以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

山形県に住む主婦T・Mさん(60)が腰痛を感じ始めたのは、今から20年前。念願のマイホームを購入し、ローン返済の足しになればとスーパーでパートを始めた頃、前屈みで仕事をしていると、時々腰がじわじわ痛むようになりました。

それから10年後、50歳を過ぎた頃には、腰痛は前にも増してひどく慢性的なものになり、その3年後に子宮筋腫の手術をして以来、症状はひどくなるばかりでした。具体的な症状としては、以下のようなものがありました。
1)腰がじわじわ痛む
仕事中、重い荷物を運んだときなど、腰がジワジワと痛みました。腰痛があったときは、湿布を貼って対処をしていました。
2)慢性的な腰痛に
日常的に家事をしているときでも腰痛を感じるようになり、旦那さんにマッサージをしてもらうことで解消していました。
3)腰から右足に鋭い痛み
子宮筋腫の手術のため、入院していたとき、術後しばらくたって立ち上がろうとしたところ、ひどい腰痛が起こり、腰から右足に鋭い痛みを感じました。

このような症状がみられるようになり、腰部のMRIを撮影しました。すると、軽度の椎間板ヘルニアがみられ、それが原因で腰痛が起こっているのではないか、と診断されました。

ですが、その腰痛の症状はひどくなるばかり。軽度の椎間板ヘルニアでは説明できないような痛みであり、いくつかの有名な整形外科を受診しましたが、はっきりとした原因は分かりませんでした。

入院中の腰痛がみられてから2年間、寝たきりのような状態になってしまったT・Mさん。そこに、知人が「福島県立医科大学附属病院で、痛みを除く効果的な治療を行っている」と情報を教えてくれました。

藁にもすがるような思いで、福島県立医科大学附属病院の整形外科を受診したところ、T・Mさんに告げられた診断名は、「非特異的腰痛」でした。

そもそも、腰痛とは、背中から殿部付近までである腰部に、痛みを訴える状態を指します。患者さんは、「腰が痛い」「背中が重だるい」などと訴えます。整形外科外来患者のなかでは、腰痛を訴える患者さんは30〜40%程度であるといわれ、腰痛を訴える人はかなり多いと考えられます。

腰痛は症状名であって、病態や疾患の名称ではありません(腰痛はさまざまな疾患で引き起こされる)。そのため、まずは他臓器や他科疾患の除外が重要となります。ただ、その原因をはっきりと特定することが難しいことも少なくありません。

そのため、患者さんが腰痛を訴える場合、それが脊椎(傍脊柱筋を含む)から生じているものなのか、または腹部(消化管や後腹膜腔)に原因のある疾患であるのかをまず考える必要があります。腹部に原因のある疾患ならば、泌尿器系疾患や産婦人科系疾患、消化器系疾患を中心に精査していきます。

脊椎が原因で腰痛が引き起こされる場合としては、二足歩行をするヒトの宿命として、脊柱は絶えず負荷を受けることが関わっています。中でも椎間板が上下方向での大きな力を受け、比較的早期から変性や損傷が生じ、腰痛の原因となりやすいと考えられます(いわゆる椎間板ヘルニア)。このように、脊椎に原因のある場合は、外傷や変性疾患などの脊椎そのものの精査をしていきます。

こうした生理的な理由に、老化に伴う脊柱変形、姿勢の異常(猫背であるなど)、筋力の低下(運動不足が大きく関わってきます)、高齢化社会に伴う骨粗鬆症の増加など、腰痛の原因はさまざまと考えられます。

中でも、非特異的腰痛とは以下のような説明ができると考えられます。
「非特異的腰痛」とは、腰を検査しても、肉体的には原因が特定出来ない腰痛のこと。病院を訪れる腰痛患者全体の、実に85%がこの腰痛であるといわれています。原因は多岐にわたると考えられていますが、その1つに、「ストレス」が関与していると考えられています。これまで原因不明と言われてきた腰痛の多くに、精神的な問題が深く関わっていると指摘されています。

なぜストレスが腰痛の原因となるのかというと、そもそも、腰など体の一部に何らかの異常が起きると、それが神経を通じ脳に伝わり、異常が起きたことを痛みとして認識します。このメカニズムを支えているのが、脳の中で情報をやり取りする神経伝達物質です。

ところが、ストレスを感じ続けると、この神経伝達物質の分泌に異常が生じ、体と脳の間で情報が正確に伝わらなくなるのです。その結果、脳が誤作動を起こし、通常なら痛みを感じない小さな腰の異変を、強い痛みとして感じてしまうと番組では説明されていました。

T・Mさん場合、家事、パートという忙しさの中で終始ストレスを感じていました。しかし、まだこの段階では、ストレスは軽く、脳の誤作動も少なかったため、腰痛の程度は軽いものでした。ところが、50歳を過ぎると、前にも増して忙しい毎日となり、次第にストレスが増大、腰痛を慢性化させていったと考えられます。

そんな彼女の腰痛に劇的な変化を与えたのが、子宮筋腫の手術でした。手術は心理的にも、肉体的にも極めて、大きなストレスとなります。そのため、ついに彼女の脳はストレスに耐えきれず暴走。痛みを過剰に感じてしまい、家事や仕事ができないほどの状態になってしまいました。
 
さらに、痛みを気にするあまり自分でストレスを増幅してしまう、つまり腰痛が腰痛を呼ぶ、悪循環に陥ってしまっていました。むろん誰もがこのスパイラルに陥る訳ではありません。そこには、真面目、几帳面、頑張り屋、まさに彼女のような性格が、大きく関わっていると考えられます。
 
入院後、彼女には腰の異常が脳に伝わりにくくなる神経のブロック注射が施されました。そして医師からは、腰痛改善のために、何か趣味を持つとか、夢中になれることを見つけて、ストレスを減らすようにアドバイスをされました。T・Mさんの場合は、犬を飼うことで状態の改善が見られました。

ちなみに、「痛い間は安静保持」は過去の遺物であるといわれています。無理をしない程度で日常生活を送ることが重要とされています。就業中に休憩を時間ごとにとって、その間にストレッチなどの運動をすることや、短期間の腰椎装具(コルセットなど)も有効です。

患部の温熱療法(ホットパック,極超短波など)を行うこともあります。急性腰痛ではあまり効果がありませんが、慢性腰痛では腰痛体操なども勧められます。

また、治療としては疼痛の緩和・除去が最重要課題であり、保存療法が第1選択となります。薬物療法として非ステロイド系鎮痛消炎薬(NSAIDs)や筋弛緩薬が基本となります。心因性要素の強い例では、患者に説明のうえ、抗不安薬や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を処方することもあります。

あまりに強い痛みでお困りの方は、神経根ブロック療法などの徐痛療法なども視野に入れる必要があると考えられます。整形外科やペインクリニックなどでご相談なさってはいかがでしょうか。

【関連記事】
本当は怖い家庭の医学 症例集

腰痛や首の痛み、手の痺れ…本当は怖い運動不足

脊柱側弯症と腰痛に悩む17歳女性