出産に伴う合併症などのリスクを妊婦自らチェックしてもらおうと、滋賀県が母子健康手帳とともに配布している「初期妊娠リスクスコア自己評価表」の活用率が約3割にとどまっていることがわかった。

同県は人口10万人あたりの産婦人科医が26.8人と全国で最も少なく、事前に起きうる合併症を把握しておけば救急搬送時の「たらい回し」も回避できるため、医師らは活用を呼びかけている。妊娠リスクスコアは、もともと厚生労働省が作成したもので、滋賀県のような「全県的な配布は他にないのでは」(厚労省)という。

評価表は妊婦自身が、
・年齢
・お産の経験
・身長、体重
・喫煙、飲酒の習慣
・抗精神薬の服用
・心臓病などの持病
・排卵誘発剤の注射や体外受精の有無

などをチェックして点数化する。

4点以上は合併症を起こしやすい「ハイリスク」となり、産科以外に外科などと連携の取れる総合病院での診察や分娩、0〜1点は「ローリスク」となり、クリニックや助産所を勧めている。

こうした事前のチェックをもとに、妊婦がリスクに応じた病院をかかりつけにすることで、絶対数が不足している産科医側の役割分担の手助けとなり、万一の際の「たらい回し」を防ぐことにもなる。

また核家族化の中で妊娠に関する知識が低下しているため、ささいな“異変"でも医療機関に駆けつける「コンビニ受診」が、産科医の負担として問題化。評価表は妊婦に「妊娠とはどういう状態なのか」を認識してもらう狙いもある。

滋賀県は平成18年4月から、滋賀医科大(大津市)の提唱で全国で初めて、リスクスコアの配布を開始。妊婦と医師がリスクへの心構えを共有しやすくなり、深刻な産科医不足の中でも病院のたらい回しが発生しておらず、一定の実績が認められている。

しかし滋賀医科大が昨年11月に県内207人の妊婦を対象に行ったアンケートでは、評価表を使っていた妊婦は66人(31.9%)だけ。受け取っているにもかかわらず、評価表自体を知らない妊婦が過半数の106人(51.2%)いた。

また、母子健康手帳を受け取る際、評価表について説明を受けたという妊婦はわずか21人(10.1%)で、自治体の説明不足も影響しているとみられる。

滋賀医科大の高橋健太郎教授は「全国のモデルになる取り組み。産科の現場では、人手不足やコンビニ受診などで、心に余裕がなくなっている。国のサポートは欠かせないが、改善策を待っていられる状況にはなく、妊婦も自分自身のリスクを十分に知っておくことが重要だ」と話している。
(初期妊娠リスク評価表 活用率3割と低迷)


妊娠初期には、悪心、嘔気、食欲不振などの消化器症状を中心とする症状や、食べ物の嗜好の変化(酸っぱいものが食べたい、とか)が出現することがあります。これを妊娠悪阻(いわゆる、つわり)といいます。

特に、妊娠悪阻と言った場合、この症状がやや重い状態をいいます(一般的には、遷延する嘔吐、通常、高度のケトン尿症を伴う急性の飢餓状態、少なくとも妊娠前体重の5%を超える体重減少を伴う状態、と言われています)。

一般に安静が重要で、さらに糖質を中心とする食事で改善します。ですが、嘔吐や脱水による栄養障害・代謝障害が出現し、尿中にケトン体やアセトン体が出て、全身状態が衰弱する場合は重症妊娠悪阻といって、入院治療が必要となることもあります。

重症化した場合、母体に重篤な障害を生ずることがあるため、注意が必要です。入院治療を要する人は、全妊婦の1〜2%程度であるといわれています。

ただ、妊娠初期の悪心・嘔吐は約8割の妊婦が経験するといわれており、約半数がこれら両者を経験し、悪心のみの人は25%程度とされています。結構、いわゆる「つわり」で悩まれる方は多いようです。

原因としては、はっきりと分かっていません。ですが、母体hCG値(胎盤ホルモン)と症状がある程度相関することや、妊娠の中絶により症状は急速に消失すること、胎児を伴わない全胞状奇胎でも激しい悪阻をきたすことなどが分かっています。ですので、つわりは胎児そのものでなく、胎盤の存在により引き起こされていることは確からしい、と言われています(ただ、hCG自体がどのような作用をしてつわりを起こすかは、まだ解明されていません)。

ほかにも、以下のように妊娠高血圧症(妊娠中毒症)などが妊娠時に問題になります。
妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)とは、「妊娠20週以降、分娩後12週までに高血圧がみられる(血圧が140/90mmHg以上)場合、または高血圧に蛋白尿(蛋白尿が300mg/日以上)を伴う場合のいずれかで、かつこれらの症状が偶発合併症によらないもの」と定義されています。

原因はいまだ不明ですが、絨毛の脱落膜への浸潤不全(胎盤形成不全)という概念が一般的となりつつあります。結果、子宮胎盤循環不全および母体循環不全に陥ると考えられています。

妊娠32週未満に発症するものを早発型、32週以後に発症するものを遅発型と分けられています。また、軽症および重症に分けられ、以下のような分け方ができます。
・軽症
〃谿;収縮期血圧140mmHg以上で160mmHg未満、拡張期血圧90mmHg以上で110mmHg未満のいずれかに該当する場合
蛋白尿;原則として24時間尿を用いた定量法で判定し、300mg/日以上で2g/日未満の場合

・重症
〃谿;収縮期血圧160mmHg以上の場合、拡張期血圧110mmHg以上のいずれかに該当する場合。
蛋自尿;24時間尿を用いた定量法で2g/日以上の場合。随時尿を用いる場合は、複数回の新鮮尿検査3+(300mg/日)以上の場合
頻度は全妊婦の4〜8%であり、重症は全妊婦の1〜2%程度となっています。重症の場合、母体死亡および周産期死亡の主要原因の1つであり、重要な疾患と考えられます。

リスク因子としては、高血圧素因、高齢妊娠、肥満、多胎、内科合併症(本態性高血圧、慢性腎炎、糖尿病、自己免疫疾患、甲状腺機能亢進症など)が挙げられています。

予後は、重症化して高血圧脳症、子癇、HELLP症候群〔溶血(hemolysis)、肝酵素の上昇(elevated liver enzyme)、血小板減少(low platelet count)を伴うもの〕、肺水腫、常位胎盤早期剥離、DIC、急性腎不全などを合併し,母体の生命が危険にさらされることもあります。

上記の評価表や定期受診などの機会を用いて、妊娠への理解を深め、是非とも母子ともに健康な出産を行って欲しいと思います。

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