「乳房に石灰化した部分がたくさんあります。精密検査を受けてください」

5年前、職場の健康診断を受けた女性(58)は結果を聞いて驚いた。乳がんの早期発見に役立つマンモグラフィ検診で、がんの可能性もある石灰化が見つかった。精密検査でがんと分かったが大変小さく、手術で切除できた。

女性が受けた健康診断にはマンモグラフィ検診は含まれず、オプションだった。「父が末期がんに苦しんでいたので怖くなって申し込みました。健康診断は悪くなかったのに、オプションでがんが見つかるなんて」と女性は振り返る。

日本で増加している乳がん死亡率は、欧米諸国ではかなり前から減少傾向にある。日本は欧米より乳がん死亡率が少ないとはいえ、各国の死亡率を比べたグラフをみると、そんな事実が分かる。

米国や英国では、昭和60年ごろをピークに死亡率は減少に転向。マンモグラフィ検診が開始された少し後で、検診の効果が出始めた時期と一致する。米、英両国の受診率が7割以上に達しているのに対し、日本は約2割に留まっている。

しかし、国立がんセンターがん予防・検診研究センター検診研究部の斎藤博部長は「受診率の低さばかりが注目されるが、日本のがん検診には組織的な管理も必要だ」と強調する。大幅な死亡率の減少に成功した欧米諸国には、日本とはまったく違う「組織型検診」と呼ばれるシステムがあるという。

斎藤部長によれば、システムの柱は
1)有効性の確立したがん検診のみ行う。
2)徹底的に精度管理されている。
3)対象者全員に通知が送られ、受けない場合には勧奨が繰り返される。

の3つだが、日本は(1)も不十分なのが実情だ。

世界的に検診の有効性が証明されているのは乳がんと子宮がん、大腸がんの3つだけとされ、ほとんどの欧米諸国では、これらの検診に国を挙げて取り組んでいる。

「有効性が実証されていない検診も含め、散漫に行って結果が出せないでいる日本に比べ、欧米諸国は死亡率を下げるという目標達成のため、合理的かつ集中的に検診を行っている」(斎藤部長)。マンモグラフィ検診を徹底していない機関には罰則など法的な処置が取られる国があるほどだ。

体系的な受診勧告のシステムについては、約7割の乳がん検診受診率を誇る英国の例が分かりやすい。英国では3年に1回、各地域の「受診勧奨センター」を通じ、検診施設から対象者に乳がん検診の通知を出す。さらに「QA(精度管理)センター」が受診勧奨センターに定期的に立ち入り、精密検査が必要な対象者への再検査の要請などを調査。満たしていない場合は指導する。

日本ではまだこのようなシステムはない。斎藤部長は「受診率の向上に、実施主体となっている市区町村レベルのこうしたシステムが必要。そのためにも、検診の徹底を国のがん対策の重要な柱に据えることが望まれる」と意識の転換を求めている。
(乳がん検診 個人に行き渡るシステムを)


国内では、まだ乳癌に最初に気づくのは、ほとんどが自分で「しこり」に気づいています。そのほか皮膚陥凹、乳頭からの血性分泌物、乳頭のびらん、疼痛などがみられることもあります。

乳腺は乳頭を根とし、乳管が木の枝のように広がり、その先に葉となる腺房がついているといった構造をしています。枝(乳管)と枝の間、葉(腺房)と葉の間は線維性の支持組織や血管で埋められており、弾性に富んだ組織です。そこに実がなるように腫瘍ができると弾性が乏しくなり、硬いしこりとして触れるようになります。

こうした「しこりに気づいて」受診されているということは、逆に言えば、検診にて発見されるのは、たった2割でしかないと日本乳癌学会の大規模調査で判明しています。ただ、胸を触る自己診断で見つかる乳癌の大きさは平均約2cmで、自然に気づく場合は3cm以上が多いとのことです。

早期癌は、直径2cm以下とされています。ですが、しこりに気づいたことにより発見した場合には、43%が2.1〜2.5cmに達しており、発見時にリンパ節に転移していた人も、3分の1を占めています。リンパ節に転移しない乳癌の10年後の生存率は約9割と高いが、転移をしていると7割以下に落ちるといいます。そこで、やはり乳がん検診により早期発見することが非常に重要であるということです。

乳癌は、乳腺組織から発生する悪性腫瘍の99%を占めます。乳癌罹患は年間約4万人で、女性が罹る癌の中でトップであり、年々増加傾向にあります。年間死亡は約1万人で、罹患のピークが40〜50歳代にあります。そのため、働き盛りの女性の罹患する癌の中で、乳癌は罹患率・死亡率とも第1位となっております。

そのため、40歳以上の女性は是非とも乳がん検診を受けていただきたいと思われます。乳がん検診とは、以下のようなものを指します。
一般的な乳癌のスクリーニング検査としては、問診、触診、軟X線乳房撮影(マンモグラフィー)、超音波検査等が実施され、臨床的に疑いが生じると、生検が実施され組織学的診断により癌かそうで無いかが判別されます。早期がんの発見には、マンモグラフィ検診が有効です。乳癌の死亡率を下げるには、集団検診の受診率を上げることが不可欠とされています。

しこりの訴えがある場合は、その部位を念頭において、まず問診を行います。乳房腫瘤に気づくきっかけ、疼痛、乳頭分泌、腫瘤増大の有無を聴取し、さらに、月経状況、出産・授乳歴、乳腺疾患の既往、乳癌の家族歴、ホルモン補充療法の有無を聴取することが重要です。乳房腫瘤をきたす3大疾患は、乳癌、乳腺症、線維腺腫であり、これらを鑑別することが重要です。

問診の次は、視・触診を行います。腫瘤上の皮膚の陥凹(Delle)、浮腫、発赤、皮膚への癌の浸潤、潰瘍形成などが乳癌の所見としては有名ですが、これらは進行した癌でみられるようです。早期の乳癌や良性腫瘍、乳腺症などでは皮膚所見はほとんどみられません。

また、上肢を挙上したり、手を腰に当てて胸を張ったときに、乳房の一部に陥凹(slight dimple)が現れないかどうかをみておくことも必要となります。これは、Cooper(クーパー)靭帯に乳癌が浸潤し、皮膚との距離が短縮されたために起こる現象です。

乳房の触診は仰臥位で、両手を頭の後ろで手を組み、肘を張って、胸を張るようにした体位で行います。乳癌の特徴的な触診所見は、弾性がやや乏しい硬い腫瘤として触知し、表面は粗いか凸凹で、周囲の乳腺組織との境界がやや不明瞭となります。また、両側の鎖骨上窩と腋窩を触診し、リンパ節の腫脹の有無を調べることも重要です。リンパ節を触知した場合は、個数とともに、それぞれのリンパ節の大きさ、硬さ、可動性などを調べます。

検査としては、超音波検査あるいはマンモグラフィーを行います。
超音波検査では、正常の乳腺は皮膚の下のエコー輝度の低い脂肪に囲まれたエコー輝度の高い均一な像として描出されます。一方、乳腺に腫瘍性病変があるとこの組織構成が崩されて、低エコーの像として描出されることが多くなります。7.5MHz以上の高周波振動子を使うことが望ましとされ、嚢胞や充実性腫瘤の質的診断に有効であるといわれています。

マンモグラフィーでは、描出された腫瘤陰影と石灰化像から、その腫瘤の良・悪性を診断していくことになります。乳癌の典型的な像としては、放射状陰影(spicule)を有する不整形の腫瘤陰影で、周辺の透明帯(halo)を伴わないか、伴ったとしても不均一なものです。また、形状不整の集蔟した微小石灰化像は、乳癌を疑う所見となります。

病歴情報や身体所見、超音波検査やマンモグラフィーの結果に基づき、腫瘍の存在が疑われたときには穿刺吸引細胞診へ進みます。針付注射器で腫瘤を穿刺吸引し、スライドグラスに吸引内容を吹き付け、ただちにアルコール固定、Papanicolaou染色を行い検鏡します。診断は通常の細胞診と同様に細胞の異型度から、class (正常)から class (癌)の5段階で行われます。

乳管上皮の増殖性病変(3大疾患すべてでみられる)では、穿刺吸引細胞診による確定診断が困難な症例があります。その場合は、針生検(Sure-Cut針などの専用キットを用い、糸状の腫瘤組織を採取)による病理組織学的診断が有用であるといわれています。

上記のニュースのように、個人向けへの啓蒙活動では限界があると思われます。「受診勧奨センター」および「QA(精度管理)センター」の設置など、やはり実施する地域におけるシステム作りが非常に重要であると考えられます。

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