、治療を選択されてはいかがでしょうか。
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最近、右耳が重苦しい感じがして耳鳴りがします。耳鼻科に行くと「老人性難聴」と診断されました。有効な薬もないとのことですが、どうしたらよいでしょうか。(91歳男性)この相談に対して、東京医科歯科大病院耳鼻咽喉科の有泉陽介先生は、以下のようにお答えになっています。
耳鳴りは「周りに何も音がないのに音が聞こえる」という現象です。多くの原因は聞こえの神経の障害です。この神経に障害が生じると難聴、耳鳴り、めまいなどが起きます。老人性難聴(老年性難聴)とは、加齢が原因となって生ずる難聴です。老化によるものなので明らかな外因はなく、徐々に進行していきます。50歳くらいから始まるとされますが、発症年齢・程度には個人差も大きいです。
突発性難聴など急に発症した病気の一部は、薬物治療などで聴力が回復し、それに伴い、耳鳴りが消えることもあります。しかし、加齢に伴い徐々に神経が変化して起き、慢性化する老人性難聴は、元に戻すことはできませんので、これに伴う耳鳴りも消えることはありません。
慢性的な耳鳴りは、気にすればするほど、ストレスを感じ、苦痛が強まる傾向があります。ご質問者の場合は、老人性難聴による耳鳴りのようですので、あまり耳鳴りのことを考えないようにするのが大切だと思います。実際、それで気にならなくなる方も少なくありません。
とくに難聴の自覚はなくとも、聴力は加齢とともに徐々に悪化を示します。その悪化の程度は50〜55歳までは軽度ですが、55歳頃から著しくなり、それからの悪化は比較的急速となります。
原因としては、内耳有毛細胞の加齢による変性・減少による閾値上昇、周波数分析能の低下とともに、脳幹・大脳の退行変性による音声解析能力や音声解読能力の低下も混在しているとされます。加齢による機能の低下は聴覚系のすべての部位に起こり得ますが、あらわれる難聴の型は一般に両側性の感音難聴の形をとります。
一般に難聴の型は両側性の感音難聴で、純音オージオグラムは高音漸傾型を示すことが多く、ほぼ左右対称です。補充現象(音の強さの変化に伴う音の大きさの変化が、正常耳の場合に比べて異常に大きいという現象)は陽性または陰性で、語音明瞭度は劣化します。
治療としては、以下のようなものがあります。
現在の医学では慢性的な耳鳴りを消す方法はありませんが、耳鳴りによるストレスを和らげる方法はいくつかあります。耳鳴の病態・発生機序は、必ずしも明確ではなく、また心因的要素の強いことも否めないことなどから、いまだに基本的な治療法として確立されたものはありません。
精神安定剤などの薬物療法は昔からよく行われていますが、最近では、耳鳴りに慣れることを目的としたTRTという治療法の有効性が報告されています。
TRTは、耳鳴りが紛れるような雑音を繰り返し聞くことで、徐々に耳鳴りから意識をそらしていく訓練法です。
ストレスがひどくない場合や、難聴が高度な場合は効果が出にくい方法です。かかりつけ医に相談されることをお勧めいたします。
現在までの薬物療法としては、内耳機能改善を目的にビタミン剤(メチコバール)、循環改善薬(カルナクリン、カリクレイン、ナイクリンなど)、代謝賦活薬(ATPなど)、ステロイド薬鼓室内投与、局所麻酔薬(リドカイン静脈注射:1 mg/kg)投与などが行われています。
薬物治療以外では、耳鳴に対して順応を起こさせることによりその苦痛度を軽減させるTRT(tinnitus retraining therapy)や雑音聴取後に耳鳴が抑制されることを利用したマスカー療法、レーザー光を外耳道から鼓膜に照射する低出力レーザー療法などがあります。
耳鳴から生じている症状の軽減としては、不安、うつ状態に対して、抗不安薬(セルシン、メイラックスなど)、抗うつ薬(パキシル、ドクマチールなど)を併用します。
根本的な治療は難しいため、対処療法により症状を改善させることが重要であると考えられます。耳鼻咽喉科の医師と相談の上、治療を選択されてはいかがでしょうか。
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