読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
卵巣に5 cmほどの「チョコレート嚢腫」があります。現在、定期的に検査を受けていますが、手術すべきかどうか悩んでいます。将来、悪性化したり、閉経後に小さくなったりすることはありますか。(50歳女性)
この相談に対して、横田マタニティーホスピタル理事長の横田佳昌先生は以下のようにお答えになっています。
子宮内膜に似た組織が卵巣や骨盤内などにでき、月経周期に合わせて増殖、出血を繰り返す病気を子宮内膜症と言います。

チョコレート嚢腫は、その一種です。組織が卵巣の中に入り、「エストロゲン」という女性ホルモンの影響で増殖、出血してドロドロしたチョコレート状のものがたまった状態です。

治療は、薬物療法と手術があります。薬物療法は、鎮痛剤やピルを服用して痛みを抑えたり、女性ホルモンの分泌を抑える薬で月経を止める「ホルモン療法」を行ったりします。

手術は、おなかに小さな穴を開けてカメラと切除器具を入れて行う腹腔鏡手術が一般的です。嚢胞を摘出したり、電気メスやレーザーで焼き取ったり固めたりします。

子宮内膜症は、子宮内膜あるいはそれと類似する組織が、子宮内腔以外の部位に発生してエストロゲン依存性に増殖する疾患を指します。

生殖年齢にある女性の10〜15%に存在しますが、特に最近増加傾向にあると考えられています。その理由として、腹腔鏡検査による診断能力の向上、初婚年齢・初産年齢の上昇、出産回数の減少などが指摘されています。

好発部位はダグラス窩、卵巣で、卵巣チョコレート嚢腫(嚢胞)の形成や骨盤内組織の癒着を呈します。稀ですが、腸管や尿路系、胸郭内にも発生し、下血や血尿、血痰・気胸を呈することもあります。

症状としては、疼痛と不妊があります。厚労省の最近の全国調査では、子宮内膜症女性の約90%が月経困難症を訴えており、月経時以外の下腹部痛は47%、性交時痛・排便痛は32%にみられています。不妊を主訴とするものは30%でした。

治療としては、薬物療法と手術療法があり、疼痛除去や病変部除去、不妊治療が治療目標となります。患者さんの背景に応じて治療法が選択されることになります。

不妊を主訴とする場合は、通常の不妊検査・治療を進めるとともに、早期の腹腔鏡下手術や生殖補助医療が行われます。現在、挙児希望はないが妊孕性を温存したい場合は、薬物療法または保存手術が選択されます。生殖年齢後期で挙児希望のない場合は、根治手術まで考慮されます。

ただ、卵巣チョコレート嚢腫(嚢胞)の一部は悪性変化を遂げることが指摘されています。年齢40歳以上、嚢胞の長径4cm以上の症例はハイリスクであり、手術による確定診断が望ましいとされています。

上記のようなケースでは、以下のようなことがいえると思われます。
どの治療を選択するかは、嚢腫の大きさや、妊娠を希望するかどうか、生理痛や腰痛などの症状の有無、年齢によって異なります。

質問者の場合、50歳という年齢などから、年に2回程度検診を受け、痛みなどの症状がなければ、様子をみていけばよいと思います。嚢腫が大きくなるなどした場合は、磁気共鳴画像検査(MRI)やがんを診断するのに用いる腫瘍マーカー検査によって詳しく調べましょう。

嚢腫ががんになることはほとんどありませんが、がんが疑われる場合は、手術で摘出することもあります。また、閉経とともに、嚢腫が小さくなることはありますが、完全になくなることは非常に少ないです。

子宮内膜症の画像診断上のポイントとしては、卵巣腫瘍の鑑別診断あるいはチョコレート嚢腫の診断があります。チョコレート嚢腫の場合、?内容液が血液成分ないしその二次成分の描出、?子宮に隣接したダグラス窩に位置し形状が単純な円形でなく不整形であること、?上皮性の嚢腫に比べると嚢腫壁が厚いなどの特徴が挙げられます。

腫瘍マーカーは、中でも卵巣漿液性腺癌に特異性の高いCA125が子宮内膜症患者でも高値を示すことが知られています。35IU/ml以上をとるものは70ないし80%程度あります。これは、ホルモン治療に反応して低下します。

こうした検査により、しっかりと鑑別や評価を行う必要があります。腫瘍の急激な増大や、腫瘍マーカーの高値は悪性腫瘍を疑わせます。画像診断は鑑別に重要であり、悪性の場合、早急な処置が必要となります。

しっかりと主治医の元で経過観察や、必要な検査・治療を行うことが望まれます。上記のように、検診を受けられることが良いと考えられます。

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