21日に後楽園ホールで行われたプロボクシングの日本ミニマム級王座決定戦で、敗れた同級1位の辻昌建選手(30)が試合直後に意識不明の重体となり、都内の病院に搬送された。

日本ボクシングコミッション(JBC)によると急性硬膜下血腫と診断され、開頭手術を受けたという。辻選手は最終10回、同級3位・金光佑治(24)の連打で倒れ込むようにダウン。何とか立ち上がったが足元が定まらずKO負けとなり、そのままリング上で意識を失った。
(帝拳・辻がKO負け後に意識不明…開頭手術)


外傷性頭蓋内血腫は、出血部位によって硬膜外血腫、硬膜下血腫、脳内血腫に分けられます。中でも、頭部外傷の急性期(3日以内)に硬膜下腔、すなわち硬膜内面とくも膜との間に出血した状態を「急性硬膜下血腫」といいます。

出血源としては、脳表に生じた挫滅創からの出血があります。そのため、脳挫創とくも膜下出血を合併するものが多いです(複合型)。また、静脈洞とくも膜下腔との間を走行する架橋静脈の破綻によることもあります(この場合、乳幼児に多く、脳挫傷を伴っていない場合が多い)。稀には、脳表動脈が出血源であることもあります。

このように、急性硬膜下血腫の出血源はほとんど挫傷脳のため、受傷直後から脳損傷に伴う意識障害が出現し、時間の経過とともに意識障害がさらに悪化する危険性の高い疾患です。硬膜下腔血腫の広がりを遮るものがないため、進展は非常に早く、脳挫傷を広範囲に伴っている場合は、容易に脳ヘルニアをきたし、死に至る可能性もあります。

症状としては、ほとんどの症例において受傷時から意識はなく、血圧、呼吸も不安定です。片側性の瞳孔散大や対光反射の消失、また片麻痺、病的反射の出現などが起こりえます。

診断は、頭部CTが非常に有用です。頭蓋骨内面に沿った三日月状の高吸収域の所見が特徴です。多くの場合、広汎な脳挫傷を両側大脳半球に伴うため脳室の圧排所見が強く、脳浮腫液の脳室からの吸収機能も低下しています。血腫の厚さ以上に正中構造が対側へ偏位している場合、脳浮腫が既に進行していることを示します。

治療としては、以下のようなものがあります。
治療は開頭手術による血腫除去、止血が原則となりますが、穿頭ドレナージのみで頭蓋内圧のコントロールを中心にする場合もあります。手術適応は意識状態、血腫量、脳腫脹など合併損傷の状態によります。

実際は、まずバイタルサインを整え、脳浮腫や侵襲性高血糖が増悪しないよう酢酸リンゲル液(1,000ml以内)、5%アルブミンなどの補液にて全身循環を整えます。その後、開頭による血圧低下、頭蓋内圧亢進による脳ヘルニアを防ぐため、早急に穿頭術による血腫の一部除去を行った後、全身循環を安定化させ、さらに大開頭による二段階の血腫除去術を行います。脳浮腫液や有害神経伝達物質を除くため、可能であれば脳室ドレナージを設置します。

術後は、バイタルサインの安定化だけでなく、脳内ドパミンの放出に伴うラジカル反応や興奮性アミノ酸放出の抑制(脳温32〜33℃)、それに、サイトカイン脳炎を抑えるための感染症防止などの管理も重要となります。脳低温管理期間は、侵襲性サイトカインが減少する第4〜7病日を1つの目安とします。

上記のケースでは、非常にショッキングな展開となってしまいました。意識不明の重体となり、手術を受けられたようであり、その安否が心配されるところです。

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