米バイオ企業のジェロン社(カリフォルニア州)は23日、人体のどんな細胞にも成長する胚性幹細胞(ES細胞)を、脊髄損傷で下半身不随となった患者に移植して治療する世界初の臨床試験を夏にも実施すると発表した。米食品医薬品局(FDA)の許可も得たとしている。AP通信が報じた。

ES細胞は受精卵を壊して作製するため、倫理に反するとしてブッシュ前米大統領が2001年に研究費への政府の助成を禁止したが、ジェロン社はES細胞を初めて開発したウィスコンシン大などと提携してこれまでに1億ドル(約88億円)以上をつぎ込み研究を続けていた。

ES細胞はさまざまな細胞になるため、脊髄損傷やパーキンソン病、糖尿病など、機能を失った細胞を補う再生医療への応用に期待が高まっている。
(ES細胞で初の治療実施へ 脊髄損傷患者に)


脊髄に損傷が起こると、その障害された部位により、神経症状が現れることになります。中〜下位頸髄損傷では四肢麻痺、胸腰髄損傷では対麻痺などの症状が現れます。上位頸髄損傷では、四肢麻痺に呼吸麻痺を伴います。

いずれの場合にも膀胱直腸障害(膀胱・直腸に機能障害が起こり、排尿障害とともに排便障害が生じる)を伴うことになります。仙髄末端(脊髄円錐部損傷)の脊髄損傷では、馬尾が損傷を免れ、下肢麻痺がなく膀胱直腸障害が主症状である脊髄円錐症候群を呈することもあります。

脊髄損傷の多くは過大な外力により発生する脊椎の脱臼や骨折に伴います。ただし、頸椎の場合、頸椎症や脊柱靭帯骨化症などによる脊柱管狭窄があると、転倒などの軽微な外傷により、明らかな骨傷を伴わない頸髄損傷(いわゆる骨傷のない頸髄損傷)が生じることもあります。国内では、年間約5,000人の脊髄損傷患者が発生しているそうです。

脊髄損傷と診断した場合、損傷高位(どの部位が障害されているか)と、完全麻痺か不全麻痺かを診察する必要があります。麻痺のある部分の高さ(高位)は、各関節の運動を支配する髄節と皮膚知覚障害領域から診断し、残存髄節の下限をもって表現します。

麻痺の程度を把握することも重要となり、完全麻痺と不全麻痺に分類され、麻痺の程度の評価は一般にFrankel分類を用いているようです。完全麻痺かどうかの診断は重要で、必ず会陰部知覚や肛門括約筋機能の残存の有無を評価する必要もあります。損傷高位以下の自動運動・知覚の温存、会陰部の知覚、肛門括約筋の随意収縮は不全麻痺の徴候であり、機能改善が期待できます。

治療としては、以下のようなものがあります。
脊椎が損傷されている場合、患者さんの不用意な取り扱いは脊髄の損傷を拡大させてしまいます。頸椎は中間位で、硬性のカラーを装着します。患者さんの搬送には、バックボードが推奨されています。

そして、何よりもまず気道の確保と呼吸の安定が優先されます。上位頸髄損傷では横隔神経が麻痺し無呼吸となり、それより下位の損傷でも肋間筋や腹筋の麻痺のため、自発呼吸が十分でなく換気不全が起こりえます。そのため、気管挿管下に人工呼吸を要します。ただし、処置にあたっては頸部を動かさぬよう注意する必要があります。

循環にも気を配る必要があり、特に第6胸髄高位より頭側の脊髄損傷では副交感神経優位の状態となり、徐脈と末梢血管拡張による低血圧が生じる可能性があります。出血性ショックを除外しつつ、輸液およびドーパミンなどの投与を要します。

また、脊髄損傷では腹痛などの訴えがないために、腹部臓器損傷の診断が遅れることがあり注意を要します。特にストレスや以下のようなステロイド薬投与による胃十二指腸潰瘍・穿孔などの可能性も起こりうることもあります。

損傷脊髄自体に対する治療としては、メチルプレドニゾロン(ソル・メドロール)の大量療法(MPSS)があります。受傷後8時間以内に30mg/kgを15分間で静注、45分間休薬後、5.4mg/kg/時を23時間持続静注します。

ただ、MPSSは劇的な効果は望めず、感染や消化管出血などの合併症があるため、糖尿病患者や汚染創を伴った患者さんでは投与を慎重に考慮する必要があります。

上記のような再生医療が実用化されれば、多くの人たちの生活の質は、劇的に変わる可能性もあります。ぜひとも研究を進めていただきたいと思われます。

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