読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
過敏性腸症候群と診断されました。2週間から1ヶ月程度の間隔で、食事中などに吐き気や動悸、下痢などを起こします。どのような点に気をつけて生活すれば良いですか。(28歳女性)

この相談に対し、鳥居内科クリニック院長である鳥居明先生は以下のようにお答えになっています。
過敏性腸症候群は、腸に潰瘍やがんなどの病気がないのに、慢性的に腹部の痛みや、不快感を伴う下痢、便秘が続く病気です。

発症には、ストレスが密接に関係すると考えられています。内臓の働きなどを調整する自律神経のバランスが乱れ、吐き気や動悸、頭痛、肩こりなどの症状を伴うことも少なくありません。

過敏性腸症候群とは、「腹部不快感や腹痛が、排便または便通の変化に伴って生じ、臨床像としては排便障害を呈する機能性消化管障害の1つ」と定義(Rome )されています。便通異常(便秘、下痢、交替性)が持続し、種々の腹部症状を訴えますが、腸管に器質的な病変はなく、機能異常によって起こると考えられます。

診断基準(Rome )としては、
過去3ヶ月間、月に3日以上にわたって腹痛や腹部不快感が繰り返し起こり、次の項目の2つ以上がある。
1)排便で症状が改善する。
2)排便回数の変化を伴う
3)便の性状の変化を伴う
6ヶ月以上前から症状があり、最近三ヶ月間は上記の基準を満たしていること。
腹部不快感は、痛みとは表現されない不快な感覚を意味する。
病態生理学的研究や臨床研究に際しては、週に2日以上の痛み/不快感があるもの的確症例とする。

となっています。ちなみに、児童・青年期(4〜18歳)の診断基準は別途あります。

20〜40歳代に好発し、女性にやや多いといわれています。もともと神経症的な素質や自律神経系の不安定な素地のある人に、情緒的緊張やストレス、食品による刺激が加わったとき、腸管が運動亢進状態となり症状を起こしてくるといわれています(ストレスは発症の引き金、症状持続・増悪などに関与する)。

症状としては、腹痛がみられ、主に腸管の痙攣によるものであり、鈍痛から疝痛まで程度はさまざまです。食後に多く、排便により軽快することが多いようです。便通異常もみられ、便秘、下痢あるいは両者が交互にくることがあります。便秘では糞便は兎糞状、下痢は軟便から水様便までさまざまで、粘液が混じることもあります。腹部膨満感、悪心、腹鳴などが起こることがあります。

ほかにも、心悸亢進、四肢冷感、発汗、顔面紅潮、肩こり、頭痛などの自律神経失調症状や不安感、不眠、無気力、緊張感、全身倦怠感などの精神神経症状などを伴うこともあります。

治療としては、以下のようなものがあります。
まず、生活習慣を見直し、規則正しい食生活と排便習慣を心がけましょう。1日に最低20〜30分、外を歩くなど、適度な運動をし、睡眠も十分とるようにして下さい。食事は、下痢をしている時は、腸の動きを促進する脂肪や、野菜、果物といった食物繊維、冷たい飲み物などの摂取は避けましょう。反対に便秘になったら、積極的に食物繊維や水分を取るようにします。

ヨーグルトなどの乳製品は、いずれの場合もしっかり取るようにしましょう。乳製品に含まれている乳酸菌には整腸作用があり、下痢にも便秘にも効果が期待できます。

症状が出た時は、腹式呼吸をして肩の力を抜き、気持ちを落ち着かせるようにして下さい。音楽や絵画の鑑賞も精神的なストレスを和らげるのに効果があります。

仕事などを完璧にこなそうとすると、ストレスの原因にもなり、症状が悪化しかねません。何事に対しても100点満点を目指さず、「75点を合格点」と考えるなど、ストレスをためない工夫をしてみて下さい。

心理的治療と生活指導を基盤にして、そのうえで消化器症状に応じた薬物治療を行います。過労を避け、十分な睡眠をとり、規則正しい日常生活が必要となります。

こうした生活指導や環境調整をはかり、食事指導として高線維食を勧めます(高線維食は特に便秘型に効果があるといわれています)。下痢、便秘、腹痛の強いときに薬物治療は有用です。線維製剤であるポリカルボフィルカルシウム、抗コリン薬、およびトリメブチンなどには効果が期待できるといわれています。

抗不安薬は、一時的なストレスにより不安・緊張感が生じた場合や、身体症状がさらに不安を増すといった症例で適応となります。抗うつ薬のうち三環系抗うつ薬は、抗うつ作用のほかに抗コリン作用もあり、腹痛と便通異常にも効果が期待できることから使用されることもあります。

こうした治療に加え、下痢型の人にはポリカルボフィルカルシウム製剤が使用されています。これは、人工の食物繊維で、下痢の場合は吸水性、便秘の場合は保水性を発揮して腸管内の便の形を整えます。ただ、効果が表れるまでに1〜2週間かかり、腹痛や腹部不快感は改善しにくい難点がありました。

これに対し、ラモセトロン塩酸塩錠は、即効性や腹痛の軽減効果が期待されます。セロトニンの働きを抑えることで、腸管の過剰な運動や、過敏になった腸の痛覚が脳に伝わるのを防ぐ作用があります。

現在は、こうした即効性のある薬剤もあり、通勤時なども安心感が高まり、ストレスが和らいでさらに良くなる人も多くなってくるのではないでしょうか。さらに、適度な運動や食物繊維の多い食事なども心がければより有効であると考えられます。

こうしたことに生活上でお気を付けいただければ、と思われます。

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