首都圏の女子大生(20)は、両ほおに赤く腫れたニキビが20個以上できて悩んでいた。抗菌薬の塗り薬や内服薬を使うと赤い腫れは治まったが、別の場所にできる新たなニキビは防げないでいた。昨年10月、新しく認可された塗り薬「ディフェリン」(一般名アダパレン)を使い始めたところ、ニキビはほとんどできなくなり、今では抗菌薬も使わずに済むようになった。

ニキビは「青春のシンボル」と呼ばれるように、13歳前後からでき始め、高校生の頃に最も悪化し、9割以上の人が経験する。思春期を迎えると、男女とも男性ホルモンの働きが活発になり、皮脂の分泌が盛んになる。毛穴の周囲の皮膚が固くなって詰まり、皮脂がたまると、皮膚の常在菌であるアクネ菌が皮脂を栄養源にして異常に増える。この状態が、赤いニキビの炎症を引き起こす。

従来治療に用いられてきた抗菌薬は、アクネ菌を殺すことで、ニキビの炎症を抑える効果がある。これに対し、ディフェリンは、ニキビのできる初期段階において、毛穴が固くなるのを抑え、皮脂がたまるのを防ぐ働きがある。医師が処方する医療用の医薬品として、昨年10月に発売された。

12〜35歳の男女約100人を対象にした3か月間の臨床試験では、ディフェリンを塗った患者ではニキビの数が平均で約64%減少したのに対し、有効成分を含まない軟こうを塗った場合には40%の減少にとどまり、ニキビを抑える効果がみられた。

一方、ディフェリンを使った8割以上の人に、皮膚の乾燥やかゆみなどの副作用がみられた。多くは薬の使用開始直後に起こる。1~2週間で軽快するが、販売するガルデルマ社は「保湿剤と併用するなど、皮膚科の専門医の指導の下に使用してほしい」と注意を呼びかけている。

新薬の登場に合わせ、日本皮膚科学会は昨年9月、初めてのニキビ治療ガイドラインを策定した。ニキビのでき始めにはディフェリンを使い、軽症から中等症にはディフェリンと抗菌薬の塗り薬を併用、中等症から重症のニキビに対してはディフェリンと抗菌薬の飲み薬との併用を薦めている。

治療の基本は皮膚を清潔に保つことで、1日2回の洗顔のほか、化粧をする場合には刺激の少ないものを使うことを推奨している。食べ物は「ニキビの悪化との関係を示すデータはない」として特に制限はない。

臨床試験の中心となった東京女子医大皮膚科教授の川島眞(まこと)さんは、「症状が軽いうちに、皮膚科で治療を受けてほしい」と話す。

ディフェリンは就寝前に1日1回、洗顔をした後に塗る。保険が利き、約2週間分の15グラム入りチューブ1本の薬代は約530円(3割負担)だ。
(ニキビ抑える新薬)


にきび(ざ瘡)とは、思春期男女の顔・胸背部の脂漏部位で毛包に一致して丘疹、膿疱、面皰が混在する炎症性疾患です。

原因としては、アンドロゲンによる皮脂分泌亢進と、毛漏斗部の角化障害がある所に機械的刺激(毛髪の接触、化粧など)が加わって、角栓形成、皮脂の蓄積、Propionibacterium acnes(アクネ桿菌)の増殖で炎症が引き起こされると言われています。

そもそもアンドロゲンによる皮脂分泌亢進が、なぜニキビ(ざ瘡)増殖に関係しているのかというと、アクネ桿菌が皮脂を栄養源としているからです。そのため、アンドロゲンはアクネ桿菌を増殖させることになり、ざ瘡の発症に密接に関与します。

また、従来から遊離脂肪酸刺激説が支持されています。アクネ桿菌のリパーゼ作用により、皮脂成分のトリグリセリドから産生された遊離脂肪酸が、毛漏斗部上皮を刺激して過角化を引き起こすといわれています。さらに、最近ではアクネ桿菌自身が、毛包上皮の破壊や炎症の惹起に重要な役割を果たしていると考えられています。

また、にきび(ざ瘡)は月経前やストレスで悪化し、薬剤性(ステロイド薬など)、職業性(機械油)など特殊型もあります。

通常、微小面皰から閉鎖面皰ができ、それが開放面皰、あるいは炎症性面皰である赤い丘疹,膿疱へと移行します。痒みは、通常みられません。

面皰には、開放面皰と閉鎖面皰があります。開放面皰は毛孔が開口し、そこに黒褐色の点状物がみられます(黒にきび)。閉鎖面皰は肉眼的に毛孔は開口せず、皮膚内に黄白色の小結節として認められます(白にきび)。

治療としては、以下のようなものがあります。
まず、日常の生活指導が重要となります。規則正しい生活や朝・夕の洗顔、油性化粧品の禁止、外的刺激やストレスの回避などが必要となります。

洗顔では、皮脂を除去し、毛孔部を清潔にします。ニュートロジーナA石鹸など、脱脂作用の強いもので1日2回程度洗顔します。また、ざ瘡の発症、増悪にかかわると確実に証明された食品はありませんが、一般的にチョコレートなどは控えさせたほうが良いと言われています。

皮疹の重症度や治療歴などを考えて治療を選択していきます。瘢痕の予防が基本となり、軽症では外用剤(綿棒を用い、患部にのみ塗布)、炎症の強いときは抗菌薬の内服を併用します。

軽症であればダラシンTゲルや、アクアチムクリーム、またはローションを使ったり、中−重症では、ミノマイシン錠(50mg)、ルリッド錠(150mg)内服を行ったりします。さらに、難治例ではサリチル酸やグリコール酸によるケミカルピーリング(保険適用外)が有効であるといわれています。

ディフェリン(アダパレン)が、ニキビで悩んでいらっしゃる方の悩みを解消してくれれば、と望まれます。この薬剤が周知され、一般的に使用されるようになれば、と思います。

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