読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
会社の検診で、左側の乳房の乳腺に「嚢胞」が一つ見つかりました。ピリピリした痛みがあります。手術が必要になるのか、乳がんとの関連があるのか心配です。(41歳女性)
この相談に対して、ちば県民保健予防財団総合健診センター診療部長の橋本秀行先生は、以下のようにお答えになっています。
乳腺にできる「嚢胞」は、母乳を運ぶ「乳管」が太くなって袋状になり、その中に液体の分泌物がたまった状態のことを言います。

「乳腺症」の一種で、30〜40歳代の女性に多く見られ、一つだけできることもあれば、左右にたくさんできることもあります。閉経を過ぎると、嚢胞が徐々に消えてなくなってしまうこともよくあります。

原因は、「エストロゲン」と「プロゲステロン」という二つの女性ホルモンの分泌のバランスが乱れ、相対的にプロゲステロンの分泌が過剰になるとできると考えられています。

生理的な変化の一種ですから、基本的には治療する必要はありません。手術したり入院して治療したりする必要もありません。また、がんになるのではと心配されているようですが、乳がんやそれ以外の病気との関連はありませんので、安心してください。
良性の乳房に発生する腫瘤としては、代表的なものとして線維腺腫と乳腺症があります。

線維腺腫とは、20〜30代の若い女性に多い良性腫瘍です。特徴としては、悪性腫瘍と比べて境界がはっきりしていて、硬くて丸くよく動いたり、女性ホルモンの作用を受けて、乳房の細胞が増殖し、月経前など胸が張った感じがすることがあるといった点が挙げられます。

触診すると、「小さなオハジキがある感じ」がするといわれています。エコーで調べて大きくなっている場合では、手術的によって摘出することもあります。

一方、乳腺症は、乳腺疾患の中で中年婦人に最も多くみられ、腫瘤を形成する疾患です。症状としては腫瘤、硬結ができるのが主で、軽い疼痛を伴うことがあり、月経周期によって大きくなったり小さくなったり、自然に消えてしまうこともあります。

月経周期の特定の時期に、乳房が張ったり敏感になったりするのも、ホルモンの濃度の変動が一因といわれています。このようなホルモンによる刺激が繰り返されることにより、線維性・嚢胞性の変化が起こることがあります。

組織学的構成像として上皮成分の側には、乳管過形成や乳管乳頭腫、小葉過形成があります。腺症として閉塞性腺症や硬化性腺症、嚢胞、アポクリン化生があります。間質成分の側には、線維症があります。さらに限局性増殖が上皮成分と結合織に起こる線維腺腫性過形成などがあります。

一般的には経過観察を行いますが、ひどい痛みが5〜6ヶ月ほど続くようなケースについては治療が必要となります。その際、鎮痛薬や坑エストロゲン薬などを投与します。

症状としては、
乳房の腫脹・疼痛(自発痛・圧痛):疼痛は周期性であり、月経前にみられることが多い。
硬結・腫瘤:周囲組織との境界が不明瞭な硬結を認める。硬結に一致して疼痛を伴うこともある。
乳頭異常分泌:分泌物の性状はさまざまであり、血性・漿液性・水様・乳汁様と多彩。分泌乳管孔も1本であったり数本であったり、両側性のこともある。
必要な対処としては、以下のようなものがあります。
ピリピリした痛みがあるということですが、嚢胞は大きくなると、腫れ上がった感じがしたり、痛みが生じたりする場合があります。あまりにも症状が強くつらいのであれば、嚢胞に針を刺して中の液体を抜くことがあります。

最近は、乳がん検診にマンモグラフィや超音波(エコー)検査といった画像診断を使った検診が普及し、胸を触ってもわからないような小さいしこりも発見できるようになりました。

定期的に乳がん検診を受け、医師と相談しながら様子を見ていただければいいと思います。
画像診断の目的としては、乳腺症を診断することではなく癌の所見が無いことを確認することが主体となります。

マンモグラフィーでは、辺縁不鮮明なびまん性の淡いすりガラス様陰影を呈する高濃度の乳腺を示します。超音波検査では乳腺が腫大し、実質は広範囲な不均一エコー像で、小斑状の低エコー域が散在している像(豹紋状を呈する)がみられます。また、大小の嚢胞が混在する像を呈することもあります。

こうした検査により、大部分は乳癌でないことが分かると症状が軽快する傾向にあります。軟らかい下着や非ステロイド系の消炎鎮痛薬で軽快することもあります。上記のように痛みが嚢胞に起因するものであれば、吸引が効果的です。

乳腺症があるなしに限らず、乳がん検診は非常に重要です。癌の早期発見・早期治療のため、検診を受けるようにしてください。

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