読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
しばらく前、血圧を測ったら安静時にもかかわらず脈拍が90を超えていました。今は70台で安定していますが、病気の前兆ではないかと不安です。(61歳男性)

この相談に対して、榊原サピアタワークリニック院長の小船井良夫先生は以下のようにお答えになっています。
心臓は筋肉の塊で、収縮することで血液を全身に送り出しています。心臓が一定のリズムで収縮すると圧力が生じます。このリズムを「心拍」と言います。

血液が流れると、血管が押し広げられます。この時に生じる圧力が「血圧」です。皮膚に近いところにある動脈に触れると脈を打っているのが分かります。これが「脈拍」です。通常、心拍数と脈拍数は一致します。

健康な成人の安静時の心拍数は毎分60〜100回と幅があり、人それぞれ異なります。同じ人でも、その時の精神状態などによって変わってきます。いずれにしても、この範囲に収まっているようならば、心配ないと思います。

頻脈とは、心拍数が増加している状態で、成人の安静にしている時の心拍数は、およそ毎分50〜70回ですが、100回を超える状態を頻脈といいます。

頻脈の原因はさまざまです。病的な意味がない場合でも(たとえば運動、興奮、緊張など)でも増えます、また、発熱、脱水、貧血、呼吸困難、甲状腺機能亢進症などが原因でしばしば100前後の頻脈にもなります。心臓に原因があって不整脈としての徐脈や頻脈になることもあります。原因としては、
・循環血漿量減少:脱水、ショック
・前負荷減少:心タンポナーデ、緊張性気胸、肺塞栓症、原発性肺高血圧症
・代謝亢進:発熱、甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫
・交感神経緊張:精神的緊張、過換気症候群
・代償性の交感神経緊張:貧血、心不全、心筋梗塞、呼吸不全、高炭酸ガス血症
・中毒:一酸化炭素中毒、アルコール中毒、ニコチン中毒、シアン化合物中毒
と分類できます。

心拍動に異常があることは、動悸として自覚できます(ただ、動悸の感じ方は、人によって異なります)。また、血圧が下がることがあります。特に200回/分以上の頻脈が1分間以上続くと、めまいや失神を起こすことがあります。

これは、頻脈の時には心臓に血液がたまらないうちに次の収縮が始まるため、送り出される血液も少なくなってしまうことが原因です。結果、脳に十分な血流がまわらないために、めまいや失神が起こってくるわけです。

頻脈性不整脈は、大きく分けて二つに分類されます。一つは上室性不整脈、もう一つは心室性頻脈です。これは、簡単に言ってしまえば不整脈の原因となっている部位が心房なのか、心室なのかで分類されます。さらに分類すると、以下のようになります。
1.洞性頻脈
2.上室性・心室性頻拍
3.心房細動・心室細動、心房粗動・心室粗動
4.上室性・心室性期外収縮

頻脈の必要な検査として、以下のようなものがあります。
心拍が非常に速くなったり乱れたりすると、脈拍として伝わらない場合があります。従って脈拍数だけで、正しく心臓の具合を診断することはできません。詳しく調べるには、心電図検査などが必要です。

24時間継続して心電図を記録する「ホルター心電図検査」があります。検査をすると、1日の心拍数の変化がすべて分かります。

心拍が乱れたり速く打ったりすると、「動悸」という異常な不快感をしばしば感じます。動悸は、精神的な興奮や運動、発熱、飲酒などをした際やひどい貧血などを起こした時にも感じることがあります。

頻繁に起き、気になるようなら、検査をして、原因が心臓病によるものかどうかを調べてみることが必要です。

上記のように頻脈性の不整脈は起こりえますが、今回のケースでは動悸を頻回に感じていると言ったこともなさそうであり、あまり気にしすぎるのもどうかと思われます。

ご心配なら、循環器内科を受診され、精査されてはいかがでしょうか。

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