以下は、ザ!世界仰天ニュースで扱われていた内容です。

2008年イギリス。手首の痛みを訴え、アレックス・レンケイ(50)が整形外科を訪ねた。右手首の「変形性関節症」という病気になり、右手首の関節に水がたまり痛みが生じている状態。すぐにでも手術が必要だった。

医師が手術の手配をしようとした時、アレックスは思いがけないことを言い出した。彼は「自分に催眠をかけるので、私には麻酔は必要ない」と言い出した。この手術はメスも使うし、骨も削る。相当な痛みを伴うと思われる手術なのに、アレックス一体、何を考えているのか?病院ではアレックスの強い主張を受けて会議が行われた。本人がそれを望むなら、尊重すべきという意見もあり、病院側は一切の責任を負わないとの条件で、麻酔なしの外科手術は認められることに。そして、少しでも痛みを感じたと思ったらすぐに麻酔を打つとの条件も課された。

手術当日、医師たちが見守る中、アレックスは自分を催眠状態に。その方法とは、5分間、2秒に一度の決まったリズムで手拍子をするというもの。単調なリズムというのは、催眠状態に誘導する上でとても大事な役割を担っている。その指示通り、看護師は手拍子で単調なリズムを刻む。手拍子を始めて5分が経過する頃、アレックスは深く眠っているように見えた。そして5分経過後、医師達は、アレックスに左手を上げるように指示をした。アレックスの左手はすんなりと上がる。次に右手を上げるように指示した。上がらない。医師達が持ち上げてみると、ずっしりと重い。「右手は麻痺している」実はこれが催眠状態になった合図だったのだ。万が一に備え、麻酔科の医師が待機する中、いよいよ緊張の手術が始まった。

医師は張り詰めた空気の中、右手首にメスを入れた。だが、アレックスに変化はない。そしていよいよ、骨を削る作業へ。アレックスに一向に変化はない。そして2時間後、手術は無事終了。アレックスは催眠から目覚めると、「手術中はみなさんお喋りしないんですね」と言った。なんと手術中、アレックスに意識はあり、全ての音や声が聞こえていたのだ。こうして、催眠による外科手術は見事成功に終わった。


手関節痛を来すものとしては、特異性の疾患と非特異性のものがあります。特異性のものとしては骨折、脱臼、靱帯損傷、捻挫などの外傷およびそれらから生ずる二次性のものと、腱鞘炎や関節リウマチ、痛風などの関節炎、変形性関節症、、骨・関節・腱鞘などの感染症、腫瘍やガングリオン、骨壊死などの非外傷性のものに分けられます。

そもそも、手関節は橈骨と8つの手根骨は隣接する骨の間で互いに関節を形成しています。隣接する手根骨間は手根間関節といわれますが、近位手根列を形成する舟状骨、月状骨、三角骨それぞれの間と遠位手根列を形成する大・小菱形骨、有頭骨、有鉤骨それぞれの間は可動性に乏しいです。そのため、手関節とは通常、「橈骨と近位手根列間の橈骨手根関節」と「近位・遠位手根列間の手根中央関節」および「豆状三角骨関節」の3つを呼んでいます。

上記のケースでは、橈骨手根関節における変形性関節症が原因となっていたようです。変形性関節症とは、関節軟骨・半月などの退行変性を基盤に、軟骨破壊と同時に骨軟骨の再造成を来し、関節形態が変化する疾患を指します。病理学的には、軟骨表層の粗造化,軟骨深層に至る裂溝、軟骨細胞の集簇像などが認められ、末期には軟骨は消失し露出した軟骨下骨は象牙質化を呈します。

簡単にいえば、関節の2つの骨の間でクッションの役割を果たしている軟骨がすり減り、骨が削れて変形し、周りの組織に炎症が起きて、発症すると考えられています。加齢に伴い罹患頻度は上昇し、通常60歳以上では身体のいずれかの関節に本症のX線上の変化が認められるといわれています。

上記のケースでは、手関節の慢性関節水腫が起こっていたようです。これは、関節内に関節液がたまった状態で、滑膜での関節液産生の異常な亢進により液が貯留してきます。関節潤滑は低下し、運動制限や疼痛、重圧感などが生じてきます。変形性関節症を含めた、関節機能障害の初期からみられる臨床症状の1つです。

必要な検査としては、以下のようなものがあります。
手関節痛がある場合、視診を行って腫脹を認めれば、骨折や脱臼などの外傷や腫瘍を考えます。腫脹が関節に存在していれば、関節リウマチや急性化膿性関節炎を疑います。つぎに、触診を行います。骨折があれば、骨折部位に一致して圧痛を認めます。手をついて転倒し、舟状骨骨折が疑われる場合には圧痛がある部分を、とくに健側とよく比較して調べます。

手関節可動域は屈・伸,橈・尺屈に回内・回外を加えた6方向を計測し、痛みによる制限を明らかにすることが必要です。また、握力測定は痛みとともに手関節全体の機能を表現しており、重要です。

画像診断では、X線撮影を含む各種画像診断から関節造影、関節鏡検査へと順次診断を進めて診断を確定していきます。非侵襲性の超音波からMRI、CT、骨シンチグラフィーなどが行われます。

手関節炎の鑑別診断のために、白血球、赤沈、CRP、RAテスト、ASLO、尿酸などの血液検査を調べることもあります。その他、手根管症候群やGuyon管症候群の確定診断のために神経伝導速度を測定したり、病理組織学的検査で、炎症性病変や腫瘍の確定診断のために行うこともあります。

上記のケースでは、痛みなどの症状や触診所見、X線検査の結果から診断されたようです。結果、水腫を取り除く手術が行われていました。たしかに麻酔薬などの副作用を考慮せずに済むのは好ましいことかとは思われますが、全ての人に適応できるかといえば難しいのではないか、と思われます。いくら本人が望んだとしても、それを了承する医師は多くないのではないか、と考えられます。

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