転落事故で重傷を負い、大阪府立中河内救命救急センター(東大阪市西岩田、塩野茂所長、30床)に搬送された30代の男性患者に対し、同センターが誤った型の血液を輸血していたことが分かった。男性は輸血直後に死亡したが、同センターは「搬送時から重篤な状態で、ミスが死因ではない」としている。

同センターによると、男性は20日午前9時15分ごろ搬送された。医師がすぐに輸血をしたが、処置後の同日正午過ぎに出血性ショックで死亡した。男性の血液型はO型だが、輸血した約5170ミリリットルのうち約130ミリリットルはA型の血液だったことが死亡後に判明した。

血液パックには型別に色分けしたラベルが付いているが、管理担当の検査技師が取り違えて看護師に渡し、医師も間違いに気付かなかった。
(血液型を間違え搬送患者に)


血液型不適合輸血とは、同種血輸血において供血者と受血者の間で血液型が異なることを指します。血液型には多数の種類が発見されています。一般的にはABO型、Rh(D)型などがありますが、ほかにもキッド、ダッフィ、MNSs、ディエゴ、ケル、P、ルイスなどがあります。

通常問題となるのは、ABO式血液型不適合輸血、Rh式血液型不適合輸血が主たるものとなっています。ABO式血液型不適合輸血を行うと、血管内溶血が起こり、ショックとなり死亡する可能性もあります。播種性血管内凝固(DIC)による出血傾向や腎障害を起こし、血尿を呈することが多いです。死亡率としては、どの血液をどれくらいのスピードで輸血したかによって異なりますが、約10%とされています。

臨床的には、ABO式血液型不適合による赤血球輸血が最も問題となります。供血者赤血球上の抗原と、受血者血清中の抗体が結合し、補体を活性化して起こる血管内急性溶血反応が主な病態となりますが、各種メディエーターの活性化による免疫反応も関与しています。

症状としては、発熱や悪寒、悪心・嘔吐、頻脈、頻呼吸、呼吸困難、胸痛などのほか、高カリウム血症、ヘモグロビン尿、血圧低下、意識障害、けいれんなどを発症し、しばしば上記のようにショック、呼吸不全、DIC、急性腎不全などに移行してしまいます。

Rh型不適合輸血では、輸血直後には症状を起こさずに数日後に発症(遅発性溶血反応)したりしますが、網内系に取り込まれ溶血する血管外溶血が主体で一般に症状は軽いです。こちらは通常、特に治療する必要はないと考えられています。

血液型不適合輸血の起こりうる状況としては、外来などで緊急輸血をする場合や、緊急手術などの場合に、血液型判定の不完全、交差適合試験の不完全などから不適合輸血が行われる可能性があります。また、血液型の判定や交差適合試験が十分であっても、手違いなどから輸血バッグを間違い、不適合輸血となる可能性などがあります。

不適合輸血による反応は、ほんの数mlの血液でも起こりえます。そのため、細心の注意が必要となります。直ちに輸血を中止し、呼吸・循環の保持とともに、溶血して生じたヘモグロビンを排泄するため、輸液、ハプトグロビン、副腎皮質ホルモンの投与などを行う必要があります。

具体的な治療としては、以下のようなものがあります。
まず、呼吸循環の管理として、酸素投与、必要に応じ気管挿管を考慮します。血管透過性亢進と血管拡張による、相対的なhypovolemiaに対し、細胞外液製剤または5%アルブミン製剤を急速投与することもあります。場合によっては、カテコラミンやステロイド薬を用います。とくに、アナフィラキシー様症状を呈した場合は、ボスミンを1回0.2〜0.3mgで皮下注を行います。

また、溶血に対する腎保護と、溶血による高カリウム血症の治療を行うことも重要です。ハプトグロビン注を1回4,000単位、緩徐に点滴静注し、肉眼的褐色尿が消失するまで続けます。高カリウム血症に対しては、カルチコール注 1回20mL(1日1〜2回)静注や、メイロン注(7%)1回20〜100mL(1日1〜2回)静注、50%ブドウ糖液1回20mL+ヒューマリンR 注1回5単位静注などを行います。

DIC対策としては、ヘパリン注1日5,000〜10,000単位を持続静注したり、注射用エフオーワイ(蛋白分解酵素阻害薬)1日30mg/kg持続静注、アンスロビンP(乾燥濃縮人アンチトロンビン)注1日30単位/kg 緩徐に静注または点滴静注を行います。

上記のケースでは、血液型不適合輸血が状態悪化の問題にどれほど影響していたのかなどは分かりませんが、絶対にあってはならないミスであると考えられます。再発防止を徹底していただきたいと思われます。

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