以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

都内のメーカーの営業に勤めるN・Sさん(49)の悩みは、ここ数年で出てきた「ぽっこりお腹」。両親が糖尿病という家族歴もあったので、毎年健康診断を受けていましたが、今まで異常がなかったため安心していました。

そんなある日、突然、心臓をわしづかみにされたような胸の痛みに襲われます。すぐに病院に直行し、精密検査を受けたところ、医師からまさかの宣告を受けました。その診断とは、糖尿病でした。

糖尿病とは、インスリンの絶対的もしくは相対的不足により引き起こされる、持続的な高血糖状態を指します。自己免疫的機序により発症する1型糖尿病と、それ以外の原因による2型糖尿病に大別できます。

1型糖尿病は、自己免疫的機序により、膵臓のインスリン産生を行っているβ細胞の傷害によって起こると考えられます。故に、絶対的なインスリンの不足(産生自体が難しくなるため)が起こってきます。国内の小児の年間発症率は、10万人当たり1.5人で、学童期に多く発症します。

発症は急激で、高血糖による口渇、多飲、多尿、体重減少が進行し、脱水、意識障害をきたします。肥満はなく、むしろやせ型で、家系内に糖尿病患者は少ないという特徴があります。

一方、2型糖尿病とは、生活習慣が大きく関わっており、慢性的な高血糖状態やインスリン抵抗性(インスリンが多く分泌されていても、効かない状態)により、相対的なインスリン不足状態を指します(分泌自体はあっても、作用が追いつかない状態)。その後、インスリン分泌不全も起こってくる可能性があります。1型に比べ、2型糖尿病では家族歴が濃厚で、学童期以降に学校検尿で発見されることが多いです。

インスリン分泌低下をきたす素因に、過食、肥満、運動不足、ストレスなどの環境因子および加齢が加わり発症します。従来、成人での発症が大部分でしたが、小児肥満の増加とともに小児での発症が増えてきています。ただ、肥満を伴わずインスリン分泌不全が主体となる例が2型糖尿病の10〜20%に認められます。

この糖尿病の指標となるのが血糖値であり、血糖値とは血液中にどれだけの糖分が含まれているかを示した数値のことです。具体的な診断基準(日本糖尿病学会の診断基準)としては、
/鏤血糖値200mg/dL以上
∩當空腹時血糖値126mg/dL以上
75g糖負荷試験で2時間値200mg/dL以上

のいずれかを満たすものを糖尿病型とし、これらが2度別の日の検査で確認されれば糖尿病と診断します。ただし、1回の検査でも
仝渇、多飲、多尿など糖尿病の特徴的症状がある。
HbA1cが6.5%以上
2甬遒謀尿病型であった。
こ亮造別嵋貍匹ある。

場合も糖尿病と診断できます。しかし、N・Sさんは毎年の健康診断でも、血糖値は126mg/dl以下で何の異常も見られませんでした。では、どうして糖尿病と診断されたのか、それは以下のような理由です。
N・Sさんの場合は、「隠れ糖尿病(耐糖能異常:IGT)」でした。
一般的に血糖値の検査は、人それぞれ食事内容が違うため空腹時に行います。通常、空腹時の血糖値は正常な状態で、食事をすると血糖値が上がっていきます。すると、すかさずインスリンが分泌されます。糖分はエネルギーに変わり、やがて血糖値は正常に戻るのです。

しかし、糖尿病患者の場合、空腹時も血糖値が高いばかりか食事をしてもインスリンが殆ど分泌されず、常に高血糖の状態になります。そのため当然、空腹時の血糖値を見れば、異常は発見できます。
 
一方、隠れ糖尿病患者の場合、空腹時は血糖値が正常。ところが食後、血糖値が上昇しても、インスリンはなかなか分泌されず、高血糖の状態になってしまいます。多くインスリンが出始めるのは、食後1時間近くも経ってからです。そのため、血糖値が正常に戻るまで2〜3時間もかかってしまいます。隠れ糖尿病(耐糖能異常:IGT)の場合、血糖値が危険なほど高くなるのは、食後しばらくの間のみです。だからこそ空腹時の血液検査では異常が見過ごされてしまったのです。

糖尿病型でなく、空腹時110−125mg/dL(空腹時血糖異常;IFG)、糖負荷試験2時間値140−199mg/dL(耐糖能異常;IGT)のいずれかあるいは両方を満たすものを境界型としていますが、近年、耐糖能異常;IGTでも心血管疾患のリスクが高いといわれており注意が必要とされています。

隠れ糖尿病の恐ろしいところは、食後、糖分が増え過ぎてから大量のインスリンを一気に分泌するため、すい臓がすぐに疲弊してしまうことです。こんな事態が起きているとも知らずに、N・Sさんは健康診断の結果を過信していました。その結果、心臓へと続く動脈に糖分があふれ、血管を傷つけたことで動脈硬化が進行。ついには「狭心症」になってしまいました。

現在約820万人いる糖尿病患者のうち約3割が、この隠れ糖尿病のである可能性があると言われています。ちなみに、健康診断以外で、この隠れ糖尿病の可能性を疑う手だてが「家族歴」です。家族に糖尿病患者がいるかどうかが、病を疑う参考になるといわれています。

アメリカ糖尿病協会の報告によると、父親もしくは母親どちらか一方だけが糖尿病だった場合、その子どもが糖尿病になる可能性は約20%。両親ともに糖尿病だった場合、なんと約50%の子どもが将来糖尿病になる可能性があるというデータがあるようです。

糖尿病は、コントロール不良のまま長期間放置するとさまざまな血管合併症を引き起こすといわれています。細小血管症(網膜症、腎症、神経症)は患者のQOLを著しく低下させるほか、大血管症(虚血性心疾患、脳血管障害)は生命をも脅かすものです。空腹時血糖のみで判断せず、家族歴などがある場合は、OGTT(経口糖負荷試験)などの検査を受けることが重要です。

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