千葉県佐倉市の男性Aさん(71)は8年前、早期の胃がんが見つかり、慶応大病院で胃を切除することになった。「胃がなくなると苦労するのでは」と不安になったが、「センチネルリンパ節生検」という検査を受けた結果、転移の可能性が低いと判断され、がんの周りを小さく切除するだけで済んだ。おかげで手術後も変わらずに食事ができ、今も元気にゴルフを楽しんでいる。

早期胃がんのうち、がんが胃の粘膜にとどまっていれば、口から胃カメラを入れる内視鏡治療で治せることが多い。しかし、粘膜の下の粘膜下層にまでがんが進むと手術が必要になる。胃の全部か3分の2を切除し、がんが転移している可能性がある周囲のリンパ節も取り除く。

胃を切除すると、困るのは後遺症だ。少しずつしか食べられず、早食いすると苦しくなる、下痢をしやすくなる、食後に動悸やめまいが起こる――などの症状が表れる。

そこで期待されているのが、センチネルリンパ節生検。センチネルは「見張り」の意味で、胃がんが転移する場合、がん細胞がリンパ管を通じて最初に流れ着くリンパ節のことだ。

このリンパ節を特定し、がんが見つからなければ、その先のリンパ節にも転移がない、と判断。切除する胃の大きさやリンパ節を減らす縮小手術で、後遺症の軽減を目指す。

センチネルリンパ節の特定は、手術直前にがんの周囲に色素を注入、または前日に放射性同位元素を注入して行う。慶応大病院では二つの方法を併用している。

手術では、染まったリンパ節を肉眼で確認しながら、小さめに胃とリンパ節を切除する。その場ですぐに、取り出したリンパ節に放射線検出器を当て、反応したリンパ節を病理検査に出す。顕微鏡でがんが見つからなければ手術はそこで終わり、がんが見つかれば、さらに範囲を広げて切除する。

センチネルリンパ節生検は、皮膚がんの一部や乳がんで普及しているが、まだ研究的な段階。特に胃がんでは慎重に行われてきた。センチネルリンパ節にがんが見つからなくても、他のリンパ節にがんが転移しているケースがあるからだ。

そこで、全国の12病院による最新の臨床試験で、胃がん患者約400人に慶応大と同じ方法で生検を行った結果、粘膜下層にとどまる早期がんで、大きさが4センチ以下なら、ほぼ正確に転移の有無を診断できることが分かった。

今後は、この検査を行って縮小手術を行う場合と、通常の手術を行った場合とで、生存率の差を調べる必要がある。主任研究者で慶応大一般・消化器外科教授の北川雄光さんは「まだ研究途上にある検査法なので、医師の説明をよく聞いて検査を受けたい」と話している。
(「目印」付けリンパ追跡 胃がんの転移予測)


胃癌は、広義では胃粘膜上皮から発生した癌腫(狭義の胃癌)と、上皮以外の組織から発生したがん(胃平滑筋肉腫・GIST・胃悪性リンパ腫など)の両方を含みますが、一般的には粘膜上皮から発生したもの(前者)を指します。

かつて、日本では男女とも胃癌が第1位でしたが、死者数は年々減少しています。2003年の日本における死者数は49,535人(男32,142人、女17,393人)で、男性では肺癌に次いで第2位、女性では大腸癌に次いで第2位となっています。

胃癌は、自覚症状による胃癌の早期発見は難しいです。ほとんどの場合、早期癌の段階では無症状であり、癌が進行してからでないとはっきりとした自覚症状が出てこないことが多いからと言われています。そのため、放置されてしまったり、逆に内視鏡検査などで早期発見されるケースもあります。

胃癌の転移には、血行性転移、リンパ行性転移、腹膜播種があります。胃壁内での深達度が進むほど転移率は高くなり、血行性転移では肝や肺、さらに骨、脳、皮膚、腎などへ転移します。リンパ行性転移は所属リンパ節から始まり、遠隔リンパ節へ転移をきたしていきます。腹膜播種は、漿膜を越えて胃壁を浸潤した癌細胞が、腹膜に播種して癌性腹膜炎を起こして腹水を生じます。

肝転移すると肝腫大、黄疸などが起こってきます。腹膜に転移すると腹水、後腹膜に転移すると強い背部痛を認めます。その他、左鎖骨上窩リンパ節転移(Virchow転移)、Douglas窩への転移(Schnitzler転移)、卵巣転移(Krukenberg腫瘍)などがあります。

胃癌の治療方針は、「胃癌治療ガイドライン」などにより、腫瘍の大きさ・部位・拡がり、病期、全身状態、あるいは患者の希望など様々な要素を勘案し決定されます。

深達度がM(粘膜内)で、N0(リンパ節転移なし)、分化型、2cm以下、潰瘍形成なしであれば、内視鏡的粘膜切除術を行います。StageIIもしくはIIIAなら、2群リンパ節郭清を伴う胃切除術(これが標準的な手術法であり、定型手術と呼ばれます)を行います。StageIV(遠隔転移を伴う)なら、姑息的手術を行ったり、化学療法などを行います。

胃の切除は、部位によって胃全摘術、幽門側胃切除術(十二指腸側2/3程度の胃切除)、噴門側胃切除術(食道側1/2程度の胃切除)などに分けられます。縮小手術では、胃の2/3未満の切除で、大網温存、幽門保存胃切除、迷走神経温存術などが行われることもあります。胃の2/3以上の切除とD2リンパ節郭清が行われるものを定型手術といいます。また、定型手術に他臓器合併切除が行われるものを拡大手術(胃の周辺臓器に直接浸潤する例や高度のリンパ節転移を認める例が適応)といいます。

胃の切除が終わったら、食物の通り道をつなぐために消化管再建が行われます。様々な再建法があり、個々の患者の状態に応じて選択されますが、代表的なものはBillroth I法(胃-十二指腸吻合)、Billroth II法(胃-空腸吻合)、Roux en Y法(食道or胃-空腸吻合)、空腸間置法(空腸で置換)などがあります。

現在では外科切除に加えて、内視鏡的治療や腹腔鏡下手術が行われるようになっています(低侵襲の治療法が行われるようになった)。内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)は、リンパ節転移の可能性がほとんどないとされる2cm以下の粘膜癌で、組織型は分化型(pap、tub1、tub2),肉眼型は問わないが陥凹型では癌巣内に潰瘍を有しないと診断される例(リンパ節転移の可能性がほとんどない例)に対して用いられます。

一方、遠隔転移がみられたり、他臓器への浸潤が強く切除不能の例に対しては化学療法が行われていますが、まだ有効性は低い状態です。

胃癌術後の問題点としては、以下のようなものがあります。
胃切除によって、正常な胃の機能が損なわれることにより生じるさまざまな症状を総称して「胃切除後症候群」といいます。主として機能性障害によるものと、器質性障害によるものに大別されます。

機能性障害によるものとしては、消化吸収障害、貧血、ダンピング症候群、低血糖症候群、骨代謝障害、下痢などがあります。器質性障害には、逆流性食道炎、輸入脚症候群、胆石症などが挙げられます。

こうした症状としては、胃の切除範囲、再建術式、迷走神経切離の有無などにより左右されます。胃の貯蔵能、粉砕能、排泄能などの胃運動が障害されるために生じる病態として、逆流性食道炎(膵液や胆汁の逆流による)、ダンピング症候群(食物が短時間に大量に小腸に流入することによる)などがあります。

ダンピング症候群としては、胃切除術後の患者の食後に起こる種々の腹部症状と全身症状が起こります。食後30分以内の早期と2、3時間後の晩期があります。

血管運動性症状として食後 5〜30分に生じる冷汗、動悸、顔面紅潮、頭痛、めまいなど(小腸内に多量に流入した高張な食物による直接・間接的に血管作動性物質が分泌されることによる)があります。また、消化器症状として食後30〜60分に生じる悪心・嘔吐、腹痛、腹部膨満感、下痢など(同様な機序により消化管運動に影響する物質が分泌されることによる)があります。後期では食後 2〜3時間後に生じる低血糖症状(大量の糖分が急速に吸収されたリバウンド反応としてインスリンの過剰分泌による)が起こります。

胃の分泌する塩酸、ペプシノゲン、ビタミンB12の吸収に必要な内因子などの胃液分泌障害により生じる病態では、貧血(鉄欠乏性貧血およびビタミンB12欠乏性貧血)、消化吸収障害(3大栄養素、ビタミン、ミネラルなど)、骨障害(ビタミンD、Ca吸収障害による)などが起こります。

胃-小腸間の異常交通により生じる病態としては、輸入脚症候群(Billroth極,砲いて形成された輸入脚、およびその吻合部において通過障害を生じることによる)、盲係蹄症候群(輸入脚内において異常増殖した細菌により種々の吸収障害をきたすことによる)などが起こります。

上記のような手術が確立されれば、患者さんの負担が減ると考えられます。発展途上とはいえ、これから期待される研究です。

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