フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第6戦・NHK杯は第2日の29日、東京・代々木第1体育館で女子のフリーがあり、ショートプログラム(SP)首位の浅田真央(愛知・中京大中京高)が計191.13点で2年ぶり2回目の優勝を果たした。

23歳でGPシリーズ初出場の鈴木明子が2位と大健闘。「ビックリしている。信じられない」と繰り返した。二つの連続ジャンプをミスし、中盤の3回転ルッツでも着氷が乱れたが「攻めていこうと決めていたので、切り替えられた」。その後はキレのいいステップと、思い切りのいいジャンプで波に乗り、「お客さんの手拍子のリズムが速いな」と感じる余裕さえあったという。

東北福祉大在籍時の5シーズン前に、鈴木は摂食障害で体重が15Kgも減り、フィギュアから一度離れた。それでも、スケートを目標に立ち直った。そんな鈴木の活躍を、同じ愛知県出身の浅田真と中野も「いい刺激になります」と祝福した。
([フィギュア]浅田2年ぶり優勝 ファイナル進出 NHK杯)


摂食障害は拒食や過食といった、食行動のコントロールが困難となる疾患です。思春期の女性に多いといわれています(ですが、近年では若年例、高年例、男性例が増加しています)。神経性無食欲症(いわゆる拒食症)と神経性大食症(いわゆる過食症)の2つの病態に大きく分けられます。

神経性無食欲症(拒食症)の方は、無食欲、やせ、無月経を呈し、活動性は亢進し、どんなにやせていても自分がやせているとは思わず(ボディ・イメージの歪みがある)、治療に対して拒否的である状態です。平たく言ってしまえば、「太ってしまうという恐怖があり(実際は痩せている)、栄養を摂るのに必要な食事を拒否してしまっている状態」と言えるでしょう。

このように、やせ願望のために食事を極端に自己制限し、体重減少が著しくなります。無月経などの身体合併症を伴い、危険な状態に至っても肥満恐怖が強く、少量の食事で太るという認知の歪みを認めます。極端な食事制限のみのタイプと、食事制限に加えて、自己誘発嘔吐や下剤、利尿薬乱用を伴うタイプがあります。

神経性大食症(いわゆる過食症)の方は、短時間内(多くは夜間)に大量の食物をむちゃ食いする点に特徴があり、抑えがたい衝動によってむちゃ食いしてしまいます。また過食後も多くのケースでやせ願望や肥満恐怖があり、自己誘発性嘔吐や下剤の乱用などがみられます。

ちなみに、極端な過食をしながら、自己誘発嘔吐や下剤,利尿薬乱用などの排出行為を伴うタイプと、運動によって体重増加を防ぐのみで排出行為のないタイプがあります。神経性大食症は肥満恐怖がありますが、極度の体重減少はない点が神経性無食欲症とは異なります。

両者は正反対の病態のようにもみえますが、拒食症が過食症へと変遷したり、過食症が拒食症様の症状を呈したりします。両者は相互に移行したり重複したりし、連続性のある病態と考えられ、摂食障害として1つにまとめられます。両方とも、体重や体型によって自己評価が極端に左右されるという認知の歪みが認められる点で一致しています。

診断基準(DSM-)としては、
・神経性無食欲症
A:年齢と身長に対する正常体重の最低限、またはそれ以上を維持することの拒否(例:期待される体重の85%以下の体重が続くような体重減少、または成長期間中に期待される体重増加がなく、期待される体重の85%以下になる)。
B:体重が不足している場合でも、体重が増えること、または肥満することに対する強い恐怖。
C:自分の体の重さまたは体型を感じる感じ方の障害;自己評価に対する体重や体型の過剰な影響、または現在の低体重の重大さの否認。
D:初潮後の女性の場合は、無月経、つまり、月経周期が連続して少なくとも3回欠如する(エストロゲンなどのホルモン剤投与後にのみ月経が起きている場合、その女性は無月経とみなされる)。
亜型分類
拒食タイプ:現在の神経性無食欲症のエピソード期間中、その人は規則的に無茶食い、またはパージング行為(つまり、自己誘発性嘔吐または下剤、利尿剤、または浣腸の誤った使用)を行ったことがない。
過食・パージングタイプ:現在の神経性無食欲症のエピソード期間中、その人は規則的に無茶食いまたは排出行動(つまり、自己誘発性嘔吐または下剤、利尿剤、浣腸の誤った使用)を行ったことがある。

・神経性大食症
A:無茶食いのエピソードの繰り返し、無茶食いのエピソードは以下の2つによって特徴づけられる。
1)他とはっきり区別される時間の間に(例:1日の何時間でも2時間以内の間)、ほとんどの人が同じように食べる量よりも明らかに多い食物を食べること。
2)そのエピソードの間は、食べることを制御できないという感覚(例:食べることをやめることができない、または、何を、またはどれほど多く食べているかを制御できないという感じ)。
B:体重の増加を防ぐために不適切な代償行為を繰り返す、例えば、自己誘発性嘔吐;下剤、利尿剤、浣腸、またはその他の薬剤の間違った使用;絶食;または過剰な運動。
C:無茶食いおよび不適切な代償行為はともに、平均して、少なくとも3ヶ月間にわたって週2回起こっている。
D:自己評価は、体型および体重の影響を過剰に受けている。
E:障害は、神経性無食欲症のエピソード期間中にのみ起こるものではない。
亜型分類
排出型:現在の神経性大食症のエピソードの期間中、その人は定期的に自己誘発性嘔吐をする、または下剤、利尿剤、または浣腸の誤った使用をする。
非排出型:現在の神経性大食症のエピソードの期間中、その人は、絶食または過剰な運動などの他の不適切な代償行為を行ったことがあるが定期的に自己誘発性嘔吐、または、下剤、利尿剤、または浣腸の誤った使用はしたことがない。
このような基準にともない、診断が行われます。

神経性無食欲症の場合はやせており、一見してそれらしいとわかるため診断しやすいですが、過食症ではやせてはおらず、本人は過食していることを隠していることが多いため、自ら訴えないかぎり、周囲からの情報がないとわからないこともあります。

神経性無食欲症では、両親や周囲の勧めでしぶしぶ受診することが多く、病態の否認や治療への抵抗が強いです。また、心配する家族と摩擦を生じていることも多いです。

一方、神経性大食症の場合は過食に対して困っており、積極的に受診に至る例が多いです。ですが、すぐに治る、助けてもらえる、といった過剰な期待をもっているために、数回で中断する例も多いです。

治療としては、以下のようなものがあります。
まず、摂食障害はダイエットの行き過ぎや痩せすぎが問題になるのではなく、その背景に心理的葛藤が存在し、それが自らの体型や体重に置き換えられている、という認識が必要になります。

そのため、治療のゴールを体重の回復のように身体面の改善だけに置くのではなく、本人の自立を根気よく精神的に援助していく姿勢が望まれます。そして、治療は年の単位となるのが一般的で、患者さんだけでなく、周囲や治療者も焦らないようにする必要があります。

治療としては、標準体重の70%以下になれば原則入院療法を行います。そこで疾病教育や栄養教育が必要です。疾病教育では摂食障害に関する説明などをしっかりと行い、ボディ・イメージの歪みを直していく(太ってなどおらず、治療が必要だと病識を正す)必要があります。栄養教育では、小児期における成長に必要な栄養の重要性や、低栄養であるとどんな悪影響があるのか、といった理解を促します。

飢餓や嘔吐など生理的影響を受けている患者さんを、精神療法だけで治療することには限界があり、身体療法、家族療法、薬物療法、認知行動療法などの治療法を組み合わせて総合的に対処する必要があります。

精神療法としては、個人精神療法、集団精神療法(心理教育も含む)、家族療法などがあります。個人療法では、受容的・支持的な態度をしめすことが重要となります。体重が増えると自信や自己存在が大きく揺らぐ不安に共感していきます。一方で、認知行動療法を用いて、体重や体型、食事に対する歪んだ認知の修正をはかることも行います。

身体的には、体重減少が著しい場合は、非経口的な栄養剤投与(鼻腔栄養、IVHによる高カロリー輸液など)が必要となります。ですが、患者さんの中には、その生命を繋ぐのに必要な栄養ですら、「太ってしまう…」とまるで毒物であるかのような感覚をもってしまうこともあるそうです。

身体状態が重篤な場合は末梢点滴や中心静脈栄養による体重増加を優先させます。重度の肝障害や電解質異常の場合、精神症状や問題行動が著しい場合には、入院治療が必要となります。また、神経性食欲不振症の無月経では、消退出血を起こす治療は貧血や体力の消耗につながるため、標準体重の70%以下の場合は行わないほうがよいと考えられます。

精神症状に対しては、対症的に薬物療法を行います。薬物療法はあくまでも補助的な手段ではありますが、うまく利用することのメリットもあります。抑うつや強迫傾向、不安などが強い場合ではデプロメール錠(25mg)やパキシル(10mg)などを用います。

患者自身または家族(特に母親)は病気の原因について強い自責感をもっているケースが多く、そのことが家族との葛藤を引き起こしている場合があります。患者自身が悪いのでも、家族や周囲が悪いのでもなく、症状のために全員がまきこまれていると認識していただき、問題の外在化をはかることも重要です。

摂食障害を乗り越え、見事に結果を出されたようです。今後もご活躍できるよう、応援させていただきたく思います。

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