アメリカ・コロラド州の小児科神経外科医が先ごろ、新生児の脳腫瘍摘出手術を行った。摘出した腫瘍の中には、小さな足や、未発達のヒトの組織が入っていたという。
AP通信は18日、医師の話を引用し、次のように報じている。

「検査の結果、生後3日の男児の脳に腫瘍があることが確認された。10月3日に摘出手術をしたところ、腫瘍の中からほぼ完全な形をした小さな足と、未発達のヒトの手、足、ももの組織が発見された。まるで男児の頭の中から、もう1人の赤ちゃんが生まれるかのようだった。脳の腫瘍の中から人体の組織が出てくるなんて話は今まで聞いたことがない」。

医師は、通常腫瘍の中でヒトの手や足などの複雑な組織が形成されるはずはないとし、「胎児の体内で別の胎児が育つ奇形の一種だろう」と話している。男児は順調に回復しているとのことだ。
(生後3日の赤ちゃんの脳腫瘍から手足が出てきた)


小児脳腫瘍とは、15歳未満に発症する脳腫瘍を指します。頻度は人口10万人につき2人弱であり、これは成人を含めた全脳腫瘍の約15%に相当します。脳幹や小脳などに発生するテント下腫瘍が約6割を占め、神経膠腫の占める比率が成人の脳腫瘍に比して高いです。また、頭蓋正中に発生する腫瘍が多いため、脳室系を圧迫し水頭症を来すことが多いといわれています。

小児脳腫瘍の病理組織分類別の頻度は
\浦挧腫;astrocytoma(全小児脳腫瘍の20.0%)
⊃餡蠎陝medulloblastoma(17.0%)
F蓋咽頭腫;craniopharyngioma(11.4%)
ゆ細胞腫;germinoma(7.5%)
ゾ絨畆陝ependymoma(6.0%)
β新燥渦蠎陝glioblastoma multiforme(4.5%)
の順になっています。上位を占めるこれらの腫瘍のうち頭蓋咽頭腫以外は、すべて悪性腫瘍であり、頭蓋咽頭腫は先天性腫瘍です。成人と比較した場合に、小児では悪性腫瘍が多いのが特徴です。悪性腫瘍のうち髄芽腫、多形膠芽腫は特に悪性度が高いです。髄芽腫、胚細胞腫は放射線感受性が高い悪性腫瘍です。

さらに、「1歳未満に発症が認められる脳腫瘍」を先天性脳腫瘍と定義しています。先天性脳腫瘍であると診断される症例をA:確実、B:ほぼ確実、C:推定の3群に分類するとAでは奇形腫(teratoma)が最も多く(50%)、ABC全体では星細胞腫が最も多い(25%)といわれています。上記の例では、奇形腫なのではないか、と考えられます。

新生児・乳児では脳腫瘍の初発症状として最も多いのは、頭囲の拡大です。また、哺乳力低下・嘔吐・これらに起因する体重減少・痙攣発作もよくみられる症状です。新生児では、大泉門に触れることによって頭蓋内圧の高さを推定することができます。

小児は、成人のように自己の症状を的確に表現することはできず、神経学的検索も容易ではありませんが、共通した症状は「なんとなく元気がない」、「発育不良」などがあります。

検査としては、CT・MRI画像診断が重要となります。こうした脳腫瘍の確定診断が得られます。腫瘍の存在部位・大きさ・良性か悪性かの判別が可能となります。ただ、腫瘍の最終的な確定診断は、手術などにより得られた腫瘍組織の病理組織診断により行います。

治療としては、以下のようなものがあります。
原則的には、良性脳腫瘍は手術適応があり、積極的に腫瘍全摘出を行います。腫瘍全摘出術によって、術後に意識障害・神経欠落症状を生じさせないよう注意が必要となります。

悪性脳腫瘍の場合には、いずれにしても腫瘍のすべてを手術的に除去できるわけではないので、可及的に腫瘍を除去して病変縮小(mass reduction)を行い、残存腫瘍に対しては化学療法・放射線照射を行います。

ただ、現時点では決定的に有効な化学療法はなく、また小児脳に対する放射線照射によって内分泌機能障害・精神機能障害・身体および精神発育遅延に注意が必要となります。

また、小児の脳腫瘍で、特に脳室系に腫瘍が存在するときは、しばしば急性水頭症を起こす可能性もあります。その場合には、いきなり開頭術による腫瘍摘出術を行うのではなく、事前にシャント術を行い水頭症を解消した後に本格的な腫瘍摘出手術を行います。2つの手術は、通常1〜2週間の間隔をあけて行います。

化学療法が絶対的適応となるものとしては、髄芽腫/PNET、胚細胞腫があります。抗がん薬のうち髄芽腫/PNETにはシクロホスファミド、シスプラチン、が極めて有効であり、これにビンクリスチンが併用されることが多いです。

胚細胞腫に対する化学療法としては、頭蓋外胚細胞腫に対する化学療法(標準的にはシスプラチン、エトポシドなど)が有効であるとされています。低悪性度胚細胞腫(pure germinoma)にはシスプラチンとエトポシドが用いられ、中・高悪性度胚細胞腫にはそれらに加えてシクロホスファミドまたはイホスファミドが用いられます。良性星細胞腫にはカルボプラチンとエトポシドが用いられることが多いです。

放射線治療は、局所への照射のほか、播種を伴う例、髄芽腫/PNETでは播種がなくとも全脳・全脊髄への照射が必要となります。良性星細胞腫では、照射により後年に悪性化が誘導されることがあることが知られており、その適応には慎重である必要があります。その一方で、放射線照射は血管障害、精神運動発達遅滞、内分泌障害、低身長(成長ホルモン分泌低下、脊椎照射による)などの重大な後遺症をもたらしえます。

上記のケースでは、手術療法によって摘出が可能となっているようです。問題なく回復してくれれば、と期待されます。

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