22日に行われた東京マラソンで急性心筋梗塞による心室細動で倒れたお笑いタレント、松村邦洋(41)の病状が回復していることが26日、所属事務所から発表された。

「経過は良好で、現在では意識もはっきりしている」といい、心配されていた合併症についても「現在までのところなく良好な状態」という。ただ当分安静状態が必要で、今後については「検査、治療の様子をみて報告します」としている。
(松村邦洋、順調に回復!所属事務所が発表)


心筋梗塞とは、心臓を栄養している冠動脈の血流量が下がり、心筋が虚血状態になり壊死してしまった状態です。厚労省の死因解析から虚血性心疾患の死亡数は約8万人と推測され、また病理的な検討から30%の致命率であると考えられています。日本全体では、約25万人の急性心筋梗塞症の発症が推測されています。

冠動脈が閉塞する原因としては、やはり冠動脈の粥状動脈硬化(アテローム硬化)による狭窄が基礎にあります。粥状動脈硬化(アテローム硬化)とは、脳や心臓などの太い動脈内にコレステロールなどが沈着し、粥状のかたまりができて血管内が細くなった状態です。

具体的には、冠動脈内膜下に形成された粥腫(血管壁にたまったコレステロールが、血管の内側にこびりついたもの)が破綻し、 血小板が凝集して冠動脈血栓の形成が起こり、結果として冠動脈が完全閉塞して起こると考えられています。

特徴的な症状としては、狭心痛(胸が締め付けられるような痛み)を生じます。「痛い」よりも「胸が苦しい」「重い感じがする」など、締め付けられる(絞扼感)を訴えることが多いといわれています。

通常、狭心症では胸痛の持続時間は数分程度でおさまりますが、安静にしていても30分以上胸痛の持続する場合は急性心筋梗塞を疑います(通常30分以上持続する前胸部の強度の胸痛や絞扼感で、恐怖や不安感を伴う)。

大多数は典型的な胸痛・絞扼感を主訴としますが、中には心窩部・背部痛呼吸困難、悪心・冷汗・失神などの非典型的な症状を訴えることもあります。典型的な急性心筋梗塞の胸痛と鑑別を要する疾患には、解離性大動脈瘤、急性心膜炎、肺塞栓が最も重要であり、次に胸膜炎、自然気胸、逆流性食道炎などがあげられます。

悪心・嘔吐などの消化器症状も伴うことがあるため、胆石症、胃・十二指腸潰瘍などとの鑑別が必要になることもあります。高齢者や脳梗塞、糖尿病を有する患者さんでは、無痛性に発症することもあります。その結果、放置してしまうケースもあります。

また、関連痛といって、疾患のある臓器以外の部位に出現する痛みが生じることがあります。具体的には、胃の痛みを中枢へと伝える神経と、心臓の痛みを伝える神経が近い位置にあるため、誤って「胃の痛み・不快感」として伝えられてしまったような状態です(共通の神経で痛覚が脳へ伝達されるために起こると考えられている)。

心筋梗塞が起こると、さらに以下のような不整脈が生じる可能性があります。
心筋梗塞の発症後数日間は、80〜90%の症例で何らかの不整脈が生じるといわれています。心室性期外収縮が最も多く、約50%に認められます。先行収縮のT波に重なるもの(R on T)、連発するもの、多源性のものなどがあります。

特に、心室性期外収縮が1分間に5個以上発生するものは心室頻拍、心室細動に移行する危険が強いです。松村さんの場合も、こうした結果、心室細動が生じたと考えられます。

洞性頻脈は約30%にみられます。上室性頻拍や心房細動、心房粗動は心不全と合併することが多いです。洞性徐脈は下壁梗塞例に多いです。

2度以上の房室ブロックは右冠動脈閉塞による下壁梗塞に多いですが、通常一過性で数日で回復します。一方、左冠動脈閉塞による場合はHis(ヒス)束より末梢の障害が多く、永続性で、かつ梗塞範囲が広いため、予後は不良です。

松村さんは、入院後の経過は良好であるとのことで、喜ばしく思われます。十分に治療・静養なさって、再び元気な姿で復帰なさることが待たれます。

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