以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

ホームページの企画・デザインの会社に勤めるS・Rさん(42)。手がけたホームページの人気が出るのが何より楽しみで、「結婚よりも仕事」と、この10年がんばってきましたが、ある日、手足が冷えてジンジンするようになります。その後、肩こりがひどくなり、目の奥が痛み、さらに離れたものが少しぼやけて見えるようになります。

コンタクトレンズが合わなくなったせいだと思った彼女は、度数を上げたレンズをインターネットで購入。新しいコンタクトをつけると視界は見違えるようにくっきりしたものの、その日の午後、突然ひどい頭痛に襲われます。具体的には、以下のような症状が現れてきました。
1)冷え
手足が冷え、そしてジンジンとわずかに痺れるような感覚がありました。
2)肩こり
以前から肩こりはありましたが、明らかに強くなっているように感じました。
3)目の奥の痛み
仕事中、目の奥が痛むようになりました。さらに遠くの物が少しボヤけてみえるようになったため、彼女は「近視が進んだせいで見えづらくなった」と考えました。
4)頭痛
仕事中に締めつけられるような頭痛がひどくなり、業務を続けることが困難になりました。
5)吐き気
頭痛に加え、さらには吐き気まで伴うようになり、彼女は洗面所に駆け込んでしまいました。
このような症状がみられ、S・Rさんは仕事を休みがちになってしまいました。その結果、部下に仕事をとられてしまい、さらには退社勧告まで上司に出されてしまいました。

退職後、彼女はとある新聞記事を見つけます。そこには、「自己判断でコンタクトレンズの度数を変更して、その結果、吐き気や頭痛といった症状に悩まされている」という自分と同様な状況にある人のことが紹介されていました。

そこで、彼女はその記事で紹介されていた病院に受診しにいきました。そこで彼女が告げられた疾患名は「自律神経失調症」でした。

自律神経失調症とは、原因不明の全身倦怠感、頭重、動悸などさまざまな身体的自律神経性愁訴をもちますが、愁訴に見合う器質的変化はなく、自律神経系の機能失調に基づく病像のことを指します。

そもそも「自律神経」とは、内臓の平滑筋,心筋および腺を支配し,生体にとって最も基本的な機能である自律機能を協調的に調節し、生体の恒常性の維持に重要な役割を果たしている神経系を指します。意識的・随意的な制御を受けておらず、自律神経系の求心路は内臓求心性線維からなり、遠心路は交感神経系と副交感神経系からなります。

簡単に言ってしまえば、「自律神経」とは自分の意志とは無関係に循環、呼吸、消化などの生命活動を調整する神経です。交感神経と副交感神経の2つで成り立っており、このバランスが崩れると、身体に様々な症状が現れます。こうした異常を、自律神経失調症と考えられています。

自律神経の障害による症候は多彩であり、瞳孔異常、起立性低血圧、徐脈または頻脈、便秘・下痢、発汗障害、排尿・排便障害、性機能障害などがあります。

彼女の場合、「冷え」「肩こり」「頭痛」「吐き気」などの症状が現れており、自律神経のバランスが崩れたことで起きていたと考えられます。彼女の場合、こうした自律神経失調症の原因は以下のようなものであると考えられます。
S・Rさんの自律神経失調症が起こった原因は、長年に渡って自分の勝手な判断でコンタクトレンズの度数を上げていたことです。そもそも、目のピントを合わせるには、自律神経が大きく関わっています。

私たちの目は毛様体筋という筋肉が収縮することで、水晶体の厚さを変えてピントを合わせます。例えば、遠くを見るときは、筋肉の力を抜いて水晶体を薄くし、近くのものを見るときは、筋肉を収縮させ、水晶体を分厚くしてピントを調整します。この動きのコントロールをしているのが、自律神経です。

しかし、近視の人は、水晶体が分厚くなってしまっているため、遠くのものを見たとき、ピントが合いません。そこで、コンタクトレンズや眼鏡を使うと、目に入る光の幅が広がり、ピントが合うのです。ところが、度数を間違って上げてしまうと、眼に入る光が、より一層広がるため、遠くを見ても近くを見ても、毛様体筋を常に収縮させなければならず、大きな負担がかかってしまいます。

このように度数の強すぎるレンズで、長年パソコン作業を続けた彼女は毛様体筋の疲労から、自律神経の異常を引き起こしてしまいました。これはコンタクトだけに限ったことではありません。強すぎる度数の眼鏡でも、同じリスクを伴います。これを防ぐには自分の「適正度数」を知ることです。適正度数とは、コンタクトやメガネをした時に遠くを見ても、近くを見ても眼の筋肉が疲れない度数です。自分勝手に判断せず、専門医の検査を受け、適正なレンズを処方してもらうことが重要となります。

ちなみに、いわゆる「眼精疲労」とは持続的に眼を使ったときに健常者では疲れない程度でも疲れて眼の重圧感、頭重感、視力低下、時には複視などを訴え、はなはだしいときには悪心、嘔吐まできたす状態を指します。この原因として、自律神経失調症があげられ、そのせいで症状が現れているとも考えられます。ご注意下さい。

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