(前回のつづき)毎日.jpの名医に聞く治療の最前線に、加齢黄斑変性の治療について掲載されていました。回答なさっていたのは、駿河台日本大学病院眼科助教の松本容子先生です。
脈絡膜新生血管が作られるには、さまざまな因子が必要です。その中の1つが「VEGF」(血管内皮増殖因子)です。昨年末から使われるようになったペガプタニブ(商品名マクジェン)は、このVEGFの働きを阻害して、脈絡膜新生血管ができるのを防ぎます。

使い方は、ごく簡単。松本さんによると「目の表面に麻酔をして、その後、眼球に注射針を刺して眼の中に薬を注入します」。麻酔といっても目薬です。目に注射針を刺すなんて恐ろしい、と思うかもしれませんが、実際には「麻酔もしているし、針が細いので、いつ注射したか分からないほど」だそうです。今のところ6週おきによくなるまで治療を続けます。光線力学的治療は初めて行う時には2泊3日の入院が必要ですが、こちらは注射なので短時間で、しかも通院でできるのも魅力です。

「血管新生抑制剤は、脈絡膜新生血管の大きさ、形、視力に関係なく治療できるのが利点です」と松本さんは語っています。つまり、これまで光線力学的治療ができなかった人にも治療ができるようになりました。

すでに海外では5年ほど前から使われており、安全性は確認されていますが、「眼球に注射針で微小な穴があくので、治療後は菌が入らないように抗生物質の目薬をさし、眼を不潔にしないように注意することが大事です」と松本さん。菌が入ると、眼内炎を起こして失明する危険もあるからです。

血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor;VEGF)とは、強力な腫瘍血管新生因子であるといわれています。VEGFはその受容体が血管内皮細胞表面に特異的に存在していて、多種の腫瘍細胞で発現しているので、最も重要な血管新生因子と考えられています。その発現程度は、腫瘍組織内微小血管密度と正の相関を示すといわれています。

このVEGFが、滲出型加齢黄斑変性でも発現しており、脈絡膜新生血管を増生するには必要となっていると考えられます。このVEGFを抑えることで、破れやすい新生血管を作らせまい、とするのが血管新生抑制剤です。

では、その治療効果はどのようなものだったのかというと、以下のようなものだったそうです。
では、肝心の治療効果はどうなのでしょうか。日本では、まだ使いはじめたばかりですが、松本さんによると、「光線力学的療法とマクジェンの治療効果を直接比較した報告はありませんが、光線力学的療法が行えないような視力が良好な時期にも治療が行えるという利点があります。

また、病巣が小さい時期に治療を行うとほぼ全例で薬の効果がでて、視力が一段階以上改善するという報告があります。アメリカでは、適切に治療を続けると4年間にわたって視力を維持したり、視力低下を遅らせる効果があったそうです。
また、同様の薬剤で新たに認可されると期待される薬剤が、ラニビズマブ(商品名・ルセンティス)という血管新生抑制薬です。
ラニビズマブ(商品名・ルセンティス)は、ペガプタニブと同じように、眼内に注射をする薬剤で、視力が良い人にも使うことができます。

すでに海外では治療に使われていて、95%近い人に効果があったと報告されています。それも、約25%で視力が良くなったとの報告もあります。「これまでの治療は、光線力学的治療も含めて、視力がそれ以上悪くなるのを防ぐのが主な目的でした。しかし、ラニビズマブは低下した視力を回復させる効果が高いと期待されているのです」と松本さん。

ラニビズマブは4週間に1回ずつ3回の治療が基本です。臨床試験では、3回目の治療が終わった時点で視力がグッと良くなり、毎月治療を継続しているとその状態が維持されるという結果が出ています。

VEGFにもいくつか種類があるのですが、ペガプタニブが抑えるのはその中の1種類だけです。これに対して、ラニビズマブはすべてのVEGFの働きを抑えます。2つの薬の効果の違いは、この差ではないかと言われています。
こうした効果の違いもあり、治療法の選択性の幅もでてきました。気になる副作用については、
しかし、血管新生に働くVEGFの作用をすべて抑えても、大丈夫なのでしょうか。「今のところ健康な方への治療では全身的な副作用は少なく、比較的安全に治療が行えます。しかし、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高い人は、理論的にはペガプタニブのほうがより安全であると言われています。現時点で分かっていない副作用もあるかもしれませんので、今後、長期間にわたって副作用についての観察が必要です。」と松本さん。

いずれにしても、全く新しい作用で加齢黄斑変性を治療する薬なので、詳細はこれからという段階です。

「これからは、どういう患者さんにどういう治療が適するのか、治療法の選択を考える時代です」と松本さん。光線力学的治療との併用も候補の1つ。実際に併用した方が光線力学的治療の回数が少なくてすむという結果も出ているそうです。
新たな治療法が開発され、失明の危機から脱することを期待して治療に臨むことも絵空事ではない、という流れになってきたのではないでしょうか。ただ、まだ発展途上、長期の副作用の問題などに関するデータが出そろった段階ではありません。しっかりと副作用の出現に留意して治療に臨む必要がありそうです(了)。

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