読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
脚がしびれたり、痛んだりして歩けなくなり、休むと歩けるようになります。脊柱管狭窄症と診断されました。どう対処したらいいのでしょうか。(32歳女性)

この相談に対して、東京医科歯科大病院整形外科教授である四宮謙一先生は、以下のようにお答えになっています。
腰部脊柱管狭窄症は、背骨の中で脊髄や神経を通す脊柱管が、加齢とともに変形し、狭くなる病気です。多くは50歳以上の中高年で発症し、脊髄につながる神経の束「馬尾」や、そこから左右に延びる「神経根」、並走する血管が圧迫されます。

そうなると、歩く時に馬尾への血流が不足し、下肢がしびれて力が抜け、続けて歩けなくなります。これは「間欠跛行」と呼ばれます。しゃがんだり、自転車に乗ったりすると背骨が曲がり、圧迫が小さくなって症状が一時的に消えます。

脊柱管狭窄症とは、脊柱管または神経根管が先天性あるいは発育性に狭小化したり,後天性に狭小化した際に生じる症状の総称を指します。上記のケースでは、間欠性跛行などがみられており、腰部脊柱管狭窄症であると考えられます。

腰部脊柱管狭窄症とは、神経組織を入れる腰部脊柱管あるいは椎間孔部がさまざまな原因によって狭窄を来し、馬尾(脊髄の下端から伸びている神経の束は、馬の尻尾に似ているので、こう呼ばれます)や脊髄神経根が圧迫されることによって発症する症候群です。

大きく分けて、馬尾型、神経根型、混合型などに分類されます。

「馬尾型」は脊柱管正中部の狭窄により馬尾が圧迫されて起こり、馬尾性間欠跛行、両下肢・殿部・会陰部のしびれや灼熱感、下肢脱力感、膀胱直腸障害をきたします。「神経根型」では椎間孔内外において神経根が圧迫され、神経根性間欠跛行、下肢への放散痛(多くは片側)をきたします。「混合型」は馬尾型、神経根型の症状が混在したものです。

腰部脊柱管狭窄症の症状としては、間欠性跛行が最も頻度が高いといわれています。これは、少し歩くと脚が痛くて歩けなくなり、少し休むと歩けるようになる、という現象です。ですが、自転車なら長時間漕いでいられる、というのがこの疾患の特徴でもあります。両下肢に症状が観察され,膀胱直腸症状(失禁など)が観察される場合は、馬尾の障害が考えられます。

診断としては、画像検査では単純X線写真、機能撮影以外にMRI,CTが診断に有用であるといわれています。確定診断としては、神経学的所見(どこの筋力が低下しているとか、知覚障害が起こっているとか)と、画像所見とが一致するか否かが重要であるといわれています。

治療としては、以下のようなものがあります。
この時期であれば、血流促進剤の服用で効果があります。手術では、神経を圧迫している背骨の後ろ側の一部を削り取って、狭くなった脊柱管を広げるようにします。

狭窄が強くなると、歩いていなくても常にしびれを感じ、筋力も弱まり尿を漏らすこともあります。ここまで進行すると、手術をしても多くの患者に症状が残ってしまうので、手術は早めに受けるべきでしょう。

ただし、質問者は30歳代と若いため、脊柱管狭窄症とは考えづらく、症状が似た椎間板ヘルニアなど別の病気の可能性があります。椎間板ヘルニアは、背骨の間でクッションの役割を果たす椎間板の一部が脊柱管内に膨らむ病気です。張り出した部分を削る手術が行われますが、自然に縮小、消失することもあります。

整形外科の専門医ともう一度よく話し合い、適切な検査・治療を受けることをお勧めします。

治療としては、薬物療法では消炎鎮痛剤、ビタミンB12などの薬剤と硬膜外神経ブロック、神経根ブロック療法を行います。手術的治療としては、一般に椎弓切除術が実施されます。不安定性を有する場合には脊椎固定を併用します。

腰・下肢の疼痛、しびれ感や間欠跛行などの症状がある場合、これは保存的治療の効果がないため、手術が行われます。他にも、神経学的異常所見が進行性に増悪する場合や、日常生活に支障をきたすような痛みも、手術の適応となります。

ただ、上記のように年齢が若いということもあり、脊柱管狭窄症でない可能性もあります。もう一度詳しい検査を、整形外科の専門医を受診して行うことも勧められます。

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