年明け早々、内視鏡検査で大腸にポリープが見つかり、その場で切除手術を受けました。会社の生活習慣病検診の便潜血検査で陽性となり、その後の大腸エックス線検査でも隆起性病変の疑いがあったので、当然の結果なのでしょうが、とてもショックでした。

検査は、もっとも柔らかい内視鏡を用いて空気を入れずにほぼ一直線に大腸の一番奥まで到達させる方法だったため、無痛でした。

この挿入法を推進する、「ららぽーと横浜クリニック」の大西達也院長によると、便潜血検査で陽性とされながら、40〜50パーセントの人は放置するそうです。さらにこの検査は感度が低く、早期がんの50パーセント、進行がんの20パーセントは見落とすというのです。

ほとんどのポリープは良性ですが、放置すると70パーセントががん化するといいます。大腸がんは進行が遅く自覚症状が出にくいため、気づいたときには進行がんになっていたというケースも少なくありません。

その証拠に、国立がんセンターの統計では平成17年のがん死亡者のうち、大腸がんは女性では1位、男性では4位です。大西院長は「がんがあっても無症状、検診にもひっかからない。だからこそ予防のために内視鏡検査が必要」と話します。
(【Re:社会部】予防は最大の治療)


大腸ポリープとは、大腸粘膜の限局性の隆起性病変を漠然と指しています。あくまで、肉眼的な限局性隆起の総称です(内腔への限局性突出物をさす形態学的用語であり、病理学的組成を表すものではない)。組織学的な性状を規定しないため、良性(腺腫、過形成性ポリープ、若年性ポリープ、炎症性ポリープなど)であったり、悪性(癌腫、悪性リンパ腫など)の場合もあります。

よって、良性も悪性も存在することになりますが、悪性と判明した時点で、それらは癌、肉腫(悪性リンパ腫も含む)に分類され、ポリープから除外されます。

また、良性非上皮性の場合は粘膜下腫瘍と称されるので、結局、良性上皮性突出物をさすことになります。ただ、それでも腫瘍性、炎症性、過誤腫性、過形成性、その他に分かれ、腫瘍性では腺腫の中に癌巣が見つかることが少なくないです。一般的には、ほとんどが良性疾患を指して用いられることが多いようです。年齢とともに腫瘍性ポリープの発生頻度は増し、40歳以上では約15〜20%といわれます。

ポリープが発見されたときの診断手順として、内視鏡や生検組織所見などから腫瘍性か非腫瘍性か、良性か悪性かを診断します。そして、次に内視鏡治療が技術的に可能かどうか、根治可能か否かを診断します。

一般に大腸ポリープに特徴的な症状はなく、腹痛や便通異常などの他疾病に伴う症状や、検診などを契機にX線検査や大腸内視鏡検査を行って発見されることが多いです。ポリープから出血することもありますが、大量出血や黒色便をきたすことは稀です。

大腸ポリープのうち腫瘍性ポリープである腺腫は、悪性化ないし癌合併の頻度が高いため、原則として治療する必要があります。また、非腫瘍性ポリープは悪性化しませんが、癌化ないし癌合併することがあり、大きくなると出血したり腸重積を起こす可能性があるため、治療の適応となることがあります。

一般的にポリープの大きさが増すと、腺腫の一部に癌を伴った腺腫内癌や、大部分が癌で一部に腺腫を伴う癌が認められるようになります。腺腫の一部に癌を合併する頻度は、絨毛腺腫で80%、腺管腺腫で10%程度といわれ、癌化傾向があると考えられています。

大きさ別には、1cm 以下では1%前後ですが、1〜2cmでは約10%、2cm以上では40%以上の癌の合併率が報告されています。

治療としては、以下のようなものです。
基本的には、内視鏡的ポリペクトミーを行います。内視鏡的ポリペクトミーが困難な例に対しては、外科的治療が行われることもあります。重要なのはやはり、良・悪性の判断です。

ポリープと診断しえても、それがどのような組織構成であるかによって生物学的悪性度が異なることから、形態・大きさ・表面性状に留意します。内視鏡的に得られた腺管開口部の形状から、規則正しい配列の正円形、やや不揃いでも星芒状の開口部は非腫瘍性であると考えられます。

さらに、腫瘍の場合は、密集した長円形、脳回溝状の開口部は良性であることが多く、粗な小円形の場合は悪性であることが多いです。腺管開口部の欠失が明らかであれば浸潤癌であり、ポリープの範疇から外れてきます。

腺腫であっても直径5mm以下であれば、非腫瘍と同様に3〜4年ごとの経過観察でよく、急激に増大したり1cmを超すものはそのつど摘除することになります。組織学的裏付けのため生検を行いますが、腺腫の一部に癌が存在する(腺腫内癌)場合には癌を証明できないこともあります。診断と治療を兼ねて、内視鏡的摘除を行うことが多いです。

一般に直径4cmを超えるポリープ、太い茎のポリープ、広基性のポリープ、半周性以上であったり、虫垂口や憩室にかかる顆粒集簇SGM型のポリープなどは、内視鏡治療の限界を超えています。こうした場合、腹腔鏡手術や開腹術が必要となります。

確かに体の負担は少なくなく、合併症の可能性もありますが、機会があれば検査を行うことは重要であると考えられます。

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