読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
5年ほど前から舌が焼けるような痛みがあり、病院でカンジダ菌が原因と言われました。うがい薬などでも症状は変わりません。このままの治療を続けるべきですか。(67歳男性)

この相談に対して、東京医科歯科大歯学部病院教授の吉増秀実先生は以下のようにお答えになっています。
舌が焼けるように痛いという症状は、「口腔カンジダ症」や、貧血のほか、見た目に異状はないのに舌の痛みが続く「舌痛症」などでみられます。

口腔カンジダ症は、「カンジダ」と呼ばれる真菌が原因で、口の粘膜に白いこけ状の薄皮のようなものができたり、赤くただれたりします。免疫力が低下した、唾液の分泌量が少ない、入れ歯を入れたままにしている、抗生物質やステロイドによる治療を受けている――といった人にみられ、ゼリー状の抗真菌剤を口に含んだり、治りにくい場合には抗真菌剤を内服したりして治療します。

カンジダ症は、Candida albicansという真菌を代表とする、カンジダ属による真菌感染症です。カンジダ属は少数が粘膜に常在する菌であり、通常は病変を形成しません。

ですが、肥満・糖尿病・免疫不全・薬剤抗生物質、免疫抑制薬などの全身的要因、間擦部の湿潤・不潔・ステロイド外用薬の誤用などの局所的要因が誘因となります(日和見感染)。特に、口腔カンジダ症は、高齢、義歯、妊娠、糖尿病などが誘因となり、再発しやすいです。新生児では健常時でも起こることがあり、新生児・乳幼児の舌や口腔粘膜に白苔を生じることで発見されることもあります。

口腔粘膜あるいは、舌に白色の偽膜あるいは白苔が散在性あるいは融合性に付着し、軽度の炎症性潮紅を伴います。白苔は容易に剥離され、赤いびらん面となります。診断は、舌圧子などにより強く擦り、顕微鏡で調べることにより、カンジダを証明することで診断が確定します。また、真菌培養により、比較的容易に培養され、菌種の確定が可能となります。

治療としては、抗真菌薬であるフロリードゲルの塗布やファンギゾンシロップによるうがいを行います。

他にも、以下のような疾患との鑑別を行います。
一方、貧血では、ビタミンB12の欠乏による悪性貧血や、鉄欠乏性貧血で、舌が赤く、平たくつるつるしたような症状が出ます。その場合、不足しているビタミンB12や鉄分を補充すれば改善します。

舌痛症は、原因は明らかではありません。舌を刺激しそうな、とがった歯や歯石の沈着などがあれば処置をし、唾液が少なくなっている場合は、うがい薬や保湿剤を使います。ストレスや神経の疲れと関連しているとも考えられており、神経科的な治療が必要なことがあります。

その他、口の粘膜が赤くなったり、ただれたりする「扁平苔癬」など、粘膜の病気が痛みの原因になっていることもあります。

質問者は口腔カンジダ症の治療を長期間受けていますが、改善しない場合は、他の病気の可能性も含め、主治医にご相談ください。
舌痛の発生契機としては、さまざまな局所的要因(口内炎、義歯のアタリや歯の鋭縁による刺激、カンジダ症など)がみられることが多いです。こうした要因がないか、または全身性疾患の随伴症状かを考えます。

舌痛症である場合、舌に過剰な意識集中が起こり、さらに癌への恐怖などの不安に陥りやすい心理的背景が絡んで、交感神経の緊張を介した局所の血行障害が引き起こされ、発痛物質が生じると考えられています。舌や口腔への過度な意識集中を避け、心理的な緊張をときほぐすために、リラックスした生活を心がけることが重要です。

まずは主治医と相談の上、しっかりと診断を確定していただき、治療をしっかりと行っていただきたいと思われます。

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