以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

S・Kさん(65)の冬場の楽しみは、晩酌と就寝前の長風呂。最近受けた健康診断で、悪玉コレステロールの値がやや高いという結果が出ましたが、若い頃から病気知らずのため、健康には絶大な自信を持っていました。

そんなある日、いつもの様に晩酌の後、たっぷり30分かけて風呂に入って上がったところ、軽いめまいに襲われました。それはほんの数秒のことで、ちょっと飲み過ぎたくらいに思っていましたが、その後も気になる異変が続いたのです。
1)手のしびれ
42度のお湯に30分浸かり、お風呂から出ようとした時、左手に痺れを感じました。ですが、痺れはほんの数秒で消えました。
2)めまい
左手に痺れを覚えて1分後、お風呂から上がり涼しさにホッと一息ついていた時、立っていられない強いめまいを感じました。
3)左半身が動かない
起き上がろうとしますが、左半身が動きません。

こうした状態になり、救急車で運ばれることになったS・Kさん。検査の結果、脳梗塞と診断されました。

脳梗塞とは、脳動脈閉塞などによる虚血により、脳組織が不可逆的な変化(壊死)を起こした状態を指します。簡単に言ってしまえば、脳の血管が詰まり、血液の届かなくなった組織が壊死してしまう疾患です。

ちなみに、脳血流量が正常の30%以下になると、その部位の機能は傷害され(不完全梗塞)、10〜20%以下になると組織学的に不可逆性の変化(梗塞)が生じるといわれています。

梗塞が起こる成因は、以下のように分類されます。
.▲謄蹇璽犒貔鮴脳梗塞
動脈硬化性の病変(アテローム)が大きくなり、その部分に血栓を形成し動脈閉塞を来したり、動脈硬化性病変部分で形成された血栓やアテロームの一部が、剥離してその動脈の末梢部分を閉塞したりといったことが考えられる。ほかに、血圧低下などを起こした際に、その動脈硬化部分より遠位部の血流障害を来す場合などがある。
⊃憾鏡脳塞栓
心疾患において心腔内に形成された血栓が脳動脈に達し、脳動脈の急性の閉塞を来すものである。
ラクナ梗塞
脳深部の穿通枝動脈の閉塞によって生じるもので、一般に脳細小動脈硬化が原因と考えられている。
S・Kさんの場合、経過からアテローム血栓性脳梗塞が原因であると考えられます。

S・Kさんの場合、65歳という年齢も手伝って、血管は軽い動脈硬化になっていました。さらに悪玉コレステロール値も高めと指摘されていました。さらに、あの「長風呂」と「お湯の温度」に脳梗塞発症の原因があったと考えられます。

熱いお風呂に長時間入っていると、私たちの体内で「深部体温」が急上昇します。「深部体温」とは、脇の下など皮膚の表面ではなく、内臓など身体の内部の温度のことで、健康状態をチェックする指標となる重要な体温です。

まずは「長風呂」についてですが、番組中で紹介されていた研究データによると、41度のお湯に30分浸かると、通常37度の深部体温が39度にまで上昇するという結果が出ています。この39度という深部体温こそ、実は真夏の炎天下で重度の熱中症になっているのと同様な状態です。

次に、「お湯の温度」についてですが、左半身が動かなくなった日は、いつもより1度高い42度に設定したS・Kさん。この1度が、決定的な事態を招いてしまった可能性があります。

番組中では、42度のお湯に入っていると、ある物質が血管内に放出されるという実験結果が発表されたと示されていました。その物質の名は、『PAI』と呼ばれるものだそうです。

PAIとは、plasminogen activator inhibitorのことであり、プラスミノゲンアクチベーターの活性を中和することで、線溶活性化反応を制御する線溶阻害因子です。簡単に言ってしまえば、血管壁の中に存在する細胞物質であり、出血すると、血液中に大量に放出され、血小板を刺激し結合しやすくさせる機能をもつものです。

本来は止血のための物質なのですが、42度以上のお湯に浸かっていると、体表近くの毛細血管が刺激を受け、出血したときと同様、大量のPAIが血管内に出てしまうそうです。

こうした原因により、脳梗塞発症が起こったと考えられます。脳梗塞による症状としては、以下のようなものがあります。
壊死した領域の巣症状(その領域の脳機能が失われたことによる症状)で発症するため症例によって多彩な症状を示します。

代表的な症状としては、麻痺(運動障害)、感覚障害、失調(小脳または脳幹の梗塞で出現し、巧緻運動や歩行、発話、平衡感覚の障害が出現)、意識障害(脳幹の覚醒系が障害や広汎な大脳障害で出現)がおこることもあります。多い症状は片麻痺、半身の感覚障害、構音障害、失語、半側空間無視などがあります。

片麻痺とは、運動の障害の一種であり、もっとも頻度の高い症状が麻痺です。脳梗塞では中大脳動脈の閉塞によって前頭葉の運動中枢が壊死するか、脳幹の梗塞で錐体路が壊死するかで発症することが多いようです。

多くの場合は、片方の上肢・下肢・顔面が脱力または筋力低下におちいる片麻痺の形です。ただ、脳幹梗塞では顔面と四肢で麻痺側が異なる交代性麻痺を来すこともあります。

具体的な部位としては、一側の内包(皮質下から大脳皮質への入力線維と、大脳皮質から皮質下への出力線維が走る部分)、特にその後部は梗塞や出血で障害を受けやすく、ここが障害されることで反対側の手や足、体幹、下部顔面、舌などが侵されることがありますが、これを内包型片麻痺といいます。

内包以外でも、大脳皮質運動野、皮質下白質、大脳脚、橋底部、延髄腹側、などが障害されることで片麻痺が出現することがあります。閉塞血管としては、前大脳動脈(下肢に強い片麻痺)、中大脳動脈、椎骨・脳底動脈などの閉塞によって起こります。

冬はついつい熱いお湯で長風呂してしまいがちですが、お気を付け下さい。また、入浴前後の水分摂取を心がけてください。

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