毎日新聞のこころとからだの相談室に、以下のような相談が寄せられていました。
現在アトピーで苦しんでいます。特に顔がすごく、目の周りが腫れ、あごや口周りも腫れ、傷ができ痛みが酷いです。皮膚科からもらった薬を塗っていますが、痛みも消えず、ひどくなる一方で治る気配はありません。どうしたらよいでしょうか?(23歳、女性)
この質問に対して、東京慈恵会医科大学皮膚科教室教授である中川秀己先生は、以下のようにお答えなさっています。
顔面のアトピー性皮膚炎がひどく塗り薬を塗っても良くならないとのことですが、いくつか原因が考えられます。

まず塗り薬が症状に合ったものでないためアトピー性皮膚炎がコントロールできず悪化しているか、塗り薬の成分でかぶれを引き起こして症状が悪化しているかで、痒みのため引っ掻き、傷ができ痛みを生じている場合。この場合には塗り薬の変更を含めた治療の見直しが必要になります。また、かぶれの成分がなんであるかを検査することも場合によっては必要です。

次に、症状がひどいため、皮膚に細菌(黄色ブドウ球菌、溶血性レンサ球菌)やウイルス(単純ヘルペス)の感染症を合併している場合です。感染症を合併していれば、まず内服薬を使用してから、次にアトピー性皮膚炎を適切な塗り薬で良くすることになります。皮膚が膿んでジュクジュクしていたり、痛みのある小さな水疱がたくさんできているのならば、すぐに皮膚科専門医を受診して治療を開始しなければなりません。
アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返すそう痒のある湿疹病変を主体とする疾患であるといえます。患者さんの多くは、アトピー素因をもつといわれています。

ありふれた外界抗原に対する儀織▲譽襯ー反応が皮膚に起こり、慢性・再発性の掻痒を伴う湿疹が起こると考えられています(乳幼児期においては食物が抗原となることが多く、それ以後ではダニや花粉が抗原となることが多い)。

乳幼児の疾患であり学童期には自然軽快するものとされていましたが、最近では思春期や成人に至っても治癒しない慢性難治例が増加しているといわれています(ピークは小児期と思春期の2つ)。全体の患者数も増加し、罹患率は全人口の約5%にのぼるといわれます。

症状としては、激しい掻痒を伴う湿疹が特徴です。頭部、顔面、体幹、および四肢のうち、特に肘・膝の屈側部などに出現します。

また、下眼瞼の皺襞形成〔Dennie-Morgan(デニー・モルガン)徴候〕や眉毛部外側の脱毛〔Hertoghe(ヘルトゲ)徴候〕などもみられます。ちなみに皮膚症状は、年齢により変化します。

乳幼児期では、顔面,頭部に紅斑や丘疹が出現し、次第に全身に拡大します。この時期では湿潤傾向が強いです。小児期では、皮膚は次第に乾燥性となり、苔癬化局面がみられます。思春期・成人期では、皮膚はさらに乾燥化し、角化性丘疹、落屑、肥厚、苔癬化も著明となります。

治療としては、以下のようなものがあります。
顔面のアトピー性皮膚炎治療には現在、タクロリムス軟膏(プロトピック)が主に使われています。ただし、プロトピックは傷があると使い始めに刺激感(ほてり、ひりひり感、痒みなど)を生じ、薬を塗れないこともありますので、傷がある場合には短期間(3〜4日)症状に応じたステロイド外用薬を塗り、症状を良くしてからプロトピックの使用を開始します。

一般には塗り薬を使う時には、痒みを軽くする抗ヒスタミン薬の内服を一緒に行います。また、顔面のアトピー性皮膚炎が生じる原因を医師とともに考えて、可能な範囲で避けることも大切です。洗顔や洗髪の方法や現在使用している石鹸、シャンプーなどを見直すことが必要な場合もあります。

若い女性で顔面のアトピー性皮膚炎がひどいと気分が沈み、日常生活にもかなりの障害があると思います。ただ、きちんとした治療を選べば、今の状態を良くすることができますし、良くなった後もその状態を維持することもできます。そのためには、今の症状をきちんと判断して、適切な治療法を選んでくれる信頼できる皮膚科専門医を受診することが大切です。
基本的には、対症療法が中心となります。ですが、多くの症例では加齢とともに自然寛解も期待されます。

症状がない、あるいはあっても軽微であり、日常生活に支障はなく薬物療法もあまり必要としません。あるいは、軽微ないし軽度の症状が持続するも急に悪化することは稀で、悪化しても遅延することはないという状態を保つことが治療の目標となります。

治療の中心は、外用療法です。ステロイド外用剤は、ランクでストロンゲスト、ベリーストロング、ストロング、ミディアム、ウィーク(強い順)に分類されます。これらを個々の皮疹の重症度に応じて適宜使い分けます。

重症の皮疹には強いステロイド外用剤が必要となります。一方、軽症の皮疹にはミディアムクラス以下のステロイド薬が基本となります。海外で数千例を対象とした全身へのタクロリムス軟膏0.1%(プロトピック軟膏)単独の治験では、アトピー性皮膚炎に非常に有用であるといわれています。また、濃度を低くした小児用プロトピック軟膏0.03%が国内でも使用可能となっています。

ほかにも、抗ヒスタミン薬の内服が適応となります。というのは、アトピー性皮膚炎では、そう痒が強く掻破により皮疹が増悪することが多いためです。

上記のように、皮膚科専門医を受診した上で、適切な治療を行うことが必要となります。下手に自己判断したり自己流の治療を行うべきではなく、しっかりとしたアドバイスを受けることが望まれます。

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