読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
風邪は治ったのに、せきだけが数ヶ月続いています。とくに就寝前や明け方がひどく、市販のせき止めも効きません。もしかして病気なのでしょうか。(東京都33歳女性)
この相談に対して、以下のような説明がなされていました。
症状からして、咳喘息の疑いがあります。放置するとぜんそくに移行する可能性があるため、早めに病院を受診することをおすすめします。

咳喘息とは、ぜんそく特有の喘鳴(ゼイゼイ、ヒューヒューという呼吸音)や呼吸困難などがなく、せきだけが慢性的に続く病気をいいます。夜間から明け方にかけて症状が出やすく、せきの発作が激しいときは眠れなかったり、胸の痛みやおう吐などが生じたりすることがあります。また、せきによって体力を消耗し、さまざまな病気にかかりやすくなる場合もあります。発症者は年々増加していて、女性に比較的多いのが特徴です。

原因は、まだはっきりわかっていないのですが、アレルゲン(アレルギーを引き起こす原因物質)などによって気道が炎症を起こし、その影響で気管支の周りにある平滑筋が収縮してせきが起こると考えられています。感染症ではないので、人にうつることはありません。
咳喘息とは、喘鳴が明らかでなく、咳嗽のみを症状とする喘息を指します。病態や治療は慢性の喘息と同じであり、気道反応性の亢進(気道過敏性)が診断の根拠となります。喘鳴(「ヒューヒュー」「ゼェーゼェー」という音が、聴診器を使わずに聞こえる状態)が明らかでなく、咳のみを症状とする喘息のことです。

胸部X線所見や肺機能検査が正常で、慢性の咳嗽を認める疾患として気管支喘息の頻度が高いことから、「咳喘息」と呼ばれます。治療などは、いわゆる喘息と同じであり、慢性の咳を認める疾患として、特に気管支喘息の頻度が高いことから"咳"喘息といわれています。

くしゃみ、鼻水、鼻づまり、喉の痛み、発熱などのかぜ症状にせき(咳嗽)を伴っても、通常はかぜ症状の改善と同時に、1週間以内に治まります。しかし、せきだけが長引き、場合によってはますます強くなり睡眠に障害があったり、女性はせきとともに尿がもれたりすることがあります。2ヶ月以上続くと、慢性咳嗽と診断されます。

特徴的なのは気道過敏性といって、健康な人では問題にならないほどの軽微な刺激で、咳き込んでしまうなど、症状が出現することです。原因として多いのは、運動やなどで、他にも煙草の煙、香水などのニオイ、ストレスなどです。

せき喘息は、ヒューヒュー、ゼーゼーいう喘息の前段階で、多くは喘息と同じ治療(気管支拡張薬と吸入ステロイド)で改善します。アトピー咳嗽は、喉のイガイガ感や痰のひっつき感を伴いますが、アレルギー治療に使う抗ヒスタミン薬や吸入ステロイドで治療できます。

治療としては、具体的に以下のようなものがあります。
咳喘息は、風邪に続いて起こることが多く、風邪は治ったのにせきだけがいっこうに治まらない、というような場合は、咳喘息の疑いがあります。治療をせずに放置すれば、大人も子どもも約3割が典型的なぜんそくに移行すると考えられています。

ですから、「ただ、せきが長引いているだけ。そのうち自然に治る」などと、侮ってはいけません。市販のせき止めでは治らない病気なので、ご質問の方もできるだけ早く呼吸器内科やアレルギー科などを受診して、適切な治療を行うことをおすすめします。

病院での診断は、せきを伴うほかの病気と鑑別するため、胸部X線写真や血液検査などを行います。そして、気管支拡張薬や吸入ステロイド薬などを投与して効果があれば、咳喘息と診断します。これらの薬は、治療をするときにも使われます。

咳喘息の大半は治療によって治ります。しかし、風邪(ウイルス感染)や花粉、たばこ・線香などの煙、室内の寒暖の差、夏場の冷房などが引き金となって再発することが多いので、注意が必要です。
咳喘息も、基本的に気管支喘息治療と同様に行います。咳喘息の場合、風邪とは異なり、鎮咳薬(せきどめ)の効果は少ないといわれています。

治療法としては、急性発作に対しては、気管支拡張薬、ステロイド薬を中心とした治療を行います。気管支拡張薬としては、吸入β2-刺激薬を基本として、キサンチン製剤、抗コリン薬などを用いることもあります。ステロイド薬(炎症を抑える)は経口ないし点滴で用います。

持続する喘息の場合、軽症持続型では少量の吸入ステロイド薬が基本です。キサンチン製剤、β2-刺激薬吸入、抗アレルギー薬は、補助的に用います。中等症〜高度持続型の場合も、吸入ステロイド薬が基本ですが、量は増えます。同様に、キサンチン製剤、β2-刺激薬吸入、抗アレルギー薬を補助的に用いることもあります。

典型的な喘息発作で受診する患者の診断は比較的容易ですが、軽症例・慢性的な症状のある例や、咳喘息例などでは注意深い診断が必要になります。可逆性気流閉塞が認められない場合が多いですが、非特異的気道過敏性、慢性(好酸球性)気道炎症の存在で診断可能となります。

慢性咳嗽を主訴に受診することが多く、喀痰中の好酸球増多と気道過敏性の存在する場合に咳喘息と診断することができます。このような特徴があり、長引く咳がみられた場合、早期に呼吸器内科などを受診されることが望まれます。

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