支持率急落で「退陣」がチラつく麻生政権。永田町では「ポスト麻生」の名前が飛び交っているが、ここにきて、ガ然、本命に浮上してきたのが与謝野馨財務・金融・経財相だ。

一人三役をこなし、経済政策を担うだけでなく、閣僚懇などではリーダーシップゼロの麻生に代わり、与謝野が事実上、仕切っている。“陰の総理"といわれるゆえんだが、与謝野といえば、06年秋に咽頭がんの手術をした。そのため、「たんが絡みティッシュペーパーを離せない」「テレビの出演は15分まで」「気圧が変わる飛行機には乗れない」などの健康不安説が飛び交っている。与謝野の本当の病状、体調はどうなのか。

「ティッシュペーパーを離せないのは事実です。がんを取った際、ごっそり肉を取ったため、手首の肉を移植した。腕の肉は粘膜ではないので、どうしてもたんがひっかかるんです」(事情通)

与謝野自身、「喉に毛が生えているから、気持ち悪くて……」などと冗談を言う。食道が細くなったため、食事はゆっくり時間をかけないと食べられない。いまも時々、病院で、がん再発のチェックをする。しかし、それ以外に不自由はないようだ。

「飛行機に乗れない? 先々週も日帰りで高知へ行って、応援演説をしてきましたよ。3月中旬にロンドンで開かれるG20も参加の予定です」(嶋田隆大臣秘書官)

ある日のスケジュールは、7時半に家を出て、朝食会のあと、国会をこなし、昼食は赤坂の有名店で党幹部と中華料理。午後は国会答弁し、6時から「励ます会」、7時からはまた中華料理。さらにバーへ。「食欲は旺盛、ただ酒は以前から飲まずにジンジャーエールです」(事務所関係者)

一人三役になる前は、毎晩のようにマージャンをしていた時期もある。ゴルフもよくやり、40台前半で回る。ヒマなときは事務所で油絵を描く。たばこはマルボロスーパーライトを1日に1箱。年齢(70歳)を考えれば、ま、元気な方だろう。

日本癌治療学会理事の古阪徹氏はこう言う。
「声帯に少し影響が出ていることを考えると、下咽頭にできたがんを切除したのでしょう。この部位の癌は一般的に6カ月から1年以内に再発することが多い。2年経てば80%は再発しません。ただし、下咽頭にできたがんはしぶといので、術後も化学療法をするケースもあります」
(ポスト麻生の“本命”に浮上「与謝野財務相」本当の病状)


ヒトの「のど」は、咽頭と喉頭からなります。咽頭とは、鼻腔および口腔、食道および喉頭との間にある筋肉で構成された管を指します(ちなみに喉頭とは、食物の通路と呼吸のための空気の通路との交差点である咽頭の奥で、空気専用通路の始まりの部分を指します)。

咽頭は鼻に近いほうから上咽頭、中咽頭、下咽頭と下がっていき食道に続いていきます。与謝野さんの場合、2006年に下咽頭癌を患われたようです。下咽頭は「のど」の一番底の部分を指します(ちなみに、喉頭は下咽頭の前面に位置してます)。

下咽頭癌は50歳以上の高齢者で多く、性別は男性が90%以上を占めます。原因としては、男性の方が女性より4〜5倍ほど多く、喫煙や飲酒などの刺激が大きく関係していると考えられています。

ほかの頭頸部癌でも喫煙と飲酒はリスクファクターとなるので、食道癌やほかの頭頸部癌との重複癌も高率となります。女性では、鉄欠乏性貧血を伴うプランマー-ヴィンソン症候群、また頸部への放射線治療の既往も原因となります。

下咽頭癌は、進行型が多いため、頭頸部癌の中でも治療成績が特に不良であることで有名です。初診時に50〜60%の症例は、頸部リンパ節転移を伴っているというデータもあります。

初期症状は咽頭の異物感やイガイガ感で、「食事をしている時に、食べ物がひっかかる感じ」「飲み込むときに痛い」といったものがあります(早期には特徴的な臨床症状に乏しい)。

進行期では耳に放散する嚥下時痛や嚥下困難、嗄声や誤嚥、さらに頸部リンパ節腫脹を来します。頸部腫瘤が初発症状となることもあります。進行すると咽頭痛、嚥下痛、嗄声(声が掠れる)、耳放散痛、血痰、頸部腫瘤、さらに嚥下障害や呼吸困難などの症状が加わってきます。

与謝野さんの場合、手術を受けられたとのことです。手術治療としては、以下のようなものになります。
早期癌では、放射線療法が行われることが多いです。頸部にリンパ節転移が明らかでない比較的早期の場合(I、挟)や、掘↓鹸でも手術ができない場合に放射線治療を行います。特に梨状陥凹原発、外向発育型腫瘍では放射線感受性が高くなっています。治療には、60 Gy以上の線量が必要となります。

ただ、下咽頭癌では、放射線や抗がん剤だけで完治する数は少なく、現時点において手術が下咽頭がん治療の中心となっています。

進行期では、喉頭を含む下咽頭の切除が必要になることが多いです。切除後の欠損部分には、形成外科的な再建(遊離空腸や前腕皮弁など)を行います。上記のケースでは、前腕皮弁が選択されたようです。

手術法としては、下咽頭・喉頭・頸部食道切除術や下咽頭・喉頭・全食道抜去術、下咽頭部分切除術、これらに頸部郭清術(頸部のリンパ節に転移していたり、転移している可能性が高い場合に行う手術)を組み合わせたりします。手術は、下咽頭喉頭切除術、頸部郭清術、咽頭再建術の3術式から成り立っています。

手術の場合、話したり、食物を飲み込んだりすることが難しくなったり、不可能になってしまいます(ただ、一部のT1症例では喉頭保存が可能)。また、大きく切除するほど、機能が悪くなります。上記のように、声を失ってしまうわけです。

そこで気管食道シャント法といったことが行われることもあります。これは、気道と食道をシリコン製チューブでつなぎ、肺からの空気を食道に送り込めるようにして、食道の粘膜を奮わせて発声する、というもののようです。

以前から行われている食道発声法(空気をのみ込み、げっぷの要領で空気を送り出して、食道の粘膜を震わせる)とは異なり、訓練などが不要となるようです。一方で、手術が必要であったり、日常的な器具の手入れが必要であったりといったデメリットもあります。ただ、発声できるメリットというのは非常に大きいと思われます。

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