お笑いコンビ「爆笑問題」の太田光(43)が3日、水曜レギュラーを務めるフジテレビ系「笑っていいとも!」の出演を休んだ。相方の田中裕二(43)が一人で出演した。

所属事務所によると、太田は鼠径ヘルニア(脱腸)のため1日に入院し、2日に約2時間の開腹手術を受け、無事成功。経過も良好で、順調にいけば司会を務める7日のTBS系「サンデー・ジャポン」に生出演し、仕事に復帰する予定。

太田は鼠径ヘルニアを子どものころから患っており、左側を手術していたが、最近になって違和感を覚える頻度が高くなり、つらい状況もあったという。4か月ほど前に医師に相談したところ「右側も手術した方が楽になるだろう」とアドバイスを受けたため、この時期に手術することを決意した。

緊急ではなくあらかじめ決まっていた手術のため、仕事のスケジュールは調整済みで、キャンセルはこの日の「いいとも」だけの予定という。

なお、2000年9月に田中が左こう丸の摘出手術を受けた際は、入院中に太田が一人で番組に出演したこともあった。
(太田光、ヘルニア手術で「いいとも」お休み)


ヘルニアとは、解剖学的に本来ない場所に臓器や組織が脱出することを指します。鼠径部で腸管が脱出することを鼠径ヘルニアといい、ヘルニア門(出口のこと)の部位により外鼠径ヘルニア(間接ヘルニア)と内鼠径ヘルニア(直接ヘルニア)に分類されます。

外鼠径ヘルニアのヘルニア門は内鼠径輪です。外鼠径ヘルニアは、その内容が内鼠径輪から鼠径管に入り、外鼠径輪から出るヘルニアで、鼠径三角(Hesselbach's triangle)の外側、下腹壁動静脈の外側に出るので「外鼠径ヘルニア」と呼ばれます。

一方、内鼠径ヘルニアでは鼠径管の後壁です。鼠径靱帯上で、内側鼠径窩に発生します(簡単に言ってしまえば、下腹壁動静脈の外側に膨隆するのが外鼠径ヘルニア、内側に膨隆するのが内鼠径ヘルニアですが、診断が難しいことも多いです)。

小児の鼠径ヘルニアは、先天的な腹膜鞘状突起の開存により下腹壁動静脈の外側から鼠径管内、陰嚢にかけて腸管や卵巣などの腹腔臓器が脱出する「外鼠径ヘルニア」が圧倒的に多いです。鼠径ヘルニアの中で最も頻度が高く、多くは乳幼児期、小児期に発症します。成人では50歳代以降に多くみられ、男子に多く、右側の頻度が高いといった特徴があります。

腹壁組織の脆弱化によりこれらの血管の内側に脱出する「内鼠径ヘルニア」は小児ではまれです。内鼠径ヘルニアは後天的なものが多く、鼠径靱帯上で、内側鼠径窩(いわゆるHesselbach三角)に発生します。老人で腹壁の筋肉が弛緩したものに多く発生します。

外鼠径ヘルニアの症状としては、鼠径部の有痛性または無痛性膨隆で、自然消失を繰り返す病歴があれば強く疑います。立位や腹圧をかける(排便時など)と膨隆が出現しやすいです。乳児や小児では、鼠径部の腫瘤がはっきりしなくても、silk signを認めることが多いです。silk signとは、指を鼠径管上にあてて鼠径靭帯に直角の方向に動かしながら触診すると、ヘルニア嚢のある側では「絹の手袋を触るような」と表現される独特の触感があることを指します。

内鼠径ヘルニアも無痛性のことが多く、多少の圧迫感や鈍痛を伴うことがあります。激しい痛みを伴うときは嵌頓の可能性を考えます。ヘルニア腫瘤は、嵌頓していない限り、膨隆として出たり消えたりするのが特徴であり、腹圧がかかったときに出て、寝たりして腹圧が下がったときに消えることが多いです。膨隆の様子は嚢状というよりは、むしろ半球状で、陰嚢の内までヘルニア嚢が延長することは少ないようです。

鼠径ヘルニアにおいて最も多い重篤な合併症は嵌頓ヘルニアであり、以下のようなものです。
嵌頓ヘルニアとは、ヘルニア内容がヘルニア門において絞扼されて非還納性となったものです。ヘルニア腫瘤は増大・緊張して、非還納性(戻せなくなる)となり圧痛が著明となります。

やがて嘔吐や排ガス、排便の停止、腹部膨満などの絞扼性イレウス症状を呈するようになり、腸管が穿孔すると腹膜炎となってしまいます。以前からヘルニアの病歴がある患者さんが、突然非還納性となったときは嵌頓を疑います。

還納できない場合には手術を行います。嵌頓後時間の経過したものでは、腸管破裂や壊死腸管を還納するなどの危険性があるので、手術適応の判断が重要となります。

手術の原則としては、小児の外鼠径ヘルニアではヘルニア嚢の処理で通常は充分ですが、成人ヘルニアでは間接・直接型いずれのヘルニアでも、ヘルニア門を縫縮したり、人工膜を用いて内鼠径輪、鼠径管の後壁を補強することが原則となります。iliopubic tract repairやMcVay法に準じた補強などがあります。最近では、腹腔鏡下手術やmesh-plug法もよく行われているそうです。

日曜日には復帰されるとのことです。あまり無理をなさってはいただきたくありませんが、退院後に再びご活躍くださることを願っております。

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